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第56話 男だと思ってた友人が実は女だというとんでもない真実を抱えて再開してくる法則について

 将来の夢。

 小学生にそれを題材に作文を書かされた人は多いのではなかろうか?

 俺も昔に書いた記憶があるが、その内容までは覚えていない。二十歳になったら成人式の後とかにタイムカプセルを開けて確認することになるだろうがそれはかなり先のことだ。

 今の今まで忘れていたが転校生を見て思い出した。彼女は小学生の時に一緒にタイムカプセルを埋めただったのだ。

「久しぶりだな蓮」

「う、潤香……なのか?」

 感動の再開というわけにもいかず、俺は彼女が背中に背負っていた竹刀で腹を斬られた。




***




「東雲、ここに来るなとは言わないが怪我をしないように注意しろ。何故かわざと怪我をする輩もいるがお前はそうではないのだろ?」

 蓮は竹刀の攻撃を受け、腫れた腹を手当てしてもらいながら五十嵐の説教を受けていた。

「ああ、これは何というか当然の報いというやつだから気にするな。それよりもあの件については聞かないんだな」

「私はお前が困っているようだったから協力しただけだ。それに人間に戻っているのなら文句を言うつもりはない」

「助かるよ。言わなくても分かってると思うけど他言無用で頼む」

 誰も信じる者はいないだろうが、物的証拠を抑えられたら面倒なことになる。美嘉がそんなヘマをするとは思えないがその他の奴らはやりかねない。

「お前の頼むなら致し方ない。それよりもその怪我だが誰につけられた? 随分と腕のある者だと推察するが」

「小学生の頃の知り合いだよ。引っ越してこの街から離れてたんだけど親の都合でまた戻って来たんだってさ」

「そして再開の一閃か。君たちはそういう関係だったのか」

「いや、どんな関係だよ。ただの仕返しだ。何年越しかのな」

「それは私が知る由もないことだな。だが君には確か二人の幼馴染がいたから彼女たちなら知っているか」

「残念ながら恵と葵も知らないよ。潤香は別の小学校に通ってたし、会ってたのは夏休みの短い間のだけだったからな」

 二人が潤香に会ったのは今日が初めてだった。なので彼女たちの目には突然来た転校生がこの学園の名物である問題児で俺がそれに毎度のごとく巻き込まれているように見えただろう。

「それは何とも複雑な状況なようだな。では怪我をしないように注意してくれ」

「気をつけるけど、あれは避けられないからな。チャンバラごっこしてた時とは大違いだ」

 あの頃は俺が優勢だったのにまさか一方的にやられる日がくるとは。

「では助言をするが相手の手を見てみろ。竹刀の動きが見えなくとも相手の動きを予測することは可能になる」

「覚えておくよ。それじゃあ、二人が心配してるからもう行くぞ」

「ああ、間合いには気をつけろ」

 多分、全く俺には必要のない助言を受け取り保健室を後にした。扉を開けるとそこで待っていたはずの二人は姿を消し、代わりにここに来る原因となった転校生がいた。

「よお!」

「よお! じゃねえよ潤香。よくもやってくれたな」

 彼女の名は西条 潤香。あまり手入れしていないのか所々跳ねている黒髪ポニーテールと背中に背負った竹刀が特徴的な少女。

 昔からいたずら好きであの頃はそれに付き合わされ、大変な目に遭ったものだ。

「そんな怒るなよ。これでチャラにしてやるからさ」

「チャラにするって何をだよ」

「男だって勘違いしてたことに決まってんじゃん」

 そう、俺はこいつを男だと勘違いして接していた。女だと知ったのは今朝、彼女の姿を見た時だ。

 あの頃の潤香は男の子っぽい格好をしていたし、言動も女の子要素のカケラもなかったので全く気づかなかった。今思い返してみると女の子にはしてはいけないようなことをしていたがそれがあの一閃で許されたのなら安いかもしれない。

「なあ、少し付き合ってくれないか?」

 どうやら学園内を案内して欲しいらしい。素直にそう言えば良いものをこいつはやはり面倒な性格をしている。

 まずは潤香に好きなように学園内を散策して俺が随所随所で説明をしてやろうと考えていたら真っ先に到着したのは食堂でも中庭でもなく、学園長室の前だった。

「こ、ここって……」

「学園長に用事があるんだ。もちろん、蓮にも聞いてもらいたいことがある」

 この流れはもう察した。

 女だったという事実でもお腹いっぱいだというのにまだ謎があるらしい。

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