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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
魔王の花嫁編
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魔王かも

「ところで、魔法を使いこなしてどうしたいのであるか?」


「妾は、ヘルンのように自在に魔法を使いたいのじゃ」


「探求心があるのはいいことであるが、今のままで何か不都合があるのであるか?」


「ありまくり……なのじゃ」


「どんな不都合なのであるか?」


「妾は、いるだけで、世界を歪めてしまうのじゃ。この力を少しでもコントロールしたいのじゃ」


「世界を歪める……?」


 ヘルンは思った。それって魔王の能力なんじゃ、と。


「え、それって、まずいのではないあるか……勇者パーティ的にも」


「なんじゃ? 真っ青な顔をして」


「あ、いや、その……」


 明らかに挙動不審になるヘルン。


「今日はこのへんで終わりにしていいあるか?」


「かまわんよ。ただし、この一か月分のお金を支払っていることは忘れんでほしいのじゃ!」


 幼女かわいい、じゃなかった。キュートな笑顔のアシュリーは、まぶしかった。ヘルンにとっては、お金的な意味でも。


「わかっているのである!」


 ヘルンはそう叫んだが、内心は混乱していた。


 目の前に倒すべき魔王がいるかもしれなくて、本物かもわからなくて、どうしたらいいかわからなくなるのは道理というものであろう。


 ヘルンはとぼとぼ宿屋までの道を帰りながら、つぶやいた。


「誰かに相談すべきなんであるか……?」


 アシュリーのかわいい笑顔が頭をよぎる。


「本当に魔王なのであるか? それとも……」


 とりあえず、1ヶ月は何も行動できないだろう。ヘルンの苦悩は続く!


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