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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
魔王の花嫁編
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コンスからアルルが吸い取った話2

 二人は仲睦まじく過ごしていた。


 平穏で静かな生活。ガルラの兄というか姉のスパルナの子供が産まれたりしたが、それは、些末なことだった。二人の平和な生活になんら影響がなかった。


 スパルナは夫とその子供達と暮らしていたからだ。


 この時間が二人が生きている中で一番幸せな時間だっただろう。


 そして、幸せな時間は終わると相場決まっている。


 二人は親鳥と雛だったが、雛は、怪鳥へと変貌することとなる。イシュは魔王なのだ。赤き炎の鳥ガルラに牙を剥いた。


「ガルラをみていると、我慢できない」


「やめてください、イシュ。どうしたというのですか?!」


 成長し、身体も大きくなった。魔力も信じられないくらい大きくなったイシュは、ガルラに種を植え付けたのだ。ガルラを苗床にしたのだ。


 大きくなった魔力は、抑えきれなくなり、魔物を生み出した。この時に火竜も産まれた。特にガルラの神力を奪って生まれてきたのが火竜だ。ガルラは火の鳥だ。イシュはガルラの力を奪っていたという認識はない。逆も然り。ただ、近くにいたことで気づかぬうちに力を奪っていたのだ。


 ガルラは、このことから後に魔王の花嫁と呼ばれることとなる。


 苗床になったガルラから生まれてきたのは双子だった。


 一人はアルバと名付けられた。もう一人は、レイナといった。


「ガルラ、私のこと嫌いになった?」


「私がイシュを嫌いになるなんてあり得ない」


 ガルラは、イシュを受け入れていた。決して、力を持て余すガルラを責めたりしなかった。四人で幸せに暮らしていた。


 その幸せが崩れたのは、兄であり姉であるスパルナの介入だった。


「お前の力を奪って、イシュは魔物を生んでいる。漏れ出した魔力が魔物となり大地を壊している。人々を襲っている。お前を苗床にして産まれたアルバは魔族ではないか。レイナは、人間ほどの力しか持っていない。寿命も短い。お前たち二人が一緒にいても不幸しか生まない」


「スパルナ、待ってください。私はイシュと離れたくない」


「私もガルラと一緒にいたい」


「地上が破壊されてもいいというのか?! 人々が死んでもいいと?!」


「それは……」


 ガルラは言い淀んだ。


「私はそれでも一緒にいたい」


 イシュは迷うことなくそう言った。


「では、神族とお前は敵同士ということになる。ガルラ、来い」


「ガルラ!」


「イシュ待ってて」


 そう言って出ていったっきり、ガルラは戻ってこなかった。


「どうして、私を捨てたの?」


 イシュは、スパルナを訪ねるた。


「ガルラは剣に封じた。記憶も封じている」


『お前は誰だ? 私は唯一、魔物を倒すことのできる剣だ』


 魔物は、イシュの分身体だ。愛し合っている二人に殺し合いをしろ、ということだ。残酷すぎる。


「なんてことを! 私のガルラを剣にするなんて!」


「そうしなければ、我々が滅んでしまう!」


 そう叫んだスパルナをイシュは一瞬で消した。


 もう、ここにいる誰よりもイシュは強かった。


「この世界を呪おう。ガルラがいない世界なんて、いらない」


「イシュ?」


 そこにいたのは、何も知らないスパルナの子供たちだった。ガルラと一緒に面倒をみた子供たちだった。イシュにその子たちまでを殺すことはできなかった。


「魔王、と名乗ろう。この世界を滅ぼす。必ずな」


 魔王誕生の瞬間だった。




 アルルは、この話を読んで泣いていた。魔王を倒すこと、それが罪深いと感じてしまった。コンスがあれほど憔悴していたのは、これが原因なのかと。魔王は倒さないといけない。だが、魔王が誕生した、その原因は自分の祖先なのだ。しかも、愛する者の意思が入った勇者の剣で魔王を倒さなければならない。


「でも、どうして、コンスはこの事実を知ったんだろう。スパルナの封印に綻びができている……?」


 何千年と続いた封印は限界がきているのかもしれない。

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