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第9話 朝はお節介な幼馴染が起こしに来る法則について

 どれだけ悲観しても朝はやってくる。

 特に月曜日の朝なんかは億劫で布団から出るのだけで精一杯。ここにもそんな朝に抗う者が一人。

「おい、起きろもう朝だぞ」

「う〜ん。あと五分だけ」

「古典的な寝言だな」

「ん〜、ふぇ⁉ ど、どうして蓮がここにいるの?」

 幼馴染が起こしに来る。

 今回は始業式とは逆で蓮が恵を起こすということになった。このパターンは恵が部活を始めてからは珍しくなった。朝練のおかげで昔より恵が早く起きれるようになったからだ。

 だから恵よりも早く起きるには苦労した。しかし、幼馴染のためならこの程度は当たり前だ。

「いや、おばさんが今日は朝用事があるからって頼まれたんだけど聞いてない?」

「き、聞いてないよ〜」

 それもそのはずだ。

 この件はおばさんが俺に直接頼んできたことで俺が恵に前日にでも伝えてくれと言われたことなのだから。別に伝え忘れたわけではなく、あえて言わないでいた。

 あの羽嶋と角でぶつかるようにするには今日のように恵と一緒にいても不思議ではない方が都合がよい。ここで足止めをして時間調整。あとはリリエルと協力してぶつかるように仕向ける。

「まあ、とりあえず俺は下で待ってるから着替えろよ」

 アヒルのマークが可愛らしいパジャマのままでは学校に行けない。恵は寝相は悪いので胸元が開いてしまっている。これほどまで無防備なところは他の奴には見せられないな。

「み、見た?」

「見たけど恵のパジャマ姿なんて見慣れてるよ。今更恥ずかしがることないだろ」

 幼馴染の谷間を見て興奮する俺ではない。

 恵が魅力的なのは言うまでもないが俺は幼馴染だ。小さい頃なんかは三人で一緒に風呂に入ったものだ。なのでちょっとした露出では動揺などしないが恵は耳まで真っ赤にして叫ぶ。

「そういう問題じゃないの! ほら、蓮は出てって」

 容赦のない拳が襲い掛かってくる前に退散する。

 さて、遅めに起こしたから少しは時間調整できたが、まだここで足止めをしなくてはいけない。

 ドタバタと急いで準備を済ませた恵がリビングに来たのは十分後のことだった。

「いやぁ~、まさか蓮に起こされるなんてね」

「おばさんに頼まれたからな。それよりも朝ごはんはちゃんと食べろよ」

「蓮の作った朝食……、ヨダレが止まらないよ」

 俺の両親はまるでギャルゲーみたいに海外で仕事をしている。仕送りはちゃんとしてくれるが連絡はたまにしかしてこないし、帰ってくるのは半年に片手で数えるくらいで一人暮らしが長いので自然と料理スキルは磨かれた。自慢できるほどではないがガサツな恵よりかは上手に作れる。

 ちなみに朝食はパン派かご飯派かに分かれるが、俺は気分によって変える。

 今回はご飯だ。

 パンでは恵はくわえて行きかねない。確かにそれは定番ではあるがそれではこちらの計画が崩れる。できるだけ時間を稼ぎたいからこそのご飯。とはいっても恵の食べる速度は男子でも目を丸くして驚くもの。

「女の子がそんな汚いこと言うんじゃありません」

「あはは。蓮ったらお母さんみたい」

 久しぶりに一緒に朝食をとっているからか恵は上機嫌のご様子。

 それならば好都合だ。これならば他愛のない会話をしていたら予定の時間までいけると思ったが、唐突に立ち上がった。

 なんとものの数分で全て平らげているではないか⁉︎ 卵焼きと味噌汁まで用意していたのに我が幼馴染ながら末恐ろしい。

「もう行くのか。俺も準備するからちょっと待ってくれ」

「蓮を待ってたら遅刻しちゃうよ。それに私はこれからダッシュ登校予定なんだよ。帰宅部の蓮はついてこれないでしょ」

 ダッシュ登校とは全力疾走で登校するというネーミングがそのまんまという恵が勝手に作り出した通称恵語である。

「俺だって最近鍛えてるんだ。ここから学校までなら……」

 距離は歩いて十五分ほど。

 それくらいならいけると思ったが途中にある激坂で距離を離されてしまい結局、リリエルに頼る事態となってしまった。

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