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出会い,そして夢の始まり  作者: 柴田盟
10/25

たっくんと涙

朝起きて、ニュースを見て、行方不明になっていた楓ちゃんが無事帰った事が、報道されていた。

 世間では明るいニュースのように見えるが、実際は違う。

 それを知っているのは俺と橘だけだ。

 また万引きなんて考えていないだろうか?

 また追いつめられて、自殺なんてバカな事を考えていないか?

 でも昨日の事を思い返して、楓ちゃんの笑顔が脳裏に映り、心配はいらないんじゃないかと思ったが、やはり心配だった。

 そんな楓ちゃんの事を考えてしまい、頭がごっちゃになって混乱状態だ。

 今日は休日だが、このまま部屋に閉じこもっていると、壊れそうなので、とりあえず気分転換に外に出た。

 時計は午前九時を回った所だった。

 日差しが照りつけ、少しずつ落ち着いてきた。

 とにかく俺はただ歩いた。

 無力な自分を攻めたって何もないと分かっていても、やはりその事で考え巡らしてしまう。

 ため息と共に俺は「俺は無力だな」と橘につい弱音をはいてしまった。

「自分を攻めても何もないよ」

 悔しいし、ムカつくが、それは事実だ。

 途方もなく歩いてたどり着いた先は、港だった。

「海は良いよね」

 と黄昏る橘。

 その通りであり、俺の胸に抱え込んでいる悩みが小さくなった感じがした。

 じっと海を眺めていると、何か落ち着いた気持ちになる。


 それが俺の新たなスタートラインだった。

 力がないなら少しずつ、力を付ければ良いのだと。

 俺は大学も出ていないし、かといってちゃんとした職業にもついていない。

 だから俺は楓ちゃんのような女の子を助けられるぐらいの力を付けたい。

 その為には何をすればいいのか日々少しずつ考えて、たどりついた答えは、ただ勉強をすることだった。

 何の勉強をすれば良いのか暗中模索の中考えた結果、もう一度、一から受験勉強をして大学に行く事だった。

 良い年した俺が大学受験なんてお笑いだと思ったが、その件に関して橘は協力してくれた。

 それに俺みたいな人間は山ほどいると。

 でもあの時のように勉強をしたら、またあの事を思い出して、俺の心は壊れてしまうんじゃないかと畏怖したが、そんな事はなかった。

 その事について橘は、あの時失敗した原因は、何かをしなければならない気持ちにかられたからだと。

 そして俺は素直な気持ちになって、あの時の事を改めて考えると、あの時、自分の事しか考えていなかったからだと。

 あの時、俺に少しでも人を思いやる気持ちが合れば、何か変わっていたのかもしれない。

 あの女の涙ですべてが終わったと言ったが、そうじゃない。彼女に問題が合ったのではなく、俺自身に問題が合ったのだと気づき始めた。

 嘘をつかれても仕方がない事なのかもしれない。

 受験勉強に疲れ、俺は愛に飢えていた。

 あの時の俺は彼女に対して一方的に思いを告げようとして、距離を置かれてしまったのだ。

 考えて見れば、悪いのは俺の方だ。

 彼女に振り向いてほしいあまりに、俺は無言電話をして彼女を恐れさせてしまった。

 それで降られてしまい、勉強にも手が着かなくなり、それで俺が彼女にした事が塾に蔓延して、俺は半殺しにされても仕方がないのだと思った。

 でも過去の事を反省するのは良いが、あまり自分を攻めたりしてはいけないと、橘に教わった。

 

