勇者の剣
「バイトってどうやって探すの?!」
あれから無情にも三日も経っていた。
「大丈夫、見つかるよ。慌てて探すより自分に合ったのを見つかる方がいいよ」
さわやかそうな笑顔で他人事のように話すコンスを恨めしそうな眼でアルルは見ていた。
それでもバイトは見つからず、一週間が経った。あまりにも落ち込んでいるアルルを憐れんだのか、コンスが近くの森での魔物討伐に誘った。
「気分転換にどうかな?」
「いく~」
アルルは、落ち込みながらもコンスと近くの森に行くのだった。街中で、怪しい露店に並ぶ怪しい商品を高額で売りつけられそうになっていたコンスを無理やりひっぱて行ったというのは、アルルにとって忘れたい記憶だ。
「一緒のバイトのゲイルは?」
「今日はバイト休みだから、マールと一緒に買い物に行くって。荷物持ちさせられてるんだ」
「二人は仲いいんだね」
「あの二人は僕たちに会う前から仲間みたいだからね」
「ふうん~」
アルルはあまり興味がないようだ。それよりは、バイトを早く決めたいという思いに囚われている。
「風よ、彼のモノを拘束しろ」
風の精霊にお願いをして魔物を拘束してもらう。
「はぁぁ!」
そこにコンスが剣を降り下ろす。
狼型の魔物はあっさり倒れた。
「レベルとかあったら、ボクらは相当高いよね」
「個人のレベルがないからね。クエストレベルが上がれば希望もあるんだろうけど」
コンスは剣をしまう。ゲイルの件があって、クエストレベルを上げることは難しいだろう。
「ねぇ、その剣、どっかでみたことあるんだよね。めっちゃ錆びてるけど研磨しないの?」
「どこの武器屋に頼んでも、この剣の錆びは取れないんだ。でも、代々伝わってる家宝だから、これ以外の剣は考えられないんだ」
「う~ん、う~ん」
「どうしたの?」
「思い出してるの」
その時、アルルの緑の瞳が金色に光った。一瞬だけでまた緑に戻った。世にも不思議な光景だった。人間の瞳は光るようにできていなからだ。
「そうだ! 勇者の剣だ!」
「何、面白いこと言ってるの。そんなわけないよ」
「勇者の剣は、生命の泉で勇者の剣を打った道具でしか再生しないんだ!」
「アルル? 大丈夫?」
「その剣は、ちゃんとしないといけないと思う!」
「勇者の剣なわけないじゃないか、よく考えてよ」
アルルはコンスにぐっと身体を寄せた。
「騙されたと思っていいから生命の泉に行こう!」
目が怖い。
「アルルがそこまでいうなら、行ってみるだけ行ってみようか」
アルルに根負けしたコンスは生命の泉に行くことになった。
「今日、宿屋に戻ったらみんなに相談してみよう」
困惑気味にコンスはアルルを連れて帰路につくのだった。
アルルは生命の泉に行く前に、バイト決めないとね。