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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
プロローグ
2/72

はじめての出会い

 吟遊詩人のアルルは冒険者ギルドに来ていた。


「パーティが組みたいな~」


 アルル十六歳。故郷から出てきて、はじめての大きな国でのギルドだった。風使いだが、吟遊詩人である自分には、火力(攻撃力)が足りない。一人で魔物を倒すことは難しい。アルルには、自分の一族から任された重大な役目がある。特殊な一族なのだ。それを達成するために、アルルは強い冒険者と組まなければならなかった。使命なのだ。


「何日経っても、パーティが組めない……」


 アルルは悲しみのあまり両ひざと両手を床についていた。


「なんでなの?!」


 冒険者ギルドの受付のお姉さんに詰め寄っていた。


「あなたの場合、吟遊詩人だからじゃないでしょうか? 珍しい職業だし理解されていないていうこともあるし、補助しかできない人とパーティを組む余力があるパーティなんて今の時代いないわ」


 アルルはマジ泣きしていた。その迫力に押されて、冒険者ギルドのお姉さんは今できる最大の提案をしてくれた。


「別な職業で登録したらどうかしら? あなたは、風の精霊使いでもあるんでしょ?」


 アルルは、更に号泣していた。


「うっ……うっ……諸事情で、職業は……ひっく……絶対吟遊詩人しかダメなの……」


 鼻水が汚い。ドン引きしている受付のお姉さんの笑顔はひきつっている。


「あの!」


 後ろから神様のごとく爽やかな声が聞こえた。


「ウチのパーティに入ってくれないか?」


 どこからどうみても凡庸な剣士だった。特出した点はひとつも見当たらない。変なキーホルダーをつけているくらいだろうか。


「入ってもらえると助かる。うちは人数が少なくて。パーティとしての役割が足りてなくて」


 アルルは悩んでいた。これを逃したらパーティを組めないで時間ばかりが過ぎていくかもしれない。だが、強く見えない剣士と組んで使命が全うできるだろうか?という間で悩みまくっていた。


「君は魔法使い?」


「ボクは吟遊詩人だよ」


「へぇ、噂には聞いたことあったけど、初めて会ったよ」


 そりゃそうだろう、とアルルは思う。さっき受付のお姉さんが言ったような理由で吟遊詩人で登録する人は、ただの物好きだ。


「どうする?」


「ぜひ、お願いします」


 これ以上、躊躇っている暇はない。少なくとも、無名より多少実績のある人の方が今後のパーティも組みやすいと思ったからだ。


「よかった! 助かるよ!」


 底抜けに悪意のない笑顔だった。


「まっまぶしい」


「ん? どうしたの?」


「うっうううん、なんでもないよ」


 この人、騙されやすそう、というのが第一印象だった。


「仲間を紹介するね! こっちが魔法剣士のヘルン」


 なんだか、暗そうな青年だった。


「よろしく……」


 キノコ生えそうな暗さだ。


「拳闘士のゲイル」


「……」


 彼は無反応だった。


「ごめんね、慣れるとこんなんだと思うんだけど、彼、いっつも誰に対してもこんな感じなんだ」


 無表情無反応が基本とは。アルルは見なかったこのにした。


「そして、僧侶のマール」


「よ~ろ~し~く~」


 なんともリズムが取りずらい。良くいうとゆっくり。悪くいうとどんくさい。


「マールもだいぶ個性的だけど、回復魔法とか使ってくれるから!」


 汗をかきながらフォローしている。冷や汗をかいている人をじど目でアルルは見守っていた。


「がんばってるよ~間に合わない時も~あるけど~」


 少しは早くしゃべれるようだ。それでも、常人よりはゆっくりなしゃべりスピードだが。


「よ、よろしくね。あ、ボクの名前はアルル!」


「あ、僕の名前はコンス。職業は剣士だよ」


「他には?」


 アルルは純粋な興味で聞いた。


「え?」


 コンスは目をパチパチする。


「他にパーティの人はいないの?」


「他にはいないよ、4人だよ」


 パーティの人員は多い方が有利だ。少なければ少ないほど危険は増える。あまり大人数だと逆に統率が取れなくなるが、十人前後が普通のパーティだ。数が少ない上に、このパーティは全員、性格に問題がありそうだ。こんなんでやっていけるのだろうか。


「そうなんだ、魔法使いは?」


 少ない人数でも、魔法が使える人がいれば、危険度がぐっと下がる。遠距離で攻撃して魔物を弱らせることができるからだ。しかし、魔法使いの数は少ない。


「魔法剣士がいるじゃないか。ヘルンは一切魔法使わないけど」


「使えるのに使わないの?」


 アルルはびっくりして声を上げた。魔法は、適性が一番出る。使える人と使えない人がはっきり分かれる。ちょっと使える、とかはないのだ。


「……魔法嫌い……」


「いやいやいやいや。今までどうやって生き残ってきたの?」


「運かな?」


 コンスの笑顔が眩しい。このパーティの危機的状況を少なくともこの人は理解しているようだ。


「あと、難しいクエストとか受注してないからね!」


「いやいやいやいや」


 アルルには不安しかなかった。経験豊富な冒険者に冒険の土産話を良く聞いていた。


 聞いてた話と違う、それがアルルの冒険のはじまりだった。








こんなんで大丈夫なのかw

結論:たぶん大丈夫じゃない

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