 あれから二週間が経過して少しずつ考えがまとまり、俺は受験勉強をして充実した毎日を送っている。

 橘に勉強を教わったりしていた。

 いや、これからは橘先生と呼んだ方が良いと思って聞いてみると、『好きにしなよ』の事だった。

 だから俺は橘先生と呼ぶ事にした。

 俺には目的がある。

 何の為に勉強するかは、自分に少しでも力を付けて、楓ちゃんのような、か弱い女の子の力にでもなれたらだと言うことだった。

 それが出来ないなら、誰かの為に生きられる強さを持つことだった。

 それは誰でも良いのだと橘先生に教わった事だった。

 耳の不自由な人の耳になるとか、目の不自由な人の目になるとか、何でも良い。誰かの為に生きられる事だったら。

 そして俺は仕事が終わって喫茶店に通って勉強をするのだった。

 ふと考えるとあれから楓ちゃんとは音信不通で、ちょっぴり心配だった。

 勉強の一区切りが終わって、橘先生に話しでもと思って聞いてみる。

「楓ちゃん。元気ですかね?」

 橘先生に対してあの時以来から、敬語になっている。

「もしかしたら、今たっ君に電話しようか、どうか迷っているかもしれないね」

 何て聞いてため息をついて、スマホを何となく見つめた。

 楓ちゃんは頑張りやさんだから、限界まで自分で何とかして、それでもダメだったら、橘先生に電話をかけて相談に乗ってもらっていたという。

 コーヒーをすすって、楓ちゃんが作ってくれた唐揚げの味を思い出していた。

 本当にあの唐揚げはおいしかった。

 それを食べる俺を見て、幸せそうな顔をしていたのも。

 本当に楓ちゃんはいい子だった。

 そんな楓ちゃんには、どうしても幸せになって欲しいと思う。

 橘先生は、俺が恋人になって、幸せにしてあげればと提案していたが、俺には彼女を幸せには出来ないし、それはいけない事だと思っている。

 とにかく俺は一生懸命に勉強をして、大学に行って、楓ちゃんのような、か弱き女の子を助けられる力を持ちたい。

 橘先生の言う通り、それは一歩一歩進む事だと。

 だから俺は頑張れるのだ。

 あの時、失敗したときよりも勉強に熱が入っていた。


 勉強も一区切りがして、俺は帰る。

 時計は午後十一時を示している。

 明日の事を考える。

 そういえば明日は土曜日で、俺に気がある花里さんと一緒の日だ。

 花里さんは、あれから仕事にも熱心で覚えも早く、アルバイトとして一人前になっていた。

 でも俺に対して難癖を付けたりしているが、橘先生いわく、それは俺の事が好きな事の裏返しだと言っているが、俺の中では今一信用できない事だった。

 だから俺はあの子の事が苦手になってしまった。


 次の日、花里さんが出勤してきて、俺に威圧的な視線を向け、素っ気ない口調で「おはよう」と言う。

 心にちくりと棘の刺さる気持ちになって何か嫌だ。

 こっそりと橘先生に、

「何か嫌だな」

 何てグチを言っていると、

「何度も言っているけど、あれは大好きな人に対しての裏返しだから」

 何て言っているが、俺はあまり良い気分はしないので、いつものように距離を置くことにする。

 まあ、とにかく俺は誰かの為に生きられる事を目標に大学受験を決意してから、以前よりも仕事に熱が入るようになっていた。

 そんな俺をちらりと威圧的な視線を向けられて、あまり良い気分はしない。

 だから俺は彼女とは距離をとって仕事をしていた。

 それでも威圧的な視線を感じつつも、仕事に専念する。

 細かい仕事は終わって、夕方に来るお客さんの対応をするためにレジに戻って、花里さんと一緒になる。

 花里さんと一緒にいると、何か気まずい。

 でも仕事だから、ここは堪えて落ち着くしかない。

 俺の横に立っている花里さんは横目で俺の事をちらちらと見てくる。

 目が合うと、顔をしかめて「何よ」と威圧的に言ってくるので、俺は「いや別に」と言って置いた。

 橘先生は花里さんが俺の事が好きだから、そんな態度をとっていると言っているが、やっぱり信用出来ない。

 つーかそんな態度をされると、疑うのも仕方がないのかもしれない。

 そんなふうに夕方に来るお客を待ちかまえながら、立ち尽くしていると、橘が、

「たっ君、何か話題でも降ってあげな」

 と言ってくるので、俺は嫌々ながらそうする事にした。

「花里さんは高校生だよね」

 とギクシャクした感じで聞いてみる。

 すると花里さんは鋭い目つきで俺を睨み、

「高校生だから何なのよ」

 なぜか憤った口調で俺に言う。

「いや、聞いて見ただけ」

「くだらない事を聞かないで」

 と素っ気なく言われて、気まずい雰囲気がますます俺と花里さんの間で増した。

 本当に俺が好きだと言う事の裏返しなのか?橘先生が言ったことが疑わしくなってくる。

 まだ夕方に来るお客さんは来ない。

 そんな中で花里さんが、何かギクシャクした口調で俺に言う。

「ま、松本さんは、か、か、彼女とかは入るの?」

 その質問にはすごく驚いてしまったが、別にそんな事に対して答えても差し支えがないので、「いないよ」と答える。

「そう」

 と息をつくように言う。

 そして立ち尽くして、数分後、夕方に来るお客さんがぞろぞろとお店に入ってくる。

 それを二人でこなして、何とか今日の仕事は終わって、ほっと一息こぼれ落ちる。

 着替えて店に出てこれから受験に向けて、喫茶店でも行って、勉強しようと生き込んでいた。


 朝起きると今日は休日だ。

 今日はいつもより、勉強に熱を入れようと、俺は朝から気合いを入れるために、腕立てをした。

「気合い入っているね」

 と橘先生が言う。

 時計が午前七時を迎えた所、珍しく俺のスマホに着信が入った。

 もしかしたら、楓ちゃんと思って着信画面を見てみると、見知らぬ番号だった。

 とりあえず出てみると、

「もしもし」

 口調からして女性である事や分かるが、

「どちら様?」

 と聞いてみる。

「あたし、花里だけど」

 名前を聞いて度肝を抜かれる程の衝撃を受けたが、ここは冷静になって、

「俺に何か用?」

 と聞いてみる。

「用って程の事じゃないんだけど」

 相変わらず、俺に対してぶっきらぼうな口調だった。続けて花里さんは、

「今日、松本さんはお休みでしょ」

「ああ、うん」

「バイトの事で色々と話し合いたいから、今日はあたしにつきあってくれる?」

 そこで俺は考える。

 今日は勉強に熱を入れたいが、本当にどうしよう?

