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第47話 子どもの頃に一度は鬼ごっこをやったことがある法則について

 授業が突然なくなり、代わりに全員参加のゲームが行われるなんて普通はあり得ないがこの学園ならそうでもない。

 生徒が問題児なら学園長もということだ。

 学園の生徒数は全員で八百人以上。それほどの大人数が体育館に集結するのは始業式か終業式、もしくは卒業式くらいだ。

 なので何が起こるのかとソワソワしている者が多い。それを静止させたのは演台に立った生徒会長だった。

「おはようございます。生徒会長の千秋 優です。今回は突然のことで驚いている方がほとんどだと思います。実は僕もですが、先ほど詳細を聞いてとても面白そうだったので皆さん期待してください」

 この一言だけで不安から一変、お祭り状態となった。

 他の者ではこうはいかないだろう。

 あんなギャルゲーの主人公みたいな顔をしていてもやはりこの学園の生徒会長なのだと思い知らされる。

「では今回のゲームについて説明します。簡単に説明すると増やし鬼です。鬼役は我々生徒会役員と先生方、そしてこの中にいる生徒の中からランダムで選ばれます。放課後までに無事に捕まらなかった人には賞品として食券が用意されているので頑張ってください。それでは細かいルールはプリントで配布しますので教室にお戻りください」

 担当の先生に引率され各クラスが教室へと戻っていく。誰もがどうやって逃げるか、誰が鬼になるのかという話題で持ちきりだ。

「ねえねえ、蓮は鬼? 鬼だったら蓮でも容赦しないよ」

 教室に着き、自分の席に着くや否や戦線布告してくる恵。どうやら賞品の食券に目が眩んだようだ。

「それはこれから配布されるプリントに書かれてると思うからまだ分からないけど、一緒には出来ないかな」

「え? どうして……、そういえば今朝この前来てた後輩ちゃんと一緒だったってさっき耳にしたけどまさか浮気⁉︎」

「浮気って、恵は俺の奥さんかよ」

「お、お、お、奥さんだなんてそんな! ただ幼馴染として変なことしてないか心配なだけだよ」

「別に変なことなんてしてないよ。ただ今回の賞品には興味ないし、早めに鬼に捕まってのんびりしようかなって」

 というのは建前で美嘉がつくってくれたこの機会を無駄にはしたくない。それは幼馴染とキャキャウフフしてた方が楽しいだろうけど、そういうわけにもいかないのだ。

 幼馴染の平和を脅かす輩がこの学園に潜んでいるのだから。

「あ〜、蓮がサボろうとしてる〜。先生、蓮がーー」

「言うな。斑鳩先生は怒ると怖いんだから」

 一度見たことがあるがあれは人のそれではなかった。普段は温厚のせいでその姿は別人に見えてしまったほどだ。

 女性教師としては珍しく剣道を嗜んでいるらしく、剣道部の顧問をしているので男子からも恐れられる存在だ。そんな斑鳩先生を怒らせてはゲームどころではない。

「う、うん。分かったからその……離れて」

 二人だけの空間を作り出していたが、ここは教室だ。他の生徒の目はもちろんある。

 恵はあまり気にしない方だが、流石に見られるのは恥ずかしいのだろう。

 言われて気づき蓮は咄嗟に自分の席へと戻る。

「ああ、ごめん。それじゃあプリントを受け取ったら後は自由行動だったよな。何かあったら連絡してくれ」




***




 集合場所にしていた下駄箱付近へ行くとクリムが先に到着していて、プリントの裏を見せてきた。

「やっぱりお前も鬼か」

「それはそうよ。その方が動きやすいんだもの」

 美嘉がそうなるように仕向けてくれていて、プリントの裏には目立たないように小さな文字で『貴方が鬼です』と記載されていた。クリムのもそうなっている。

「でもどうする? この学園にいるか自体も怪しいのに」

「学園内には確実にいるわ。あいつが言ってたでしょ。ここはもう外界からの影響は一切受けないのよ。だから学園外からじゃなくて中から結界を張っていたのよ」

「なるほど。となると問題は誰を天使にしてどうやってサリエルを見つけるかだな」

「私みたいに人間に化けてるから見つけるのは相当難しいわよ。リリエル以上に感覚が鋭い天使がいたら別だけど」

「じゃあ、そんな天使になるように神に祈るしかないな。そういえば素質がどうとか言ってたが具体的にはどんなのなんだ?」

「そうね。まあ、悪い奴じゃなきゃ大丈夫よ。最近は人手不足で裁定が緩くなってるから」

「天界も人手不足とかあるんだな」

 それは少し聞きたくなかった。

 けど、それはこの際助かる。

 とりあえず天使を増やしに良さそうな人はいないかとクリムと一緒に歩き回っていると急にとある人物が襲いかかって来た。

 その正体は堕天使でもなく、その人物は白衣の天使だった。

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