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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
森の泉の女神編
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僧侶の秘密はそのままで

「詳しくは知らない。だけど、概要は知ってる、と思う。その胸にある宝石のこととか」


「そう……」


 あの独特の喋り方を辞めたマールは取り繕うことをやめていた。だが、ただの金髪碧眼の美女なので面白みがない。あと、作者が『〜』を入れなくていいので楽だから、このままでいてくれまいか。


「マールが嫌なら無理意地はしないけど、その宝石が鍵になると思う」


「……少し時間がほしいわ」


 マールはそう言って図書館を出た。その後をゲイルが追った。


「ゲイルが他人に興味を持つなんて、珍しい。追いかけるとは思わなかった」


 コンスが驚いていた。


「でも、ボクもマールが何を選ぶのか興味ある」


「アルル、それは、吟遊詩人として?」


 コンスの瞳が冷たく輝く。吟遊詩人のこととなると、コンスはいいイメージを持っていないようだ。勇者のカンとでもいうのだろうか。アルルは挑戦を受けるような好戦的な顔をする。


「それがないとは言わない。ボクの全てだから、吟遊詩人は。だけど、それ以前に、ボクはマールに辛い思いをしてほしくない、仲間として」


「それは、俺も同じだけど」


「なんでいつも我は話に入っていけないのだ……」


 ヘルンはぶつぶつ呟いていた。


「それは、本人に問題あるからじゃん?」


 アルルがからかうように自然にヘルンを会話に入れた。


「アルルみたいな人見知りもしない人生楽勝っぽい人には何も言われたくないのである!」


 本気でヘルンは言っている。だが、アルルの言葉ほど重みはない。アルルからは百戦錬磨の心を感じる。


「楽勝かぁ……そうかもね、楽勝の代償は大きいけど」


「なにか言った?」


 コンスが心配そうにアルルに話しかける。

 

「過保護もほどほどにしとくのである!」


 ヘルンがコンスを怒った。珍しい。


「酷いな。心配してるだけなのに」


 コンスとアルルは先に図書館から出ていった。


「我の思いに気づいてもくれないくせに!」


 小さな声で、ヘルンは怒った。


 気づかれたいのか、そうでないのか本人もわからない複雑な乙女心であった……。





「マール」


「なに、ゲイル?」


 マールとゲイルは歩きながら話していた。


「何が問題だ?」


「貴方にわかるとは思えないわ、ゲイル」


「理解できないかもしれないが、話さないとはじまりもしない」


「わかってるけど、感情がついていかないわ! そんなに簡単にこんな、この秘密を言えるわけないわ……」


 マールはいつもとは違い、余裕のない顔をしていた。胸を首の間のくぼみを守るように握っていた。


「あんまり思い詰めるな。アルルも言っていた。無理には言わなくていい」


「言わないと、ティトリー様は仲間になってくれないのよ! 私はあの女神を助けたいの」


「アルルが言っているだけだ。お前が責任を取る必要はない。助けられなくとも、俺たちが困ることはない」


「アルルは関係ない……僧侶という職業の業の深さが、女神を助けることで、少しでも……」


「業が深い?」


「世間が思ってるイメージほど、いい職業ではないのよ、僧侶は。人を癒すというのを何の対価もなくできると思う? 綺麗ごとで人を癒すことはできないの。奇跡じゃないのよ」


「どういうことだ?」


「命は命でしか諍うことができないの」


 マールの顔は絶望していた。


『ドカーン』


 何かが爆発する音がした。ティトリーのいる泉の方向だ。


 マールとゲイルは顔を見合わせて、泉へ向かった。


 








この後、続きは本日12時ごろに投稿します。

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