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方向音痴の勇者と音痴の吟遊詩人がへっぽこパーティを組みました  作者: アルル 名前なんてただの記号
勇者の剣編
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鋼鉄の魔物の倒し方

「なんていうか、どんくさい魔物だね。動きがゆっくりのせいか間抜けな顔に見える。可愛らしいと言っていいのか」


 アルルがその魔物の近くまで行って検分している。亀のような魔物だ。


「硬い殻のおかげで外敵がいない。だから、逃げる必要がないから、早く動く必要もない」


 ゲイルは、こういう時、とても有用な情報を持っている。

 

 外敵がいないせいか、その魔物はそこら中にいる。

 

「防御力高そうだから、ボクの風じゃ、この魔物にダメージを与えるのは無理そうだ」


「俺の拳なら入る」


 ゲイルがその魔物を殴ろうとしたが、アルルが慌てて止めた。


「待って待って! 殻は壊しちゃダメだよ! 綺麗に剥ぎ取らないと使えなくなっちゃう!」


「どうしたらいいんだ……」


 4人は頭を捻って考えた。


「まず、ゲイルが頭を殴って気絶させて、その間に殻を剥ぎ取るしかない!」


 コンスがそう、力強く言った。それしか方法がない。


「よく見ると、堅い殻と腹部分には継ぎ目がある。そこを切れば堅い殻だけを取れる。甲殻って感じかな」


 コンスが続けるとアルルが元気よく手を挙げた。


「じゃ、ボクは風の刃を作って剥ぎ取るね!」


「私~は~短剣~で~」


「うわぁマール、えぐい」


「い ~つ~も~病院~で~治療~して~る~もの~当然よ~」


 血みどろになりながら解体作業をしているマールを見ながら、アルルは青ざめていた。アルルは風を使っているので、自らの手を使う必要がないのだ。


「アルルは自分の手は汚さないとは」


「ちょっとコンス、言い方!」


 コンスも血がついていたが、長い剣のおかげかあまり悲惨な惨状にはなっていない。その剣は錆びてはいるが、こと魔物に対してだけ切れ味がいい。マールは短剣で距離が短い上に顔にまで返り血がついていた。


「マール、その顔でこっちこないでね。ホラーだわ」


「あ~ら~お望み~な~ら~ば、追い~か~けっこ~す~る~?」


 二人は追いかけっこを始めた。マールの白い服への返り血のエグさアルルは結構本気で逃げている。


「アルルもマールも遊んでないで作業してよ」


『は~い』


 二人は元気に揃って返事をして作業に戻った。この間、ゲイルは黙々とただ、鋼鉄の魔物の頭を殴っていた。様子をみて休んでいた。


「無駄に倒す必要はない。命を作り出すことは、人間にはできない」


 こういうことをゲイルはよく口にする。まるで自分を戒めているようだ。


「そうだね。10頭終わったらやめよう」


 コンスは穏やかに言う。


「感謝しないとね」


「……命を貰ってるんだね」


 あれだけはしゃいでいたアルルは暗い顔をしていた。


「そうやって人間は生きていくんだよ」


 コンスがアルルの頭をぽんっと撫でた。まるで本当の兄が弟に諭すように。


「うん、わかってるよ。ボクは生きるために、ご飯をおいしくいっぱい食べるよ」


 アルルはガッツポーズをした。下を向いていたため表情は前髪で隠れて見えなかった。


 そうして1メートル50センチはありそうな鋼鉄の魔物の殻を4人で往復してファルクに届けたのだった。


ただじゃないなら、払えばいいの!次回は、ファルク周辺のお話です。

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