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第11話 ナース服は誰が着ても可愛い法則について

 目の前にはナース服を着た美少女。

 普通の男子なら一目惚れしてしまいそうな美貌の持ち主は残念ながら狂人だ。そのせいで誰も彼女に近づこうとはしない。

 彼女は他人から何と思われているのか知ってか知らずかそのスタンスを変えない。保健委員の人たちはそれに振り回られて大変そうだが正直そんなこと蓮にとっては関係のないこと。

 しかし、去年知り合ってから執拗に治療をすると言って聞かない。

「五十嵐、治療がどうのとかはもうやめにしてくれないか」

「いいや。これは私の使命だ。苦しんでいる患者を助ける。保健委員長としてではなく、五十嵐 千繪として」

「別に俺は苦しんでねえよ。強いて言うなら今だけど」

「やはり私の言葉では揺るがないか。けど最近は良い傾向にある。それでは今回は大目に見るとして君の要件を聞こうか東雲」

「珍しいなお前が自分からそんなこと言い出すなんて」

 いつもは一方的に話を進めてそれを止めようとしていると休み時間が終わってしまうというのに。

「私も人の子だからな。それで何を画策しているのかな」

「画策だなんて人聞きの悪い。少し聞きたいことがあってさ。多分、ここで羽鳥って奴が来ただろ」

「ああ、彼のことか。あれと知り合いなのか?」

「いや、知り合いではないけど少し気になって。ほら、結構噂になってるだろ」

「ふむ。別に隠すことでもないし、君と私の仲だから言うがあれは来たぞ。足を怪我していたので治してやったのを覚えている。つい最近のことだからな」

「その怪我は酷かったのか? 怪我で部活を休んでるって聞いてるけど」

「いいや、無理をすれば走るのは出来る。ただ大会があるわけでもないから無理をせず治療に専念すると本人が言っていた気がする」

「気がするって曖昧だな」

「正直、私の苦手なタイプだ。そうだな、言うなら君とは似て非なる存在。悪魔の皮を被った聖者が君なら奴は聖者の皮を被った悪魔と表現しよう」

「俺が悪魔ってそんな風に思っていたのか」

「一般論だよ。君が何か画策している時は悪魔のそれだと百人中百人が答えると思うが」

 それは昔から目つきが悪いからだ。そのせいで色々とあったがこれも個性の一つだと受け入れている。個性のない奴はただのモブだからな。

「でも羽鳥の中身が悪魔ってのはどうしてだ?」

 自分の中身が聖者というのも気にはなるがそこに触れたら面倒なことになりそうだ。見えている地雷に突っ込む義理はない。

「私は人を見る目には自信があってね。一目見て彼は演じていると悟ったよ」

「演じている?」

「これは推論に過ぎないけど彼は王子を演じている。女性が理想としている王子を」

 その真意は定かではないが、五十嵐の人を見る目は信頼に値する。本人は保健委員長として当然と言っていたが絶対に必要のないスキルだ。

「そうか。色々と教えてくれてありがとな」

「報酬は今のが終わってからで良いよ。それと彼に接触するなら気をつける事だ。君が騙されるとは思えないが用心するに越したことはない」

「ああ、それじゃあ鍵を開けてくれ五十嵐」

 疑うわけではないが実際にこの目で見てみるのが一番だ。休み時間はこの情報を聞き出すだけで終わろうとしているから教室に戻りたいのだが、目の前の保健委員長は頑として動こうとしない。

「何を言っている。これとそれは別だ。治療はまたの機会として君には色々とその身に教えてあげようと思ってね」

「いや、もう勘弁してくれ」

 保健室では鐘の音と共に悲鳴が同時に響いたが、誰も彼に手を差し伸べる者はいなかった。


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