はじまりの街の図書館
「今日もコンスと一緒かぁ」
アルルが不服そうに言った。
「イヤ?」
「いやっていうか、他の人たちは? 仲良くなりたいんだけど」
コンスは目を泳がせた。
「ヘルンとマールは仕事だよ」
「ゲイルは?」
「なんか機能停止してた……」
「どういうこと?」
「時々、あるんだよね。昨日マールと買い物して疲れたんじゃないかな」
「ふうん? ゲイルは機械みたいだね」
コンスの目は泳ぎ続けていた。
「何隠してるの?」
「それは、本人が言うことだからね。僕の口からは言えないよ」
「そだね、吟遊詩人としてはコンスから聞いても意味ないからいいよ」
「吟遊詩人ってことにこだわるね」
「今のボクにはそれしかないからね」
「あ、図書館が見えてきたよ」
古臭いデザインの三角屋根の建物だった。レンガがいい味を出している。
「あら、コンスさん、今日もいらっしゃい」
「今日も?」
「なななななんでもないよ! 早く生命の泉への手掛かりをさがそう!」
コンスは慌ててアルルの背中を押した。
「いつも来てるんだ」
「はぁ~そりゃバレちゃうよね……。そう、いつも来てる。剣士なのにおかしいだろう?」
コンスは悲しそうに笑って続けて言う。
「父さんが生きてる頃には散々言われたよ。本なんて読んでないで剣の稽古をしろって」
アルルの瞳が金色に淡く光った。
「初代の勇者も本の虫だったらしいよ。君は君のままでいいんだよ。本が好きで何も悪くないよ」
コンスはアルルの瞳を見て言う。
「なんだかアルルは、緑の瞳から金色の瞳になってる時に不思議なことを言うよね」
「そうなの? 自分じゃわかんないや」
「とっても不思議な色だね」
「ごほん!」
図書館の司書さんが咳ばらいをした。おかしな雰囲気になりそうなところを止めた。というか、単にうるさかっただけかもしれないが。図書館の中にいるのは、二人だけではないからだ。
「あ、こっちにあったよ、地図のコーナー。そこでいい?」
「うん、まずはそこから見ないとね!」
コンスは地図を広げた。
「ここだ!」
金色に光る瞳で、アルルはある泉を指す。
「そこなら、はじまりの街から近いね。一週間あれば行き来できるよ」
「すぐ行こう!」
「他の皆と休みを合わせたらね。というか、饅頭屋さんはいいの?」
「あ! 早く行かないと!」
「そもそも、やり始めたばっかりで一週間も休み取れないと思うよ」
「ぐっ!」
アルルは悔しそうな顔をした。
「それに、皆、バイト中心だからね。冒険に行けるかどうか」
「うちのパーティは本当に冒険者っていえるの?」
「バイト集団かもね」
「うわぁぁぁぁぁ」
アルルは絶叫した。はじめてのパーティなのに、冒険せずにバイトばっかりってどういうことだと頭を抱えた。
「ちょっと、そこの人、うるさいです! 退場!」
司書さんから不名誉な図書館出入禁止の称号を得たアルルだった。
風邪ひいて一週間は治らなかった……栄養ドリンクと風邪薬漬けに……。軽く死ねた……。
さて、次回は皆でバイト……じゃなくて、生命の泉へ行く話。やっと冒険者らしくなってきましたね!ちゃんと……冒険するよ……ね?