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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
森の泉の女神編
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ティトリー救出計画を立てる

『助ける?』


 ティトリーはきょとんとした顔になった。


「そう、貴女を助ける。ちょっと他人事だと思えないし」


 その後、きっとボクは永遠に血に縛られているから、とアルルはつぶやいた。


「ボクの名前はアルル。そこにいるのがコンス。三人は自分で自己紹介して。誰が誰だかわかんなくなるし」


「我は、ヘルン。魔法剣士なのである!」


「剣で戦ってるとこみたことないけど」


「一回はあるんじゃない? ちゃんと剣振れてなかったけど」


 アルル、コンスが口をはさむ。


「うるさいのである!」


「ゲイル。拳闘士だ」


「私は~僧侶の~マールです~。私の~信仰~は貴女様~にも~あるでしょう~。とても~身近~な~気~がし~ま~す」


 マールがこれ以上ないくらい深々とお辞儀をした。心なしか早口でもある。


『あなた達はそれでいいの? 私を助けても』


 後ろのパーティメンバーにティトリーは問う。


「アルルに何を言っても聞かないのである」


「別に構わない」


「アル~ル~が~決め~た~なら~いい~わ~よ~」


 ヘルン達が口々に言っている。

 続けてコンスは、しっかりとした口調で話す。


「魔王討伐が俺達の目的ですが、困っている人を見捨てていくのは、俺の流儀に反します」


「いや、彼女は精霊だから、厳密には人と違うよ」


「アルル、うるさい。大事なのはそこじゃない」


「はいはい、わかってるよ」


「人だろうと、精霊だろうと困っていたら助けます」


 ティトリーは笑顔になった。


『あら、格好いいわね。惚れそうよ』


「え?!」


 コンスが真っ赤になった。


「ちょっと、コンス? 人間とは結ばれないっていったそばから、なんで恋の予感、発生させようとしてんの?」


「違う!」


 真っ赤になったコンスをアルルがからかっていた。冗談だということはわかっている。


『二人はとても仲がいいのね』


 そして、そんな二人を恨めしそうに見ているヘルン。それらを生暖かい目で見守るマール、無興味なゲイルで構成されていた。


『パーティとしてバランスがいいのね』


「そう見えるティトリーの目は節穴だよ!」


『あら、アルル。私の瞳は何でも見通す水の瞳よ。節穴なんてわけないわ』


 手で泉の水を巻き上げた。


『水の精霊は見通す力と癒しの力を持っているわ。見通せるのは水の関係のことだけでリアルタイムでしか無理ですけれど』


 水を操り、千里眼を持ち、癒しの力を持つ。それが水の精霊だ。


「便利! 仲間にならない?」


『アルル、申し出は嬉しいけど、私はここを動けないよ。どうやってついて行けばいいの?』


「これから、それを見つけるんですよ」


 コンスが笑顔で言う。


「きっと大丈夫!」


 アルルも、何でもないような笑顔で言う。長年、悩んできたティトリーは、いろいろな感情が入り混じって涙目になる。


『ありがとう…』


 ティトリー救出計画が船出を迎えた瞬間だった。










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