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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
森の泉の女神編
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秘密の女子会

「千里眼〜が少し〜使え〜るか〜も〜」


 マールは少しずつだが、自分が見たいと思うものを見れるようになっていた。宿屋の部屋でのことだった。そこには、アルルとマール、ヘルンがいた。所謂、女子部屋だ。


「マールまで強くなったであるか?!」


「回復〜も無限に〜できる〜かも〜」


 今まで激遅だった回復も早くできるようになっていた。


「なんなんであるか?!」


 マールとヘルンが戯れている中、アルルはアンニュイだった。


「なんか、この話に戦闘とか足りなくない?」


 吟遊詩人的にさとアルルは付け加えた。


「女神の話だったから、戦うのはなんか違くないであるか?」


「でも、それじゃ面白くなくない?」


「物語的〜には〜そうかも〜しれ〜ない〜けど〜、戦わなく〜ていい〜ならその方〜が〜いい〜じゃない〜?」


「そうかもだけど〜! 手に汗握る展開がほしいよ〜!」


「久し〜ぶり〜に、クエスト〜でも受注〜する?」


「そうすると、簡単すぎるんだよね……レベルに合ってないっていうか。みんな、強くなりすぎなんだよ。こう、ギリギリって感じじゃなくて、楽勝なんだもん」


「強く〜なる〜ことはいい〜ことだけど〜ね、強敵が現れる〜かも〜しれない〜し、最終的には〜魔王を倒す〜のが勇者〜パーティの役目〜でしょ〜?」


「魔王はどこにいるんだろう。悪さしてるっていう噂も聞かないし。正直、平和なんだよ、この世界」


「悪さし〜てなくて〜も魔王は〜倒さなきゃ〜いけない〜のかし〜ら〜?」


「魔王は倒した方がいい! 魔王は倒さなきゃいけないんだ、ある理由から……」


「ある理由とはなんなのであるか?」


「うーん、それが、吟遊詩人も語らないんだよねぇ。魔王には魔王なりの理由があるんだけどさ。魔王は人類の敵だから、必然的に倒さないといけないってことでいいみたい。どうしても人類を害さずにはいられないんだよね。王都の王様の件、覚えてる? 魔力を持っているものが魔王に影響されておかしくなるんだって」


「影響を出さずにはいられないであるか?」


「そう! それが魔王だから。今の魔王に動きがないっていうことは、上手くやってるんだろうけど、いつ動き出すかわからないからなぁ。平和のままでいてくれないかなぁ」


「魔王は〜随分と〜不穏なのね〜」


「そうだね! ボクは少しでも長い平和を祈ってるよ」


「祈っている平和は、崩れるかもしれませんよ」


 そこには、魔王の側近の悪魔アルバがいた。赤い目の悪魔だ。かなり高位の悪魔だから、強いはず。性格に難ありだが。


「えっ? 女子の話してる部屋にいきなり入ってくる無神経……」


 もはや悪魔とかそういう次元の話ではなく、行動に対してアルルは不快感を顕にしていた。


「蔑むようないい目ですねぇ〜ゾクゾクします。あの後、貴方達に接触したことが魔王様にバレて、側近を首になってしまいました」


 ドM過ぎて気持ちが悪すぎる悪魔だ。ずっと前にも登場していたのを皆様覚えているだろうか。


「あと、私も性別的には女なので、女子会の仲間にいれてくださいよ」


 悪魔に性別という概念ははないので、これは嘘だ。だが、逆に自分を女だと認識すれば、アルバは女ということになる。


「女子会し〜てるわけ〜じゃ〜ないん〜だ〜けど〜」


 マールは、意外とこの悪魔を受け入れていた。アルバが飄々とした態度なのに必死な目をしているからかもしれない。女の子アピールも効いたのかもしれない。


「勇者のパーティは、魔王を倒す運命にあります。だから、貴方たちは、敵です。ですが、少しだけ話を聞いてもらえますか。あと、知恵があれば、貸してほしいのです」


「ボクらは敵に塩を送るの?」


「平和な未来のために、貴方達にも悪い話ではないと思いますが。ヘルン、貴方にとっても」


 アルバを見て怯えていたヘルンは手をキツく握りしめた。


「だけど、魔王を倒すことは、絶対に避けられないことなのである。それは、絶対に変えられないのである」


 そして、四人の秘密の女子会は、決着点をみつけられないまま過ぎていった。


 この話の続きは、魔王の花嫁編にて。






ティトリーが起きるまで、少し時間があったので、次の章の伏線を。


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