 すると、俺の会話を聞いていた橘先生が、

「行ってあげなよたっ君。勉強ならいつでも出来るじゃん」

 何て楽しそうに言う。

 まあバイトの事で何か俺に教わりたいみたいだから、少しぐらいは時間をあけても良いと思って、

「別に良いけど」

 と了承した。


 待ち合わせ場所は、とある駅前の噴水広場だった。

 時間は九時で、五分前に到着したのだが、すでに花里さんは到着していた。

「ごめん。待った?」

「別に」

 花里さんの姿を見ると、黒いロングスカートにカーキー色のジャケットを羽織って、インナーにはピンクのシャツですごくお洒落な感じだ。髪も栗色の長い髪をなびかせている。

 そんな花里さんを見ると、すごくときめいてしまう。

「何じろじろ見ているの?」

「いや。その。あの」

 何を返せば良いのかしどろもどろな気持ちになり、そこで橘が、

「お洒落で綺麗だねって言ってあげなよ。たっ君」

「お洒落で綺麗だね」

 と言ってあげると、花里さんは顔を真っ赤にして。

「バカ」

 と罵られ、鞄で軽くたたかれてしまった。

 何で俺は殴られなきゃいけないのか?橘先生の言うとおりにしなければ、そうはならなかった。

 これは好きな事の裏返しと、俺の耳にたこが出きるほど何回も言われたことだ。

 とにかく閑話休題と言うことで、花里さんが俺にバイトの事で聞きたい事があるって言っていたっけ。

「そういえば、バイトの事で聞きたい事があるって言っていたけど」

 すると、花里さんは上目遣いで俺を見つめてくる。

「な、何」

 と狼狽える俺。

「これ」

 鞄から取り出した物は、何かしらのチケットのようだ。


 橘先生が言っていた事は本当だ。

 花里さんは本当に俺の事が好きだという事は。

 じゃなかったら、バイトの事を口実にしたりして、俺を映画に誘わないだろう。

 俺と花里さんは今睦まじいカップルのように映画の中で隣合わせで、見ている。

 映画は最近流行っている『切ない恋』と言うタイトルだ。

 そのタイトルの名の通り、甘く酸っぱい恋愛映画だ。

 映画よりも俺は、花里さんに対してどうすれば良いのか?困惑状態と言った感じだ。

 隣で映画に夢中になっている花里さんをちらりと見ると、感動しているのか?ハンカチで涙を拭っている。

 その視線をスクリーンに向けると、どういう経緯でそうなったのか分からないが、崖の上で恋人同士が抱き合い、そして女性が崖から飛び降りてしまった。

 すると、花里さんは俺の手を両手で握ってきて、鼓動が激しく高鳴ってしまう。


 映画の内容は最後のシーンだけしか頭になく、終わった時、俺と花里さんは外に出る。

 これからどうしよう?今日は休みだし、勉強に熱を入れたいし、気分転換に久しぶりに秋葉も見ておきたい。

 俺の横を歩いている花里さんをちらりと見る。

 その瞬間、花里さんと目があってしまい、威圧的な視線を向けられたが、すぐに落ち込むような表情になって俺に言う。

「映画、つまらなかった?」

「いや、面白かったよ。特にラストで恋人が崖から飛び降りるところ何て」

 正直なところ、俺はあまり面白いとは言えないが、わざわざチケットまで用意してくれて、気を使う俺であった。

 すると花里さんは疑念に満ちた視線を向けられて、何を言って良いのか分からず、俺と花里さんの間に緊迫した空気が漂う。

 本当にこの空気には耐えられない。

 この場で帰りたい気分だが、帰ってしまったら、何か花里さんにも悪い。

 最近交流関係がなかったからか?人付き合いが苦手になってしまっている。

 とりあえず、お昼も回ったところだから、食事に行くことにした。

 食事は花里さんが知っているイタリアンのおいしい店に行くことにした。

