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第39話 真実はいつも残酷な法則について

 堕天使の存在を知っている。

 それだけで彼女がただ者ではないと断定するには十分だ。

「ねえ、蓮教えて。何であの女に協力してるの。あの結界はクリムのだよね」

「どうしてクリムのことを……」

「そいつが堕天使だからよ。けど、こうも上手くいくとはね」

 いまだに現状を把握しきれていないが、学園内で待機していたクリムが姿を現した。まるでこの状況になるのを知っていたかのように。

「お前、まさか正体知ってて俺に他の三人を調査させたのか」

「敵を欺くにはまず味方からよ。結果、こうして正体を掴めたんだから文句言わないで」

「いや、正体って……」

 まさか葵が本当に堕天使だとでも言うのか。

 これは一体何の冗談だ? たまたま俺みたいに堕天使の存在を知っていただけなのじゃないのか。葵が悪さをするなんてあり得ない。

「事実よ。受け止めなさい。こいつはあんたに隠れて堕天使として裏でコソコソやってたのよ」

「そんな……。じゃあ、あの黒い羽事件も」

「こいつの仕業よ。何匹か堕天使を捕まえたけど、そいつらは人間には手を出してないって言ってたから」

「どうして葵がそんなことする必要があるんだ⁉︎ なあ、葵何とか言ってくれよ」

 違うよ。

 その一言が欲しかった。そしてまたあのくだらない日常を過ごしていたかったが、非情な一言が蓮の儚い希望を打ち砕く。

「そうだよ。あれは私がやったんだよ。蓮のために私が。だってあの人、蓮を傷つけようとしてたから二度とそんな気を起きないようにしておいたの」

「心配性ってレベルじゃないわね。ほら、ボサッとしてないで離れてなさい。人間のあんたがいても邪魔よ」

「まさか葵と戦うつもりか?」

「大人しく私に従ってくれないのならね」

「従う?」

「私も人手が足りなくて困ってるから同じ堕天使同士、手を組まない? もちろん、勝手なことをしないように監視させてもらうけど」

 手を組むとは言っているが実質、首輪をつけられた状態になれというもの。この誘いには葵は首を横に振った。

「お断りです。それだともしもの時に蓮を助けられないじゃないですか」

「それは余計なお世話ってやつよ」

「貴方に蓮の何が分かるんですか? 蓮はとても優しく貴方のような堕天使にも手を差し伸べるような人だから私が悪い人に利用されないようにしてあげないと」

「とんでない理屈ね。ねえ、言わせてもらうけどまだ怪我とかで済んでるけど、こいつ人を殺すわよ」

「あ、葵はそんなこと……」

「あの目を見てもそれ言える?」

 色んな人たちと接してきたが、今の葵の目からは闇を感じられた。曇りはないが、俺ではなく別の何かを見つめているようでそれ以上直視できなかった。

「ねえ、蓮そんな女と一緒にいないで私のところに来て。私なら役に立つわ。貴方の言うことなら何でも聞くし、邪魔な人は私が排除してあげる」

「ほら行きなさい。こいつは私が止めるから」

 何なら日常系からバトルものに展開しようとしているが、蓮は足が動かないでいた。

 幼馴染が幸せになればと奮闘していたのにまさかこんなことになるとは思いもよらなかった。本当はただ二人と一緒に……。

 その思いが首に下げていた指輪が反応して周辺を光で包み込んだ。

「ふぅ、嫌な予感がするから来てみたらこんな修羅場になっているとはのぉ」

 現れたのはリリエルでもなく、救世主でもなく、紫色の髪が特徴的なロリっ子だった。

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