マールの告白
「僧侶は、普通の人はなれない。なぜなら、神に信仰を誓わないといけない、ということに表向きはなっているから。でも、実際は、幼い子供を攫い、水の力を宿した、この宝石を埋め込むの。ほとんどの者が、不適合で死ぬわ。私は生き残った。適合者のみが僧侶になれる」
マールはため息をついた。宿屋のベッドの上で、上体だけ起こして、パーティの五人に話をしていた。ランプの光が六人を照らしている。
「僧侶の能力は外道の力。邪法といって差し支えないわ。この胸に埋め込まれた宝石のなかに生命力を溜めるの。そして、それを分け与えることによって、回復させる。歴代の僧侶は、確実に、生きているものから生命力を奪ってきている。私はそれが嫌だった。勇者のパーティにいれば、必ず多くの回復が必要になる。人間の命を選別して、奪っていたはず。魔物の命かもしれない。私はそれをしない。だから、私の回復量は多くない。自然界から少しずつ生命力を集めているから。いつでもどこでも回復できるということは、大量の命を他から奪い続けているということ。優秀と言われる僧侶ほどね。私は絶対、僧侶として優秀でいたくなかった」
「この業は、罪は、僧侶全てのものだと思うわ」
マールは立ち上がった。
「喋り方も、ゆったりした癖のあるものにした。そうすることで、回復を急かされない、期待されなくするため」
そして、寂しそうに宝石があるであろう場所を撫でた。
「私は、生き残った。だから、僧侶として生きるわ。自分の望み通りに生きるために足掻くわ。死んでしまった仲間の分も生きるため」
死んでしまった仲間がいるのかもしれない。
「軽蔑した?」
「……するわけない! マールは悪くない! その宝石に泉の女神ティトリーを宿すことができたなら、穢れや汚れがないってこと。それは、僥倖だよ! えっと、サイコーってこと!」
変な言葉を使ったかと焦っているアルルだが、焦ってることが違う。
「よくわからないのであるが、何が問題なのであるか?」
アホの子ヘルン。安心感。
「マールはマールだ。生い立ちで軽蔑することはない。俺も人のことを言えない」
ゲイルはそう言いますよね。惚れてますもんね。
「マールは、俺たちの仲間だ。マールが望む限り、それは、変わらないよ」
コンスは爽やかに笑った。変わらない笑顔。
「あ〜りが〜とう〜」
マールは泣きながら、笑った。
あ、やっぱりこの話し方に戻りますよね、そうですよね。大変だけど、安心しました、作者は。
「そういえば、ティトリーは、話せるの?」
「ティトリー様〜は眠っ〜てる〜よう〜な〜の」
「そうなんだ。話できるようになるといいね」
「しば〜らく〜は〜無理か〜もしれ〜ない〜わね〜失恋〜の痛〜みもある〜だろうし〜」
「眠ってる理由はそこなの?」
「ふふっ〜ティトリー様〜も〜女性〜です〜から〜」
「まあいいや。ティトリーがそれでいいなら」
マールの昔の話も書きたいな。僧侶になる過程で死んじゃった幼馴染の女の子の話とか。その子も僧侶になる予定だった。




