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第14話 幼馴染の頼みは断れない法則について

 あの新聞部部長は積極的に行動するようで彼女が欲しているような情報を集めようとしても先を越されてしまっている。

 まるで一種の嫌がらせかのように。

 しかし、俺とあの人には接点がない。ただ単に新聞部として活動をしているだけだが普通そういうのは部員がやるものではないだろうか。部長が直々にやるものだと思うが……。

「最近、色々とやっているみたいだけど急にどうしたの?」

 どうしたらあのいけ好かない新聞部部長をギャフンと言わせるか頭をフル回転していると廊下で葵と鉢合わせになった。同じクラスではあるが葵は生徒会室に、俺は計画の進行のために行動しているせいでこうして学校でゆっくり喋る機会は少ない。

「葵か。ちょっと新聞部の部長と対決してるんだよ。別に生徒会の世話になるつもりはないから安心してくれ」

「それなら良いけど一人で色んなものを背負って誰にも頼らない貴方の悪い癖が出てるのかと思って」

「大丈夫だよ。これは俺がやらないと意味がないから気持ちだけ受け取っておくよ。それよりもそっちの方が大変なんじゃないか?」

「まあね。矢内先生が特に張り切っててまだ二週間も前なのに忙しくて……。本当は一緒に帰りたいんだけど」

「でも葵は副会長だから仕方ないさ。もし猫の手も借りたい状況になったら俺が手伝うよ」

 さりげなく提案しておいてその日になったら生徒会に潜入できるようにしておく。まあ、この機会がなくとも一週間前に言おうとはしていた。

 それよりも球技大会までもう二週間か。その間に恵の意中の相手を特定して、そいつとくっ付けないといけないとは我ながら無理難題だ。

「うん。その時は頼もうかな。それよりも実はいつもはクラスでグループを作ってそのグループが好きな球技を選んで参加するっていう流れだったんだけど、今回はそれとは別に委員会別に分かれてもやろうって矢内先生が提案したの」

 矢内先生らしいな。あの人は学校行事になると途端にやる気になる。生徒会顧問になってからはそれが顕著になったらしい。

「ふ〜ん。まあ、参加しないで見てるだけだったり教室で遊んでる奴とかいるから良いんじゃないか」

 去年、俺は二人に良いところを見せようと奮闘したが惜しくも準優勝だった。今年は優勝をしたいが何せその時には葵を幸せにするために動かなくてはいけない。

 優勝よりも幼馴染の幸せ。

 クラスのみんなには悪いが今回は計画の方を優先させてもらおう。

「私も賛成だけどほらその……この学園の委員長は変わり者が多いでしょ」

「まぁ……な」

 心当たりがありすぎる。

 自由な校風なせいか委員長だけでなくとも問題児は両手では数え切れないほどいる。この前会った保健委員長の五十嵐もその一人だが、あれと同等かそれ以上の問題児がいるのだからこの学園の秩序が保たれているのは優秀な生徒会役員たちがいてこそだろう。

「それで事前に委員長全員にそのことを伝えたんだけど反対派が多くて……。蓮は何かと顔が広いから交渉を頼めないかな?」

「ああ、もちろん。俺に出来ることなら何だってやるさ」

 正直、それは葵には任せられない。

 冷静沈着な彼女でも問題児たちとの交渉には適していない。あいつらに正論は焼け石に水をぶっかけるようなものだ。

 何故か去年は色んな人と知り合ってこの学園で知らない人は逆に少ないほどだ。新聞部の部長のことも名前は知っていた。それにこの情報は生徒会役員と委員長しか知らない情報だ。これならあいつも協力してくれるだろう。

「じゃあ、日程が決まり次第伝えるから交渉はお願いね」

 昼休みはまだ時間が残っている。確かあいつは部室にいたはず。

 蓮はとっておきの情報を伝えに彼女に会いに行った。

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