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第26話 悪いことは続けざまに起こる法則について

「葵さんの想い人は蓮さんだったとはそれは驚愕ですね。しかし、それは僥倖ではないのですか?」

 球技大会が終わり、それぞれ情報交換することになった。ここで問題視されたのはリリエルが仕事をしていなかったことではなく、告白の件である。

「まあ、俺も葵が好きだから良いけど恵はどうする?」

「確かにそうですね。お付き合いをしながらですと計画は思うように進まないでしょう。それでは恵さんの方を優先して目処が立ち次第、葵さんとお付き合いするという流れになるのでしょうか?」

「恵の想い人を探すのは確定だが、その後は未定だ。それに俺と葵が付き合うのが葵の幸せに直結するかは疑問だしな」

「それは自分の考えを否定しています。以前、好きな者同士が付き合えば幸せになると仰っていたではありませんか」

「余計なことだけ覚えてるな。とにかく、不本意だが同時進行をやめて恵の想い人を特定することにしたからお前も隙があったらさりげなく聞いてみてくれ」

 女子って暇さえあれば恋話とかをしているイメージがある。女同士だからこそ話し合えることもあるだろうからそこはリリエルにしか頼めない。

「はい。しかし、恵さんにそういった類の話を振るとはぐらかされてしまうので本人から聞き出すのは困難かと思います」

「それもそうか……。お前の力でも無理なんだよな」

「私の力はあくまで補助的なものですから。しかし、今回はこのようなものを用意しました」

 ポケットから取り出されたのは手のひらサイズの黒い塊。奇妙な形をしており、包み紙にまるで蛇のような文字が刻まれている。

「何だこれ? チョコか」

「女子高生はお菓子に弱いと聞きました。そこで私が天界から人間界にもありそうなものをお持ちしました」

「餌付けしようってか? 恵はそんな食いしん坊キャラじゃないぞ」

「それは存じております。このお菓子は人を泥酔させ、その内に秘める思いを口にしてしまうという本来はお遊び用に使われるものです」

「なるほど。それで恵から聞き出そうって魂胆か。でも俺らまだ未成年なのに泥酔させるのは社会的にどうなんだ?」

「泥酔するといってもアルコールは一切入っていません。未成年でも問題はないと思います。泥酔している間の記憶は思い出せないようになっているので最適かと」

「けど、言わせてる感があって嫌だな。これは最終手段として取っておくか」

「了解しました。ではそちらは蓮さんが預かっていてください」

 その後も恵の想い人を特定するかをお互い意見を出し合っていったが、一番有力なのは怪しいお菓子を食べさせるというリリエルの案だけとなってしまった。




***




 あの告白を盗み見してしまってから意識してしまっている。最近は自然と避けるようになってしまい、このままではいけないと思いつつも今日もまた保健室に避難していると部活を終えた恵が迎えに来た。

 その帰り道、恵はグサリとくる質問を投げかける。

「ねえ、最近様子おかしいよ。もしかして球技大会で何かあった?」

 恵はたまに鋭いところがある。野生の本能なのかそれとも幼馴染としての感覚なのかは定かではないが、これには何度も救われた。

「別に何もないよ。ただ俺が気にしすぎてるだから」

 実際、葵はあの告白があっても生徒会長といつも通りに接していた。その鋼の精神を少しでも見習いたいものだ。

「ふ〜ん。まあ元気出してよ! 何があったか知らないけど蓮には私がいるんだから」

 なんとも心強い言葉だ。何の根拠もないんだろうけどその一言でやっていける気がしてきた。

「ああ、そうだな。あ……、教室に忘れ物したからちょっと待っててくれ」

 鞄を置いたまま蓮が保健室から出ると暇を持て余した恵はそこから転げ落ちていた黒い塊に惹きつけられるようにそれを口に運んだ。



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