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第22話 仲が悪くなるのは簡単だが仲直りするのは大変な法則について

 時が経つのは早いもので、恵の好きな奴を特定する前に球技大会は始まろうとしていた。

 今からそれを特定して、付き合うように仕向けるにはいささか時間が足りない。ちなみに恵はご機嫌斜めでそれをまず何とかしなくては次の段階に進めないというオマケ付き。

 あの鈴木から聞いてはいたが想像よりも深刻なようで話しかけても頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。

 さて、球技大会は明日だ。同時進行するにしろしないにしろ、このままでは葵の方に専念できない。

 しかし、恵は頑固で趣向を凝らしても話すら聞いてくれない。これでは機嫌を直そうにも手の打ちようがないので何が原因なのかを鈴木に聞いてみる。

「それがこの前、恵と一緒に今話題の映画を見に行ったんだけどその時に君と副会長を目撃してね」

「それで怒ってるのか……」

 別にわざわざ言う必要はないだろうと伝えていなかったのが、こんな結果を招くとは。多分、除け者にされたと勘違いされて怒っているんだろうな。

「乙女心はちょっとしたことで揺らぐものなの。でも今回は君も分かっているだろうけど頑なになってるみたいで」

「ああ、知ってる。何か言ってやってくれ」

「もう言ったよ。けど、やっぱりダメだった。ここは本人が誠意を見せないとなんじゃない?」

「誠意……か」

 これはまるでデートみたいだと浮かれて恵を蔑ろにしていた。それを謝罪しなくては。

 だが、謝罪をしようにもその声が届かないのなら馬の耳に念仏だ。

「まあ、部活のことなら気にしないで。球技大会前日ってことでお休みだから」

 となると部活が終わるまで待つ必要はないということか。それはありがたいが考える時間も少なくなるということで放課後になってもどうしてもこれという案は思い浮かばなかった。

 不安要素を残したままにはしたくはない。

球技大会は明日。この機会を逃したくはないのだが……。

「なあ、恵。話くらい聞いてくれよ」

 帰宅しているこの時でもまだそっぽを向いたままだ。そのせいで転びそうになったりしているのでこっちは内心ヒヤヒヤしているというのにその姿勢を一切変えようとしない。

 こうなった恵はまるで山のように不動。これを動かすには今までのような感じでは駄目だ。

 結局、帰宅途中でも機嫌を直すことは叶わず蓮はどうしたものかと扉を開けるとそこには私服姿でクレープを頬張るリリエルがいた。

 それを見て蓮はハッと思いつき鞄をリビングに置くとまた靴を履いて外へ出た。

「おかえりなさい。えっと、お出かけですか?」

「すぐ戻る。知らない人が来ても開けるなよ!」




***




 日が沈みかける前に蓮は雛坂家のドアホンを押した。

「何?」

 恵の両親はまだ帰宅していない時間帯で自然と俺の幼馴染が出てくることになる。カメラのついていない古いタイプのドアホンだったのが幸いだ。今の恵なら俺と知ったら居留守をしそうだったし。

「やっと口を聞いてくれたか。お前に渡したいものがあってな」

「これはクレープ?」

 あの後、蓮はクレープの材料を買いに行っていた。幼馴染を幸せにする一環としてそれなりに料理はできるようにしている。お菓子作りは数える程度しかしたことがなく、クレープは難易度が高く四度目でようやく完成した。

「俺手作りのクレープだ。駅前のクレープには劣ると思うけど仲直りの印として受け取ってくれ」

「やだ。受け取ったら機嫌直せって言うんでしょ? 私はそんなに安くないよ」

「お前が機嫌悪いのは俺がお前を蔑ろにしたからだろ。俺の大事な幼馴染は葵だけじゃない。お前もだ恵」

 成績優秀で人望の厚い幼馴染も天真爛漫で誰からも好かれるような幼馴染も俺にとってはどちらもこの命よりも大切な存在だ。

「む〜、そうじゃないけど蓮がここまでしてくれたんだし今回は許してあげる」

 こうして恵はいつもの笑顔に戻り、手作りのクレープをぺろりと平らげた。

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