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第15話 秘密兵器は意外と簡単に手に入る法則について

 球技大会の情報は流石に新堂も手に入れていないものでそれでどうにか認めてもらうことに成功した。

「じゃあ、交換条件として羽鳥の情報はそっちに流してあげるわ。それにしてももの好きね。あんな男のことを調べて何が楽しいわけ?」

「それをあんたが言うか。まあ、その辺は秘密ってことで」

 お互いに深く干渉をしないようにしているのでここは仁那とは違い適当に返す。

 いわゆる利害関係だけのこの二人はそれだけで事足りた。

「まあ、貴方が何をしようと私の知ったことではないけどね。じゃあ進展があったらメールを送って。わざわざ部室に来なくていいから」

「はいはい。じゃあ、俺はこれで」

 いつ来ても彼女しかいない部室。

 静かな空間でただ一人作業するその背中はとても寂しそうに見えたが、問題児たちとの交渉があるという憂鬱な仕事がある蓮は教室へと戻って行った。




***




 反対しているのは図書委員長の松本 文華と風紀委員長の柊 瑛里、この二人である。

 問題児を同時に相手にするのは骨が折れるのでこちらから赴いて一人一人説得することにした。

 まずは図書委員長の松本文華からだ。いくら問題児といっても全員が五十嵐のように話を聞かない狂人というわけではないはず。

 昼休みでは図書館を利用する生徒たちが邪魔なので交渉は放課後にすることにした。

 時が来て、図書館へと赴くとそこに彼女はいた。図書委員長の松本 文華。

 銀縁のメガネとお下げ髪が似合うその少女は机に座って原稿用紙の空白を埋めている。

「球技大会の件について話したいことがあるんだけど、ちょっと良いか?」

 蓮が思い切って声をかけるが反応はなく、手に持った万年筆を黙々と走らす。

「おい! 図書委員長、松本 文華だよな。話があるからまずこっちを向け」

「あ、すいません。気がつきませんでした。図書館はもう閉まっているので本の貸し出し、返却は後日にお願いします」

 まさかのこいつも人の話を聞かない奴だった。どちらとも悪意がないのが逆に腹立たしい。

「だ〜か〜ら〜、俺はお前に用があるって言ってるんだよ。今大丈夫か? 忙しいならまた今度にするけど」

「いえ。これは好きな作家さんへお手紙を送ろうとしていただけなので時間はありますよ」

 手紙にしては随分と量が多いから受け取る相手は相当驚くだろうな。あの量ならラノベ一冊分くらいは余裕であるだろ。

「そうか。なら単刀直入に聞くけど球技大会の参加に反対しているのはどうしてだ?」

「私たち図書委員はみなさんに本の魅力を知ってもらい、心地良く読書ができる環境を提供することです。球技大会に参加することではありません。なので反対しました」

「別にただの学校行事だろ。図書委員同士で仲を深め合う良い機会にもなるし、そんなに頑なにならなくても……」

「仲を深め合う必要なんてありません。そんなの無意味ですから。どうしてもと言うのなら私たちが参加しなくてはいけない理由をここにある原稿用紙くらいの量の文で説明をしてください」

 これ以上、何を言っても埒があかないので今日はそこで退散することにした。

 まさか負けた気分で帰宅する羽目になるとは思いもよらなかった。図書委員長だからもっと控えめな性格かと腹を括っていたがあんなに面倒な奴だったとは。

 そこにまた面倒な奴が現れた。

「蓮さん。こちらにいらしたのですね」

「リリエルか。最近姿を見ないから天界に修行にでも行ってるかと思ったぜ」

「修行はしていませんが、用事があって天界へ戻っていました。心配をおかけしても申し訳ありません」

「別に心配なんてしてねえよ。それで天界には何をしに行ったんだ?」

「報告と秘密兵器を受け取りに行ってきました」

「秘密兵器?」

「はい。これで蓮さんの計画はますます捗ることでしょう」

 計画は進行するどころか狂いつつあるが、癪なのでそれは口にせずその秘密兵器を家で受け取ることにした。

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