番外編の番外編 アルルとコンスの夜
「ねえねえ、コンスは不安になったりしないの?」
アルルがコンスを見上げながら言う。レンタル冒険者編のアルミー達とクエストで雪山に入る前の話だ。部屋代がもったいないので二人は同室の宿をとった。アルミー達がアルルが女性だと知っていれば別部屋をとったに違いない。
「何に?」
コンスは心臓が微妙に違和感を感じた。だが、コンスはそれがどういう感情なのか、知らなかった。だから、気のせいということにした。
「自分が勇者であることとか」
アルルの瞳が金色に光る。不思議な感覚だ。アルルがアルルでなくなるみたいで、コンスは少し不安になる。金色の瞳をやめさせたくて、たぶんそうだろうという核心をつく。
「もしかして、神の血筋ってこと?」
「そう。その剣を使えるってことは、かなりの先祖返りだってこと、わかってる?」
「それについては、少し自分で調べてたんだ」
「たぶん、母の血筋みたいだ」
「王家のお父さんじゃなくて?」
「父は王家の中でもかなりの先祖返りだったと思うよ。この剣を使えるんだから。だけど、僕までここまで力が使えるのは、母のおかげだと思うんだ」
「お母さんは、どこの人?」
「辺境の村だけど、そこは少し変わってた。辺鄙なところっていうのもあるけど、村の中での血族婚が多いんだ。王都からの支援物資も届いてる。まるで何かの血筋を守っているようだった。父はそれに気づいていたのかもしれない。だから、母を見い出したのかも」
「ナニソレ?! 愛がない!」
「は?」
コンスの顎が外れたような顔をした。
「偶然、遠征中に隔離された村に迷い込んで、出会って一目惚れ! その場で求婚!」
月の光に照らされて、白い神殿の柱から男性が女性に声をかける。男性は鎧に身を包んでいた。女性は美しい髪をなびかせていた。
「これくらい演出しないと、吟遊詩人の語る物語として成立しないから! 確かに、コンスのお父さんは会えるかもって打算はあったと思うけどさ!」
「そんなこと言われても……父と母の馴れ初めなんて知らないよ」
困った顔をしていたコンスだが、内心は笑っていた。アルルの瞳はずっと緑のままだったからだ。
「初代の勇者は神と人間のハーフだったんだ。魔王が悪さするのに合わせて、それを倒すために作られた存在。傲慢で強くて、自信家。人間として性格は最悪だったけど、仲間を集めて魔王を倒したんだ。初代パーティは勇者と拳闘士、魔法使いに精霊使い、僧侶だった」
アルルの瞳が金色に染まりそうになった。
「アルル!」
「どうしたの?! いきなり叫んで」
「その話はいいよ! もう寝よう!」
「コンスがいきなり大きな声出すからビックリしたよ。明日も早いし、早く寝ようか」
アルルは腑に落ちなかったが、ベッドに横になった。
コンスは安心してランプの灯りを消した。
「アルル、いい夢を」
「おやすみ、コンス」
コンスは心の中が落ち着かないのを不思議に思いながら、しばらく寝付けなかった。その気持ちの名前をコンスはまだ、知らない。だが、後に気づくだろう。心が裂けるような思いと共に。
番外編は、順番が超フリーな感じです(笑)
この話は、アルルの秘密についての伏線の話です(自らバラしていくスタイルw)これで最後が楽しみになってくれるといいなぁという軽い気持ちで書いています(笑)最後を読んで、だからか!ってハッとしてもらえたら嬉しい話です。




