魔王打倒宣言
「コンスがそう言うなら、ボクに異論はないよ。吟遊詩人として、魔王を倒すのを身近でみられるなんてこれ以上ないことだからね」
「わ~たし~もと~くに~異論~は~ない~わ~」
「俺も別に構わない」
「……」
「ヘルン?」
コンスが不思議そうにヘルンの顔を覗き込んだ。
「魔王……は倒さないといけない……のであるか……」
ヘルンの歯はガタガタと音を立てていた。
「人間に害を及ぼすなら、倒すしかない」
コンスははっきりと言った。
「魔王を倒さないと、この世界が滅んじゃうんだよ」
様子のおかしいヘルンを気遣いながらアルルは諭すように言う。
「魔王を知っているのである……害のある存在なんかじゃないのである」
「これは、極秘に吟遊詩人に語り継がれていることなんだけど、もし、魔王が復活したというのなら、その人は、もうその人じゃなく魔王に成り代わられているよ」
『魔王は、昔から変わらず一人だ。あんの屑。早く滅びてほしいものだ。この世界が、何百年も平和だったということは、魔王が魔王として発現できなかったということだ。その身体を手に入れた魔王は最強だろう』
勇者の剣は口が悪いようだ。今までで一番軽快にしゃべっている。
「倒したら、我の知っているその人はどうなるのであるか?」
『身体ごと消滅するであろうな』
ヘルンは声もなく涙を零していた。
「いてて……ヘルンはどうするか、考えておいてくれ。今日はもう遅いし寝よう」
『なんだ、コンス。まだ体調が悪いのか。軟弱すぎる。まあ、私がしゃべれるようになったから、体調が悪くなったんだろうがな』
勇者の剣はせせら笑っていた。ゲイルはその態度や言葉に怒ったのだろうが、無表情のまま本気でその剣をコンスから奪おうとしていた。
「ゲイル、大丈夫だから。この剣がないと魔王は倒せないんだ。ダメだよ」
コンスは優しく気だるげに支えてくれているゲイルに言う。
弱っているからだろうか、え、何? BL始まった?
ゲイルはコンスの腕を掴んで近くの椅子に座らせた。
「明日また話そう」
そう言って、女子三人は男子部屋から出て行った。
運命の歯車が動き出し、音を立てて軋んでいた。




