打倒火竜!
「そういえば、打倒火竜するにはどうしたらいいんだろう」
勇者の剣を復活させてはじまりの街へ帰る途中でのことだった。
「アルルが言い出したんだろう。しっかりしてくれよ」
「コンスが結構マジで怒ってる~。だって~火竜のことなんかわかんないよ」
「情報~収集~した~ら~ど~うか~しら?」
しゃべり方でわかるが、マールが言う。
「魔王からの洗脳を受けてかはわからないが、だいぶ暴れている噂が聞こえてくる。ものすごく派手に」
ゲイルがほとんど感情のない声で言う。拳闘士なのに、まるで機械のような緻密さを持っているのがゲイルだ。
「迷惑してる人がいるなら、やっぱり倒さないと! ほら、ここに勇者もいるし!」
「アルル?」
「コンスが怖い~」
怯えた振りをしながら言うアルルにコンスは諦めたように溜息をついた。
「倒せるかはわからないけど、本当に困っている人がいるなら、倒さないといけない」
「そだねー! コンスは謙虚すぎるよ。勇者の俺が必ず倒す! くらい言おうよ」
「いや、アルル。そんなコンスを我は見たくないのである」
「ヘルンはコンス教にでも入信してるの~?」
「変な団体を勝手に作るのやめてくれないか」
「あ、勇者教の方がよかった?」
「アルル!」
「うわ~コンスが怒った~」
二人で仲良く追いかけっこをしていた。
「仲良~し~ね~」
「最後のし~ね~が強調されてるんだけど」
「ゲ~イ~ル? 余計~な~ことは~言わない~でく~れ~る~?」
「……はい」
「毎度のこととはいえ、愉快なパーティーなのである。これが勇者一行なんて夢が壊れるのである」
『ヘルンが一番残念だよ!』
アルルとコンスの声がハモった。
「その中二病みたいなしゃべり方やめなよ」
「女の子なんだから、もう少し気を使った方がいいよね」
コンスが当たり前のように言った。
「はっ? 誰が女の子?」
アルルは叫ばんばかりに問う。
「ヘルンだよ?」
コンスは襟首を持たれ揺さぶられながら答えた。
「初~耳~だわ~」
「興味はなかったが、まさか……」
マールとゲイルも気づいてなかったようだ。
「なんで?! なんで隠してたの?!」
「隠してないのである。勘違いされてるかも、とは思っていたが」
「なんでコンスはわかったの? 裸でも見たの?!」
「なっ、なんでわかんないんだ! 見ればわかるだろう!」
コンスが珍しく動揺していた。
「ボクのことはわかんなかったじゃないか!」
コンスは目を逸らした。
「やっぱなんかあったんだ!」
「え~な~に~? アルル~も~女~の~子~な~の~?」
「このパーティーは男二人に女三人なのか」
「まさか、マールが男ってことないよね? こんなボインボインだもんね~」
アルルがマールの胸を揉んでいた。
「ア~ル~ル~!」
マールがいつもより早口にになる。怒っているようだ。
「バレちゃって、女だって隠す必要なくなったからね! どーせボクはツルペタだよ!」
アルルは男装する理由が旅する上で防犯のためとか何個かあるが、隠すほど胸がないのがコンスレッスのようだ。
「ヘルンも意外とあるね!」
アルルがヘルンの胸を触った。ヘルンは呆然としていた。代わりにコンスが兄として(兄じゃないけど)アルルを怒った。
「アルル! いい加減にしろ!」
「やばっ! マジ怒りだ。逃げろー」
走り回って疲れた二人は、他の三人の冷たい視線をうけながら、パーティーの隊列に戻った。
「話が脱線したけれど、次は火竜の街に行こうか」
リーダーらしく、コンスが言った。実際は、アルルと追いかけっこをしている時点でリーダーとしての威厳はない。
「勇者としてコンスのデビュー戦だね!」
アルルの言葉にコンスはうんざりした顔をしていた。リーダーどころか、勇者らしくもないコンスであった。
これから火竜討伐です。やっと勇者一行らしくなってきました!




