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第29話 ツンデレ口調の人は現実にはいない法則について

 しばらくの間、沈黙が流れる。

 颯爽と現れた事件の犯人が無様にこけたのだから反応に困ったが無視するわけにもいかないのでとりあえず声をかけてみる。

「え〜と、大丈夫か?」

「人間に心配されるほどヤワじゃないわよ! てか、今のは見なかったことにしてスルーするのが優しさってもんでしょ」

「そうか。それはすまん。まずはこれで洗え」

 ゴスロリ服が土で汚れているので蓮はそっとハンカチを差し出す。

「気が効くわね……って、そうじゃなーーーーい‼︎ あんた自分が危機的状況なの分かってるの⁉」

「危機的状況って言われてもな〜」

 あんな登場をされたら緊迫した空気は彼方へと吹き飛んでいった。

「だからさっきの忘れて! 私はあんたを襲いに来たの」

「別に俺を襲っても何の得もないぞ」

「しらを切ろうとしても無駄よ。あんたが天使を匿っているのは知ってるんだから」

「それで、その天使をどうするつもりだ? まさか友達ってわけではなさそうだが」

「私はあんたが匿ってる天使とは因縁があるのよ。だからここで決着をつけようとしてるんだけど無視してくるから強行手段を使わせてもらったわ」

「そんなに構って欲しかったのか……」

「ちょっと‼︎ 私が我儘な奴みたいじゃない。人間だからって調子に乗ってたら容赦しないわよ」

「はいはい。俺の家に天使を匿ってます。これでいいか?」

「ず、随分と素直ね」

「ここで下手な嘘をついてもすぐにバレるだろうしな。それにしてもそれなら俺以外を襲う必要はないだろ」

 そうすればスムーズに事が進んだはずだ。俺に自分が危険な相手だと印象付けるための作戦だしたら登場シーンからやり直さないとだが。

「あんた以外を襲う? この街には来たばかりだし、ここ最近で人間を襲ったのなんてあんたが初めてなんだけど」

「初めて? そんなわけないだろ。堕天使に襲われたって奴がいるんだぞ」

「知らないわよ、そんなの! どうせ他の堕天使のイタズラでしょ」

「なるほどな。他にも堕天使がいるのか。まあ、いても不思議じゃないか。それじゃあ、そいつの意図が分からないな。二人が被害に遭う前に手を打たないとか……」

「ちょ、ちょっと何私を無視して自分の世界に入ってるよ」

「ああ、すまん。お前の目当てはリリエルだったよな。多分、家にいるだろうから来る?」

「へ? そ、それじゃあ行ってあげようかしら」

 ということで堕天使を家へ招待することになった。

 あの登場のせいかどうにも悪い奴とは思えない。それに目当てはあくまでリリエルだ。俺に被害が及ぶことはないだろ。

 いや、こうして巻き込まれてる時点で被害に遭っていると言ってもいいかもしれないが細かいことは置いておこう。

「おかえりなさいませ蓮さ……ん」

 いつも通り、先に帰りリビングでお菓子を頬張るリリエルは目を丸くして驚く。

「久しぶりね。元気そうで何よりだわ」

「えっと……ああ、クリムさんですね。まさか堕天使になっていたとは驚きです」

「その反応、絶対私のこと忘れてたじゃない。本当にそういうところは相変わらずね」

「やっぱり知り合いだったんだな」

「ええ、私とリリエルとは幼馴染なの」

「幼馴染⁉︎ そうだったのか。それならそうと早く言ってくれ。何のもてなしもできないが、邪魔はしないぞ」

 幼馴染に悪い奴はいない。

 堕天使だろうとそれは変わりのない真実だ。実際、あの事件の犯人はこいつではないようだし。

「そ、そう悪いわね。でもあんたにも関係がある話だから良く聞きなさい。堕天使たちの動きが最近活発してきたわ。原因はあんたよ」

「私……ですか?」

「正確にはあんたたちだけどね。何でその人間に躍起になってるかまでは知らないけど殺気立ってるから何をしてくるか分からないから十分に注意することね」

 あの事件はその予兆に過ぎないということか。しかし、俺たちがしているのはバトルものではなくラブコメだ。せいぜい荒事には巻き込まれないように気をつけるとしよう。

「堕天使のお前が何で忠告してくれるんだ?」

「別に大した理由はないわよ。それに堕天使になったからってそいつらに協力してやる義理なんてないし、私のライバルが他の奴に倒されるのが癪なだけよ。それじゃあ、私はもう行くから」

「もうか? もう少しゆっくりしてったらどうだ?」

「私も暇じゃないのよ。それじゃあ、せいぜい大人しくしていることね」

 忠告だけして東雲家から出て行く堕天使。その背中に生える黒い羽には色々なものを背負っていたが、それを知る者は誰もいない。

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