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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
魔王の花嫁編
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魔王との邂逅

「我も魔王を倒す!」


 ヘルンのこんなに熱く語る姿は初めてだ。宿屋での出来事だった。


「その気になってくれて良かったけど、本当に大丈夫?」


「大丈夫なのである!」


 コンスに元気いっぱいに返事をしたが、ヘルンの目は腫れ上がっていた。


「何があったか、落ち着いたらちゃんと話してね、ヘルン」


 アルルの顔が怖かった。弱っているヘルンをみて、追求することをやめたのだ、あのアルルが。


「これからのことだよね」


「そだうだね。魔王はどこにいるんだろう」


「宣戦布告とかしにきてくれないかな」


「吟遊詩人のアルルは何か知らないの?」


「吟遊詩人が勇者パーティになったのは、ボクがはじめてだよ。大体、吟遊詩人は非戦闘員が多くて一緒に行くことはできなかったんだ。後から伝え聞いた話だから、詳しい伝承としては残ってないんだ」


 突然、風が吹いた。


 そこには、アシュリーの姿の魔王とその側近のアルバがいた。この宿屋、いろいろ起きすぎでは。


「挨拶にきてやったのじゃ。ありがたく思え」


 魔王は自信満々に胸を張った。あれ?魔王って極悪非道なんじゃないの?幼女っぽいアシュリーの外見だからなのか、なんだか幼く可愛く感じてしまう。


「これが勇者パーティじゃと。冗談だろう?」


「魔王様、冗談ではありません」


『久しぶりだな、魔王!』


「ん? 誰だ?」


『は? 私を忘れるとは、魔王はもう耄碌してる!』


 コンスが剣を魔王の前に出す。鞘ごとだ。戦うつもりがないのか……。


「ああ、勇者の剣か。相変わらずうるさいのう」


『お前にだけは言われたくない!』


 いいツッコミだ。


「二人は知り合いなの?」


 アルルの吟遊詩人の血が騒いでいるようだ。


「勇者の剣は神族であるものの意思が入っている。だからわしを切れるんじゃ。そいつとは、もう長いこと腐れ縁じゃ、忌々しい」


『なんだと! それはこっちのセリフだ!」


「なんで、そんなに素直じゃないんだ!」


 コンスが突然怒鳴った。その瞳には怒りが沸々と湧き上がっていた。


「え?」


 魔王が目を丸くして後ずさった。なぜ勇者に怒鳴られるのか心底わからないようだ。ちなみに、コンスは勇者の剣に対して怒鳴っている。魔王にもちょっとは怒鳴っている。


「怖いのじゃ。帰る。いくぞアルバ」


「おおせのままに」


 魔王とアルバは風のように去っていった。


「コンスどうしたの? 落ち着いて」


「もう、うんざりだ! 馬鹿みたいな過去をみせられるのは!」


 良く見ると、コンスの目の下には深いクマが刻まれていた。

 

「何があったか、話して、コンス」


 アルルがコンスを必死に抱き止めていた。


「俺たち人類は、魔王だの神だのの気まぐれで生き死にを決定づけられるなんて間違っている。今まで犠牲になってきた人間のことを考えたことがあるのか!」


 コンスの怒りは深かった。こんなにも感情を露わにするのは初めてだった。そして、魔王と神の気まぐれ……と言っていいのかわからない話をコンスははじめた。


ちなみに、アシュリーは魔王でないし、ヘルンはその花嫁ではありません。では、この魔王の花嫁編の『魔王』と『花嫁』は誰でしょう。魔王はあの方ですが……。私もヘルンが花嫁だと思っていた時期がありました。

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