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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
森の泉の女神編
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ティトリーの告白

「何があった?!」


 ゲイルとマールが泉に到着した。


『……貴方たちは……』


 泉の半分が爆破されていた。犯人はもう逃げていていないようだ。


「なんてことを!」


 マールが怒鳴っていた。めちゃくちゃレアだ。


 ティトリーは弱っていた。存在を保持するための泉が半分抉られているのだ。


『……こうなることはわかっていたの。なぜ、定期的に騎士団のあの子がここを見回っていたのか……ここは、開発計画があるの。泉が邪魔なのよ。だから、排斥したい者たちが強硬手段に出ないように、街の騎士団が派遣されていたの。ここは、龍脈の要。破壊されれは、この辺り一体が水につかるわ』


「どうしたらいいの?!」


『どうにもならないわ……これが運命だったのでしょう。ここは森だから水につかっても村や人間たちに被害は及ばない。貴方たちに会えて本当に良かったわ』


「そんな!」


「はぁはぁっ! マール、ティトリーを胸の宝石に取り込める?!」


 ダッシュしてきたアルルが叫ぶ。


「あと、高台に避難して!」


 マールは必死に祈った。神に、女神に、この世の万物に。


 胸の宝石にティトリーが吸収された。水が彼女を包む。


「……できた!」


 それを見たゲイルはマールを担いだ。


「早く高台に!」


 アルルの案内でマールとゲイルは避難した。その時、堰き止められていた膨大な水が流れていく。ここは、きっと川になるのだ。


 何故か一人だけ、びしょ濡れになったマールは気を失っている。


「この付近の街や村は?」


 ゲイルはあまり変わらない表情を僅かに曇らせている。


「それは、我々がいるから大丈夫です!」


 そこには、ティトリーの想い人の騎士がいた。


「こうなることは想定のうちだったので、手を打っておきました。避難経路を決め、防波堤も作れるだけ作りました。それが、ティトリー様の願いだったからです」


「ありがとう、騎士団のおかげで私は望み通りの結末を迎えることができました」


 そこには、びしょ濡れの美女、マールがいた。美女濡れる=色っぽい。


「この方の身体を借りています。私は生き残ってしまいましたね。そして、泉から離れて自由に動き回れるようになりました」


「ティトリー様がご無事で安心しました」


「……あなたが好きでした」


 突然の告白に、騎士は驚いた顔をした。後ろにいるゲイルがあからさまに不機嫌になった。


「消滅するはずだったので、言わないでおこうと思いましたが、もう、あなたとお会いすることも叶わなそうなので、言っておきます。この気持ちは、本物でした。一生に一度の恋だったわ」


「なんだか、ティトリー様ではないみたいですね。……私はあなたをそいういった対象としてみてはいませんでした、すみません」


 マール、もといティトリーの顔が悲しげになった。瞳を閉じる。そして、ゲイルの顔が怖すぎて、騎士の顔もひきつっている。逃げ腰になって今にも逃げだしそうだ。


「いいのです。私は新たな一歩をこのマールと踏み出します。だから、貴方は貴方の道を歩いてください。精霊と人間が結ばれても、寿命が違いすぎて悲劇を生むことしかないでしょう。風の精霊王の嘆きは深かった」


 ティトリーは優しく微笑んだ。


『貴方に水の加護があらんことを』


 マールは意識を失い倒れた。すかさず、ゲイルが受け止めた。




「一件落着かな」


 アルルが息を吐いた。


「そうだな」


 コンスが安心したように言う。


「我、一個も活躍してないのである!」


「安心して、それがヘルンだから」


 三人は楽しそうに笑っていた。ふっとアルルが真顔になった。


「マールはボクたちに話すかな」


「目が覚めるのを待とう」


「何、二人で通じ合ってるのであるか!」


 わいわい帰った。幸い、防波堤のおかげで宿屋は無事だった。


さてさて、次は、マールの告白ですね!

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