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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
炎の竜編
20/72

貧乏パーティー

「お金がない……」


 はじまりの街の拠点に帰ってきて、最初にコンスが言った言葉がこれだ。拠点の宿屋の一室でまったりしていた空気が一瞬で凍った。


「今~回~、連続~で~二~回~も~遠~征~行った~か~ら~ね~ぇ~」


「本来なら、クエストで稼げるはずだが、うちのパーティーでは無理だからな」


「物知り顔で言ってるけど、ゲイルのせいだからね」


 アルルが鋭く突っ込んだ。初期クエストのスライム討伐ができないのはゲイルのせいだ。弱い者いじめと言って、止めてくる。


 遠征している間の収入はゼロだ。普通のパーティはクエストを受注しているので報酬が出るはずだが、アルルたちのパーティは、初期クエストもクリアできていないので、クエストの受注ができない。必然的にアルバイトで稼いだお金だけが収入となるが、冒険をしているとアルバイトができない。つまりは、年中貧乏ということだ。


「仕方ないから、バイトして働いてお金を貯めるしかないね」


 コンスは諦めた瞳で皆に言った。ゲイルに何か言うのは無駄だと知っているのだろう。


「火竜討伐のための遠征費かぁ。どかーんと稼げることないかな?」


 アルルは少し急いでいるようだ。コンスには、何を焦っているのかわからない。だが、正論を言う。


「はじまりの街でそれは無理かな。王様がいる聖都ならそういう話もあるかもしれないけど」


「あの、ファルクの旦那さん、エルフィンだっけ? がいるところ? 頼れないかな?」


「アルル、そういうことはダメだよ。なんとかならないわけじゃないんだから。それに、聖都までの旅費がもったいない」


「はーい」


「それに、あの人、なんか苦手だし」


「苦手なの? コンスの王子様父を敬愛してたみたいじゃん」


「父は、決してそういうタイプじゃないから、たぶん、憧れで目が曇ってるんだ」


「どゆこと?」


「確かに剣の腕はすごいけど、性格がなんていうか、おっとりしてるというか天然というか……期待されるような人じゃないんだよね」


 父親にされた数々の仕打ちを思い出す。おっとりした笑顔であんな酷い訓練を実施する父がコンスは純粋に怖かった。


「そうなの? じゃ、ボクらが魔王を倒すしかないね!」


「火竜の村に行く遠征費もない僕らが言えるようなことじゃないよ」


「それは、確かに」


 しょぼーんとするアルルに慌ててコンスが言う。


「目標は大きい方がいいよね!」


「だよね、だよね! さすがコンス!」


「も~、ア~ル~ル~は~調子~が~いい~ん~だ~か~ら~」


「とりあえず、これからバイト三昧だね」


「ボク、別な仕事探さないと。お饅頭屋の女将さんの産休は終了しちゃったからなぁ」


「風~に~ま~つ~わ~る~仕~事が~いい~ん~じゃ~な~い~?」


「何があるかな?」


「自分~で~考~え~て~」


「冷たい」


「わ~か~ら~な~い~わ~よ~。一緒~に~探~し~て~あ~げ~る~か~ら~」


「わ~い!」


 こうして、アルルはまたバイト探しの旅に出るのだった。今度はマールと一緒!



まだまだ火竜の存在さえもみられないという(笑)冷やし中華じゃなくて火竜編はじめました。

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