パーティの朝昼
「ふあぁ~」
アルルは大きなあくびをした。
「はぁ~~~」
次に大きなため息をついた。
「朝から~や~め~て~」
マールがふんわりやんわり苦情を言った。常駐している宿屋の大部屋での朝のことだった。
「気分が落ち込む」
ゲインがばっさり言う。こういう時、便利なのか、人の心を傷つけるのかはわからない。
「だって~生命の泉に行けないんだもん」
「アルルが休めないんだろう」
コンスがツッコミを入れる。甘く見えるけれどリーダーだからか意外と厳しい。
「そりゃ、そうなんだけど!」
「他の人の休みも合わないから仕方ないのである」
フォローを入れてくれる人がいる。ヘルンは意外と優しい。
「いつになったら行けるの?!」
「来~月~か~し~ら~?」
マールがいつも通り間延びした返事をした。
「アルルは入ったばかりだから早く冒険したいのはわかるけど、ほかの人は急ぐ必要性がないからね。だいたい、なんで生命の泉なんて行くのさ」
コンスが呆れたように言う。
「勇者の剣だから!」
コンスの剣を指してアルルが興奮して大きな声で言う。飽きるほど言ったそのセリフを言うが、仲間の四人は信じてくれなかった。
「にわかには信じられない」
ゲイルはコンスの剣を見る。よく調べているが、何も変わった点を発見できなかったようだ。ゲイルがそう言うことには意味があるのだが、それはまた先の話。そして、現在の勇者の剣はそれとわからないように完全にその気配を隠してあるのだ。勇者の剣にはそれができる能力がある。ただし、このコンスの剣が勇者の剣かは現在の状態ではわからない。
「我も思う。それは、ただの錆びた剣なのである」
ヘルンが断言する。魔法使い的な観点から言っているようだ。
「そのままじゃただの錆びた剣だから、生命の泉に行くんでしょー?」
「はいはい、アルルは拗ねないで。みんな、冒険は久しぶりだから、行こうよ。たまにはさ」
綺麗なだけのコンスが前向きに言っていたが、アルルは不機嫌な顔のままだった。行けばわかるのに、とぶつぶつ言っていた。アルルはコンスの剣に何かを感じたわけでなく、その外見などの吟遊詩人としての知識から言っている。だから、可能性があるとわかるのだ。特に魔法で探ろうとしたヘルンは、勇者の剣が完全隠密している中、その剣が勇者の剣か感じることは難しいだろう。
さて、皆はバイトという勤労に出かける。
アルルはお饅頭屋さんへ。コンスとゲイルは工事現場へ。マールは病院へと。
ヘルンは午後からなので、朝ごはんだけ食べてそのまま大部屋のカーテンの中へと消えた。
「おっひる~♪」
アルルとコンスとゲイルは仕事場から近いのでお昼には帰ってくる。マールは病院でお昼が出る。
「コンスのご飯おいしんだよね♪」
「アルルも上手じゃないか」
二人で褒め合ったりしている。二人の仲はいいようだ。まるで本当の兄弟のようだ。
「……」
ゲイルは二人の会話に入りたそうにしている。それに気づいた二人は口々に言った。
「ゲイルは、包丁握っちゃダメだよ?」
「頼むから、何もしないでくれ」
ゲイルは料理のセンスが壊滅的なのであった。ヘルンも料理は上手くない。二人とも片付けのみを手伝っている。
「昔は、そんなことなかったんだけどな……」
ゲイルはとても小さく呟いた。もちろん、二人にその声は届いていない。ゲイルのいう昔がいつのことか、本人にしかわからないのであった。何か原因があって作れなくなったようだ。そして、そう呟いたゲイルはいつもの無表情とは少し違っていた。その原因によって味覚が鈍り、味をあまり感じられなくなってしまったのだ。それは、生きている感覚を薄める。
「餌の時間であるか」
ヘルンも部屋から出てきた。若干、中二病を患っている傾向にある。
「本当に餌をやってる気分になるよ」
コンスが肩をすくめた。
「デザートに作ってから時間が経ったお饅頭もらってきたよ!」
繁盛はしているが、やはり残ってしまったものもある。時間が経って堅くなったものは、売り物にならない。味はそんなには変わらないのでアルルは、もらってきている。
彼らの日常は驚くほど上手くいっていて、穏やかだ。ただし、冒険者でないのなら、という注意書きがつくが。
更新まで随分かかってしまった(汗)速度アップを心掛けたい。来月になったら少しは時間できるかも!
物語的には、やっぱりバイトしてた(笑)次こそは冒険者らしく!そして、ギャグもっと入れていきたい……。