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第18話 デートの行き先に困ったら大体映画館になる法則について

 交渉を終え、放課後に葵へと事後報告をしに行く途中あの図書委員長が来て、反対を取り消すと言ってくれた。それがなくても結果は変わらなかっただろうが、一人だけ反対という可哀想なことにはならなくてよかった。

「わざわざありがとうね。本当は生徒会がやるべき仕事なんだけど……」

 今日は生徒会の仕事がないようでお互い家に帰りながら交渉が終わったことを話す。

「気にするな。困った時はお互い様だ」

「けど信じてたわ。実は交渉してくれてる間にもう準備は済ませたの。だから当日まで時間があるんだけど……その、ね? いくら幼馴染だからってこんなに活躍してくれたんだから何かしらお礼はしないとなー」

「いや、別に気にすることないって。俺が好きでやってるんだしさ」

「そう言ってくれるのはありがたいけど生徒会役員として成果を出した人には対価を払わないと」

「対価って、俺は報酬目当てでやったわけじゃないしな」

 本当に葵は義理堅い奴だ。極道の娘ではないかというほど義理堅い(彼女の両親は普通の会社員です)。

「そうであって私の気が済まないんだ。何か欲しい物とかないの?」

「欲しい物か……特にないかな」

 強いて言うなら二人の幸せだが、それは何だかキザっぽい。

「じゃあ、その代わりとはいっては何だけど今度の休みに一緒に映画に行かない?」

 俺は幼馴染の誘いは断らない。そういう男だ。




***




 二人で映画を見に行く。

 まるでデートみたいな展開じゃないか。

 しかし、ここで浮かれてはいけない。葵には好きな人がいるはずだ。これはただ単に幼馴染と遊びに誘っただけ。

 葵から誘ってくるのは珍しいが、それだけみたい映画なんだろう。家が隣同士だというのに駅前で待ち合わせだなんて、これは予行演習といったところだろう。

 遊びでも時間を無駄にしない葵らしい。

 まあ、俺は相手が幼馴染でも否幼馴染だからこそ全力でそれに応えよう。待ち合わせする場合は男が待ち合わせ時間よりも早く来てこう言ってやるのだ「俺も今来たところだ」と。

 この台詞は男なら一度は言ってみたいものだが、葵の方が先に到着していて俺は代わりに「ごめん、待った?」という台詞を口にした。

「ちょっと早く起きちゃってね。さぁ、行きましょ」

 それにしても生徒会の仕事があるせいで何かと一緒にいる時間が減ってしまったせいか普段着の葵は久しぶりに見たような気がするな。

 何にせよ葵の白ワンピース姿は破壊力がある。いつもは生徒会副会長として気を張っているせいか堅苦しいイメージがあるが、こういった服を好む可愛い一面もある。

「何? もしかしてそんなに映画が嫌だった?」

「いや、その服似合ってるなと思って」

「きゅ、急に変なことを言わないで⁉︎ もしかして他の人にもそんなこと言ってるんじゃあ……」

「別にそんなことしてないって。俺はただ思ったことを口にしただけで」

「そ、そう……なんだ。それなら良いけど」

 チョロいな。お父さん、そんなチョロいと変な男に引っかからないか心配だよ。

 そんな蓮の心配をよそに本人は機嫌が良くなり、そのまま他愛のない話をしながら映画館へと進む。

 道中、特に何もなかったが楽しいひと時であっという間に目的地に着いていた。

「さて、着いたな。どれを見るんだ?」

「これを見ようかなって」

 葵が指をさしたのは『君の世は』。

 ニュースとかでも取り上げられるほど話題な作品だ。公開されてから既に一週間が経っているがいまだにその人気は衰えていない。

「ああ、最近人気のやつだな。俺も見たいとは思ったけどまさか葵が興味持つなんて意外だな」

「別に良いでしょ。ほら、行くわよ」

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