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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
炎の竜編
32/72

残された者の戦い

「領主よ、クレアが子供を産むために死んだ」


 領主の屋敷でカリュは口を開いた。


「……どういうことだ。私をたばかろうとでも言うのか」


「貴様の孫だ。そして、私の娘だ」


 手に大事そうに抱いている赤ん坊を見せた。


「お前の正体は知っている。火竜ではないか。お前を殺せば、力が解放され、この辺り一帯が火山の噴火によって滅ぶ、と調べはついている」


 領主の瞳は怒りに燃えていた。


「火竜が義理の息子などと笑えない。クレアはどこだ?」


「クレアさんは、死にました。子供を生むために」


 コンスが平常心を保ちながら言った。目には涙が浮かんでいた。


「君は、勇者?! 話は本当か?」


 領主はさすがに狼狽していた。コンスが勇者と名乗ることはない。領主はコンスが勇者であると裏で調べていたに違いない。


「本当だよ。あなたはどうするの? 娘を奪った火竜倒し、火山を噴火させてこの辺り一帯を火の海にする? 孫から父親を奪う?」


 アルルが責めるように言った。


「なぜ、こんなことに」


「一度でもクレアの話を聞いてあげたことあるの? あなたが招いたことでしょ?!」


「アルル、言い過ぎだ」


 コンスが止めるがアルルは止まらない。涙を流していた。


「だって! クレアはあんなにカリュのこと好きで、わかってもらおうとしてたのに!」


 アルルを止めたのは、カリュの冷静な声だった。


「火竜と人間では生態が違う。なるべく人間として育ててやりたい、この子は」


「愛した妻も死に、娘も死んだ。なぜこんな目にあう」


 領主は頭を抱えていた。


「自業自得であろう。お主、何をしてきた。言い訳のしようもないではないか」


 全てを見てきた火竜の声は重い。街を維持するためにしてきた悪事を擁護するすもりもないようだ。だが、彼には孫がいる。自分と血のつながった。


「孫がいるであろう? 抱いてみてはくれんか。お主も育てるのじゃ。クレアとは違い、な」


「私はクレアにも愛情をかけていたつもりだが?」


「ちゃんとかけていたら、クレアはわしと番になることはなかったであろうな」


「何を言う!」


「普通にお主の言うとりに普通の結婚をしておったであろうな。お主がクレアにちゃんと愛情をかけていればな。こうしてわしの子を産み死ぬこともなかった!」


 カリュの恫喝だった。空気がビリビリと震えた。


「お主には、ちゃんとこの子を見てほしい」


 彼は冷静な声に戻り、静かに言った。


「あうー」


 カリュは、領主に赤ん坊を渡した。


 彼女は領主の娘にも妻にもよく似ていた。


 領主の目には涙が浮かんでいた。


 こうして、領主と火竜とその娘は、三人で生きていくことになった。


 残されたカリュの戦いはこれからだ。子育てと、領主との関係。問題はたくさんある。


「その機械仕掛けのゲイルといったか。言って許されるとは思っておらんが、すまんかったな」


 五人は火竜の街を後にする。見送りはカリュ一人だ。


「いい。そろそろメンテナンスが必要だった」


 カリュに別れを告げるとゲイルは通信機を取り出した。カリュとはあっさりとした別れだった。また、生まれたばかりの娘が大きくなったら会いに来る約束をしていた。


「おい、聞こえるか」


『…ガッ……ガガッ……やっと連絡してきたかと思ったら、相変わらずだな』


 明るい男性の声が聞こえた。


「今から行きたい。準備をしておいてくれ」


『そろそろだと思ってたよ! 誰か一緒にくるのかい?』


「仲間と行く」


『仲間! そうか。ゲイルにもできたのか』


 ゲイルはブチッと通信機を切った。


「俺の故郷に行く。じゃないと俺は死ぬことになるだろう」 

 

おっと、深刻なギャグ不足に陥っております……。

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