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第50話 空から降って来るのは女の子だけではない法則について

 今回の増やし鬼はお昼休みまで。

 それまでに俺たちは大天使サリエルを見つけ出して倒さなくてはいけない。頼りは五十嵐の感知能力だが……。

「それでどうだったんだ? 見つけられたのか」

「天使や堕天使の違いは出来ないが、人間ではない者は特定できた。しかし……」

「しかし、何だよ。勿体つけてないで教えてくれよ」

「私たちの知っている人物だった。躊躇いなくお前に倒せるかどうか……」

「幼馴染以外なら倒せるさ。それで誰なんだ?」

「あの体育館にいたのは二人のうちの一人だった。片方は何処かの教室で隠れていたがチャイムが鳴った途端に動き出した。とりあえず、体育館にいたのを追跡したら屋上で止まった。多分、そこで合流するつもりだ」

「屋上か。まあ、あそこなら隠れて合流するには最適かもな。けど、俺は別に戦う力なんてないんだよな」

 あるのはリリエルから渡された秘密兵器と美嘉から授けられた天使にする権限のみ。

「そこは最悪私だけで何とかするわ。大天使といってもサリエルはその能力による功績でなっただけだから」

「いや、私も戦おう。いざという時のために体は普段から鍛えている」

「じゃあ、もしもの時は頼むわね」

 クリムを先頭に屋上へと進む。

 扉の前に『立ち入り禁止』の看板を用意して万が一にもゲーム参加中の生徒たちが入ってこれないようにしてあったが鍵は閉められていなかったので思いっきり開けるとそこには二人の少女が立っていた。

「レンレン待ってたよ。そんなに警戒しないでもっとこっちきなよ」

 片方はギャルで情報屋の高垣 仁那。

 もう一人は銀色の髪がまるでドリルのようになっている貴族みたいな髪型をした少女で蓮の知らない生徒だった。

「どっちがサリエルだ?」

「いきなりそれ? もっと驚いてくれると思ってなのにな〜」

「それはこっちの台詞だ。俺たちが来るのを知ってたんだな」

「まぁ〜ね。どうして知っているかは企業秘密ってやつだから教えられないけど」

「別にこの際それは良いよ。どっちがサリエルかだけ教えてくれればよ。葵を堕天使にしてくれた礼をしてあげるぜ」

 元に戻ったから良いものをもしそのままだったら俺はここで犯罪者になっていたかもしれない。

「ちょっと焦りすぎ〜。少しくらい話聞いてよ。こっちは戦う気なんてないんだからさ〜」

 それは俺たちが来ることを知っていながらも待ち伏せをせずに談笑していたことからも見て取れる。

「目的は地下にある秘宝か?」

「やっぱ聞いてたんだ〜。ならそれ頂戴よ。そしたから大人しく引き下がるからさ」

「渡せるかよ。そんなことできたらこんなに困ってないって」

 美嘉の様子からして渡したらヤバい代物だ。

「だよね〜。やっぱ駄目だってさサリエル様」

「では仕方ありません。あまりこの手は使いたくなかったのですが、結界の能力を発動せざるを得ませんね」

「結界の能力……だと」

「この学園内に結界を張っているのは知っていると思いますがこれには中に入った者を堕天使にしますの」

「そんなのが発動したら……どうなるだ?」

 勢いで言ってみたものも全然想像がつかない。

「それは私にも分かりませんわ。ですがいくらミカエルでも全ての堕天使を戻すのは不可能でしょうね」

 つまり学園にいる全員を人質に取られたようなものだ。素質のある物にしか効かないのかそれともそれを無視して堕天使にさせられるものかは定かではないが前者だとしても確率的に二桁は超えるだろう。

 ここで拒んだら学園に堕天使が増え、更に混乱に陥る。それを避けるためには彼女たちが欲しがっている秘宝を渡すしかないという絶望的な状況に立たされてしまった。

 ただのブラフだと断ろうにもリスクが大きすぎて戸惑っていると空から女性が降ってきた。

 それが謎の美少女でこれから彼女が持っている不思議な石を巡り、壮絶なストーリーが繰り広げられるということはない。

 何故ならその正体は東雲 依莉。

 蓮の母親だからだ。

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