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第58話 友達をつくるのは勇気と根気がいる法則について

「それじゃあ、その人とどういう関係なのか教えてもらうよ。じゃないとここから動かないから」

 机を思い切り叩き、不機嫌そうな顔で言い寄って来た恵と葵。二人は潤香につけられた怪我が心配で保健室に来てくれていたが学園長室に一緒に行くのを知られたくなった彼女が追い払っていた。

 というのも神威とかいう人間でありながら神の力が使えるなんて二人には聞かせられない。そのせいで俺みたいに天界のいざこざに巻き込まれでもしたら更に計画が破綻の一途を辿る。

「別に二人が思ってるような仲じゃないって。ただ昔の知り合いだって。夏休みの間だけ会ってた奴だから二人は知らないだろうけど」

「そうだぜ。こいつは俺のことを男だと勘違いしてたぐらいだからな」

「だからそれはもう謝ったろ。くっ付くな!」

 二人が不機嫌になった原因が後ろから腕で首を締めてくる。じゃれ合い程度の力で苦しくはないが小学生にはないに等しかったそれの感触が伝わってくる。

「ふ〜ん。私たちに隠れて仲良くしてたんだね。ふ〜ん」

「ほら、からかうから恵が口をとがらせてるだろうが。完全に不機嫌な顔だよ。ったく、お前は本当に昔から変わらないな」

 あの頃も嫌がってるのにお構いなしにイタズラを続けていた。俺もそれに巻き込まれて色々と青春があって相棒になったがもう高校生だ。

 やっていいことと悪いことの区別くらいつくはず。神の力を借りているような存在なら尚更だ。

「もうイタズラは卒業したげ。ただお前は特別だ。全部許したわけじゃないからな」

 あの一閃ではやはり足りなかったらしい。しかし、これが続くとなると俺は体力が持ちそうにないが。

「生徒会役員としては男女でそんなにくっ付くのは風紀が乱れる要因になるからやめて欲しいんだけど」

「おおっ怖! まあ、別にこいつを二人から奪おうだなんてこれっぽっちも考えてないから。俺はこれに専念するからさ」

 と俺に傷を負わせた竹刀を見せびらかす。

「剣道……?」

「そっ! 実は結構良いところまでいっててさ。それで勧誘されたわけ」

「ここの剣道部ってそんなに強かったか?」

 帰宅部は自分の学園のどの部活が強いとかは全然詳しくない。そんな情報を仕入れる先がないからだ。友達に部活をしている奴がいたとしても部活を話題にしても自分が除け者にされるから絶対にそんな話は振らない。もしその話題になってたらそれが終わるまでジッと待つ。

「昔は強かったって未来から聞いたことあるよ。でも最近はそんなに良い結果は残せてないんだって」

「だからこその俺だよ。強いとこに強い奴がいても面白くないだろ。ほら、最弱な部活を一人の新人が甲子園まで導くのが面白いんじゃん」

「剣道に甲子園はないだろ」

「細かいことは気にするなって。とにかく、部活があるから二人がいない間に……なんてことはないから」

「別に私はそんなこと気にしてないよ。隠し事してたってことが問題なの」

「その件については俺から頼んだことから蓮を責めないでやってくれ。ほら、それよりも俺ってこの学園には蓮しか知り合いがいないから二人にはぜひこれから仲良くして欲しいんだけどな」

 転校生が新しい環境に馴染むには時間がかかる。潤香の場合は蓮がいたから一人にはならなかった。

 しかし、蓮にだけ固執していたら他に友達ができない。まあ潤香の性格ならそんなことはないだろうが一応用心棒としているのでどうしても蓮といる時間が多くなってしまう。

 そうならないように潤香は先手を打った。

 唐突なお願いに二人は顔を見合わせるとすぐに視線を戻すと手を差し出す。

「潤香ちゃんには罪がないから良いよ」

「ええ、そうね。潤香さんには罪がないものね」

 そして視線はこちら側に。

「どうして俺を悪者にするんだよ」

 女の団結力って末恐ろしい。

 さっきまで険悪モードだったのに今では仲良くムードが漂っている。そして二人の矛先は俺へ。

「まあ、事情があるのは分かったけど私たち以外にも幼馴染がいたのを今の今まで隠していたのはやっぱり悪いことだよ」

 幼馴染?

 まあ、付き合いは短いが恵が言うならそういうことにしてやっても良いがそれには潤香がケタケタと笑う。

「俺は幼馴染って柄じゃないよ。こいつとはそうだな……相棒ってところだ。それじゃあ、俺は部活があるからお先に失礼するぜ」

 颯爽と教室から去る潤香。

 相棒……、あいつもあの頃のことを覚えていてくれたらしい。今はそれだけで十分だ。

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