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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
勇者の剣編
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騎士エルフィンの剣呑

 エルフィンとコンスは物陰に移動した。あまり皆に聞かれたくない話だったのだ。


「勇者の剣を持っているということは、王家の血族に連なるものなんじゃないですか、貴方は」


 コンスをみるエルフィンの瞳は剣呑を含んでいた。


「僕は、自分の血筋を知らない。王家なんて聞いたこともない」


 コンスは何とも言えない顔をしていた。それは、複雑な感情からきているようだ。


「嘘ですね。貴方は、現王にそっくりです。王の兄は失踪しています。許されない身分違いの恋をして駆け落ちしたと。王家に代々伝わる家宝を持ってと聞いています。大罪人です」


 エルフィンは、その剣を使える人間がその人しかいなかったということですが、と付け足した。


「それが、僕に関係あるのか?」


「関係あるのかどうかは、貴方が一番わかっているんじゃないですか」


「僕をどうするつもり?」


「私には、貴方をどうこうする権利を持ちません、残念ながら」


 影で見ているアルルが、こらえきれず声を出した。


「きゃー、あれが最近(ずいぶん前?)に聞いた壁ドン?!」


「自分の旦那?がやってるところを見ると微妙だな」


「何してるんですか」


「成り行きで、のぞき見してた」


 エルフィンがファルクを諫めるように抱きとめた。


「コンスのお父さんは王子様だったの?」


 隣にいたアルルが二人のラブっぷりを興味なさそうに聞いた。


「本当にそんな話は聞いたことなんだけど。だいたい、父は在命してるから、話を聞けばはっきりすると思うけど」


 アルルとコンスが暢気に話していた。二人には、あまり現実感がないようだ。


「その剣は形見とか言ってなかった?」


「説明が楽だから。剣士としての父は死んだんだ。だから、形見って言えって。この剣を使えるのは一人だけみたいだ」


「やっぱりコンスは勇者の剣に選ばれてたんだ。前の錆だらけの剣でも魔物を倒せてたのは、コンスが勇者だったからだよ!」


「本当にこの剣が勇者の剣なのか? だとすれば、相応しいところに返す必要はないか?」


「コンスの腕の中以外に相応しい場所なんてないよ! だいたい、一人しか使えないんだから! 使えない人のところに返すなんて意味ないよ!」


 アルルとコンスが言い合いをしている様は、真剣なのに、じゃれあっているようにしか見えない。


「まるで、兄弟のようですね、貴方達二人は」


 エルフィンはため息をついた。真剣な話をしていたはずなのに、なぜかほのぼの雰囲気になっていたのだった。


「父は母と一緒にひっそりと穏やかに暮らしています。貴方は、その幸せを壊しますか? この剣を返せば見逃してくれますか?」


「正直、私は貴方たち家族の罪を裁くような立場にはいないのです。むしろ、和解してほしいのです。王が争いに身を投じるのを止めてほしい。国民は皆、心を痛めている。……私と決闘をして勝ったら、見逃してあげます。王には報告しません、どうですか?」


「そう言われちゃ断れないよね。いいよ。やろう」


 二人は剣を構えた。


「やめろ、コンス。エルフィンは物腰が柔らかそうに見えても、王都で騎士長をしている。実力は折り紙付きだぞ!」


 柔らかそうな雰囲気を纏っていたエルフィンは、正反対のまるで鋭利な刃物のような攻撃的な空気を纏っていた。


「その殺気、隠していたんですね」


「能ある鷹は爪を隠すというだろう? ずっとこんなギラついた雰囲気を纏ってなんていられないよ」


「大丈夫。コンスは勝つよ」


 アルルが仲裁しようとしていたファルクを止めた。


「元から強いけど、勇者の剣が復活した以上、コンスは神をも殺す力を持っているんだ」


 お互いにらみ合っていたが、一瞬だった。


「……両刃の剣で峰打ちですか……」


「エルフィン!」


 腹を抱えて蹲るように肘を土についているエルフィンにファルクは庇うように駆け寄った。


「僕も頬に傷を負っていまいました」


 エルフィンに言い放ったコンスの頬には薄い傷がついていた。すぐ治るだろう。嫌味か、とエルフィンは心の中で毒づいた。


「コンス、君の父君が王宮にいたころ、剣を教えてもらいました。彼は、とても強かった。私の剣の師と言っても過言ではない。失踪してからも会いたかった。状況を考えると探すこともできなかったですが」


「父と知り合いなんですか?」


「幼いころに、良くしてもらったんです。コンスの父君に弟王を止めてほしいと伝えてくれないでしょうか」


「どういうことですか?」


「王は、乱心している。敵と思うものは全て殺そうと、排除しようとしている。今はまだ表面化していないが……。王は先祖返りで魔法が使えるんだ。もしかして、そのせいかもしれない」


「魔王復活によって、影響を受けている、と」


 コンスが深刻そうな顔になり、言った。


「憶測ではあるんですが」


 エルフィンが言う。そうであってほしくないようだ。自分が仕える王が乱心しているなど信じたくないだろう。


「ほぼ百パーセント間違いないよね、ヘルン」


 アルルが壁に向かって話しかけた。


「ほかの皆もいるんでしょ?」


 立ち聞きをして気まずそうなゲイル、マールに続いて落ち込んだ表情をしたヘルンも出てきた。ゲイルの顔の表情筋は動いていないが。


「我は魔王復活の影響を受けない。なぜなら、そう訓練しているからである。王が魔法使いとしての訓練を受けていたのであったなら、乱心することはなかってであろう」


「じゃ、僕が吟遊詩人らしく話をしよう。魔法使いのはじまりを」


なんか、この話だけ書いてあった!翌日更新気持ちいい(笑)

次回、お察しの方もいるかもですが、魔法使いのはじまり。ヘルンが魔法を使いたがらない理由が明らかに!

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