コンスからアルルが吸い取った話
諸元の魔王のイシュは、一人、森の中、ぼんやり立っていた。
なぜ自分がそこにいるのか、わからなかった。
地上に最後に生き残った魔族という認識さえもなかった。
そこに、金色の存在が降り立った。
「そこで何をしているのですか?」
「……?」
目を奪われた。一目ぼれしたのだ。とても小さな魔の存在に。
「……私の名前はガルラ。この地に降り立った神族の一人」
ガルラは、胸の高鳴りを隠し切れない。衝撃から立ち直れないでいた。
「わからないのだ。わたしはなんなのだろう?」
「私と共に来てください」
天使の翼を広げ、ガルラはイシュを持ち上げる。イシュはまだ幼い。神族である自分は、魔族を保護するのではなく、滅せなければならないはずだ。だが、この時のガルラにそういった思考は一篇もなかった。
イシュは弱く小さな存在だった。ガルラの敵ではないだろう。一瞬で滅せる。ガルラはそんなイシュを守りたいと思った。
それを人は愛と呼ぶのかもしれない。
「ガルラ、何を持ち帰ったのだ」
そこにはお腹の大きな銀髪と真っ白な瞳を持った存在がいた。名をスパルナという。
「スパルナには何も言われたくない」
ガルラというか、神の執着は強い。なにかしらの感情を持つことが少ないが、一度、感情を持ってしまうと何よりも強い反応となる。特に、今地上に残った神の系譜はその要素が強い。
「意味もなく地上に残らずに、天界に行けばよかったものを」
「私は、あなたを監視するために残ったのです。神族を一人で残すわけにもいかないのですから。妹か弟でもありますしね」
尖った言い方をしているが、要は心配だから残ったのだ。
「ここに夫と子供がいるんだ。残らずにはいられないだろう。お前は何もないのだから、いる意味もないだろうに」
そう、そこにいたのは、コンスの祖先だった。そして、神族には、性別の概念がない。今、目の前にいる妊婦のように子供を産むことができる。
「もう、天界への道は閉ざされました。戻れないから仕方がないでしょう?」
勇者は、神族の子孫で、勇者の剣は姉の子を見守る者であったのだ。そういうシステムでもあった。ただ、この話は、そうなる前の話だ。
「その子は?」
「そこで拾いました。名前はわかりますか?」
「イシュ……」
「名前は憶えていたみたいですね」
英語でissueという言葉をつぶやいたのだった。イシューとは、出るという意味。最後に力の奔流から出たということ。問題という意味などでも使われる。
望まない形で地上に出た(残った)という言葉をかけられていたのかもしれない。それは、名前ではなかったのかもしれない。
悲しそうにうつむくイシュをガルラは抱き上げた。
「あなたは、ここで過ごしてください」
まるで親鳥が雛を守るように、二人は出会った。
うわぁぁあぁぁぁダメだ~~~やっぱり魔王と神の話はこの魔王の花嫁編の肝だから外せないです。書かないでおこうとおもったけれど、やっぱり必要です!




