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第3話 クラス委員長は秘めたる恋をしている法則について

 天使なんて空想上の存在だ。

 あれは俺の夢で目が覚めたらいつも通りの生活に戻っているのではと思いながら下に降りるとそこにはリリエルが朝食を済ませていた。

「蓮さん。おはようございます」

 一気に目が覚めた。

 そうだ。俺は昨日、天使と協力関係になったんだ。だからといって同居させるとは言っていないぞ。

「どうしてお前が俺の家で朝食を食べてるんだよ」

「学校では計画のことは話せませんから、しばらくここでお世話になろうかと」

「そんな勝手な……」

「一応、お父様から許可は貰っています。もし私が計画の邪魔になるようでしたら出て行きますので」

 携帯を確認してみると親父から『ホームステイさせるよん』と非常に腹立たしいメールが届いていた。

 ちなみに俺の両親は共にあちこちに飛んで仕事をしていてここに戻ってくるのは稀だ。つまりつい最近知り合った異性と一つ屋根の下で過ごすことになるのだが全くワクワクしない。

「天使ってのは随分と図々しいんだな。それか天界な手段を選んでいられない状況にあるってことか」

「残念ながら答えられません。それよりも蓮さんには計画を進めてほしいですね」

「その計画の成功がお前らの利益に繋がるのか。まあ、俺からしたらお前らがどうなろうと知ったことじゃないけど成功率が少しでも上がるなら文句は言わないさ」

 食パンを手に取り、口に放り込んでそのまま玄関へと向かう。

「もう学校に行かれるんですか?」

「今日は日直だからな。それとこれ渡しとくから戸締りはしっかりしとけよ」

 同居はもう避けられない。しかし、出来ればこのことは知られたくないので二人でいないといけない理由を少しでも減らしておかなくては。

「はい。お任せください」

 満面の笑みで鍵を握り締めるリリエル。

 彼女が何を企んでいるかは計画を止める気は一切ない。こうなったら利用できるだけ利用してやるさ。




***




「おはよう東雲くん」

 教室の戸を開けるとそこにはふくよかな胸が特徴な女子が待っていた。

「委員長と一緒か。これはラッキーだな」

 彼女は有栖川 京子。

 このクラスの委員長で男女問わず慕われている。このクラスの顔役だ。

 誰にでも優しく接するせいで勘違いする輩は絶えないようだが、これが素だからこれからも被害はなくならないだろうな。

「もう、煽てても何も出ないよ。ほらみんなが来る前に終わらせちゃうよ」

 日直の仕事は黒板を綺麗にしたり、適当にゴミ拾いしたりと簡単なものばかりで黒板消しに取り掛かっていると珍しいことに委員長から質問が飛んできた。

「ねえ、リリエルさんとは仲良いみたいだけど付き合ってたりするの?」

「いやいや、それはないよ。だってリリエルと知り合って一週間くらいなのに付き合うなんて」

 一目惚れというものがあるらしいが俺にはそいつらの感覚を疑う。きっと付き合っている内に色々と汚いところを知って嫌いになるくせに。

「呼び捨てにするくらいは仲が良いんだね」

 しかし、委員長が冗談でこんなことを聞くとは思えない。となると一緒にいるのを見た奴らが勝手な推察をしてそんな噂が流れていると考えるのが妥当か。

「ごめん。これ終わったらちょっと用事があるから後は頼んで良いか?」

「うん大丈夫だよ。実は早く着いちゃって先にやってたから残りはもう一人で出来るから」

「ありがと。今度何かお礼するから」

 一人になった教室で少女は誰にも聞こえない声で微笑みながら呟いた。

「今度……か」

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