バイトしたい
「バイトかぁ」
ベースというか拠点として使っている宿屋の一室にいた。お金がないので、大部屋を5人で使っていた。パーソナルスペース皆無だ。Lv.0のぺっぽこ冒険者なら仕方ないだろうが。なんとなく、そのまま慣れてしまって最初のままのような気がする。アルルも部屋の一角を自分の領地としてもらった。ヘルンやマールはカーテンを引いていて、自分の領地が見えないようになっていた。アルルもそうしたいが、先立つものがない。まずは、バイトをしてお金を稼がなくてはならない。
「村は自給自足だったからバイトなんてしたことない」
「ここは、はじまりの街だし大きな街だから、何かアルルにできる仕事があるよ!」
コンスが力強く親指を立てた。
「案内がてら一緒に行ってあげるよ」
「お願いします」
あまり気は進まないがアルルはコンスとはじまりの街の探索にでかけるのだった。
「普通の街だと思うよ。僕のいた街は、もっと大きかったから」
「へ~」
こいつ自慢かよ、とアルルは思っていた。自給自足の村から来たら、どこでも都会に思えるだろう。あまり反応が良くなかったせいか、コンスはアルルに屋台に出ていたお饅頭を買って渡した。
「ほら、名物なんだ。おいしいよ。はじまり饅頭」
「ありがとう」
ほかほかでこしあんで、すごくおいしい。
「おばちゃん、お腹が大いんだね」
はじまり饅頭の売り子のおばちゃんにアルルは話しかけた。
「そうなんだよ、立ってるのが辛くてねぇ」
おばちゃんと言われたのに、全く気を悪くすることもなく、愛想よく答えてくれた。
「ボクの村の風習で、風の加護を受けられるようにおまじないするけど、おまじないしてもいい?」
「風の加護?」
『君の先行きが風のようでありますように』
微弱な風が吹いた。
「無事に生まれて来ますように、っていう願いが込められてる、ただの言い伝えなんだけどね。おいしいお饅頭のお礼だよ!」
「ありがとね!」
おばちゃんは明るく言って手を振った。
「アルルは風使いを活かせるような職業を探せばいいね」
「どんな職業だよ」
「そこまではわからないよ」
「コンス役に立たないなぁ」
「酷いなぁ。でも、本当にそうだね」
コンスは照れくさそうに本当に悪意なく笑っていた。
「純粋すぎて、まぶしすぎて目が痛いわ」
アルルは心の目が焼かれている気がした。
そうして、はじまりの街の観光が無事終わった。
「え? 終わった?」
夕日が出て街がオレンジ色に染まっていた。
「おわってるし~~~!」
「バイト、見つからなかったね」
気遣われるような感じでコンスに言われるとアルルは死にたくなった。
「なんでぇ~~~!」
「明日、また行くといいよ。それまでは、僕がお金を貸しておいてあげるから」
「いきなり借金だし……」
「寝床と食べ物があるだけで随分マシだよ。感謝しなきゃ」
コンスとは思えないほど厳しい顔だった。アルルは何か過去に何かあったのかな、くらいで気にしなかった。
「コンス、ありがとう。ボクがんばる!」
「その調子!」
アルルは自分のことで精一杯だった。自分もだが、他の4人にも深い事情があるのだった。
バイトじゃなく「ぼうけんしよう」とかだったらよかったのにね☆
今回真面目に終わりました!ギャグっぽくなくて不満w