 到着して、店は少し込んでいたが、十分くらい並んで、喫煙席にするか禁煙席にするか、俺は花里さんに気を使って禁煙席を選ぶ。

 さっきからたばこを吸いたい気分だが、とにかく俺は我慢している。

 席に着いたものの、相変わらず、さっきから俺と花里さんの間に緊迫した空気が漂い、何か心臓を圧迫されているように、息苦しい感じだ。

 何か話さなきゃと思って考えを巡らしていると、花里さんが切り出して来た。

「松本さんは夢とかあるの?」

 夢と聞かれて、別に話しても差し支えないと思って俺はその口を開く。

「まあ、こんな良い年して、受験勉強をしているよ」

「受験って大学?」

「うん」

「松本さんって、大学のどこの学部に入ろうとしているの?」

「とりあえず、教育学部に入りたいと思っている」

「教師になりたいの?」

「まあ、それは考え中だけど、俺は誰かの為に生きられる仕事をしたいと思ってね・・・」

 これ以上は言って良いことなのか悪いことなのか分からないが、花里さんが興味津々と言った感じで、向かいの席から真剣に聞いている姿に、つい俺は喋ってしまった。

 以前、楓ちゃんと言う子を救えず、無力な自分に対して、賢明に勉強して、大学でも何でも良いから、一から勉強し直して、誰かを守れるくらいの力を持ちたいと言う事を。

 喋り終わった頃、花里さんは何を思ったのか、分からないが、俺と目を合わせず、俯いていた。だから俺は、

「ごめんね。つまらない話をしてしまって」

「・・・」

 相変わらずの無言の花里さん。

 とにかく俺はなぜかそう黙られると、あまり良い気分はしないので、

「ドリンクバー取って来ようか?」

 こくりと首を縦に振る。

「何が良いの?」

「メロンソーダ」

 俺の分と楓ちゃんの分のコップを持って、ドリンクバーに向かって、花里さんと離れただけで、少しだけ緊張がほぐれた感じだ。

 まあ、それは花里さんには悪いが。

「人間つきあいって、結構大変な物ですね」

 と俺の辺りで浮遊している橘先生にため息混じりに言う。

「たっ君」

 橘先生はそう呼びながら、その顔を俺に近づけてきた。

「何すか?ちょっと気持ち悪いですよ」

「もう、彼女はたっ君にメロメロだよ」

 嫌らしい顔をして近づけて来るものだから、俺は、

「何がメロメロ何ですか?」

「まあ、それは後ほど分かるよ」

 橘先生が何を言いたいのかは分からず、それはそれで良いとして、頼まれたメロンジュースを持って、席に戻った。

 その頃には注文した、物が運ばれて、とりあえず、それぞれ二人で食す。


 食事がすんで、店を出た後、その時も帰ってしまいたいと思ったが、何か空気的にそれはしてはいけないような気がした。

 花里さんが俺の事を好きだと言う気持ちは嬉しいが、俺は彼女に対して、どう接して行けば良いのか分からない。

 その気持ちは嬉しいが、俺は花里さんを守る力なんてない。

 彼女はスタイルも良く、かわいいし、俺にはもったいないくらいの女性だ。

 でもやはり俺には彼女を幸せには出来ないだろう。

 何て考えて花里さんと並んで歩く。

 これから本当にどうしよう。

 そこで花里さんが切り出した提案は、

「カラオケに行かない?」

 まあ歌うのは好きだから別に良いとして、近くのカラオケ屋に行くことに決まってしまった。

 中に入り、花里さんは最近はやりの曲を歌っている。

 そこで俺は墓穴を掘る事になってしまった。

 あろう事か、俺はつい癖で今、秋葉で人気の美少女御子ナナのテーマソングを入れてしまった。

 そして俺の番になってしまい、俺が選曲した美少女御子ナナの曲がビデオクリップと共に歌詞が表示される。

 歌いながら彼女を見ると、真剣に見ている感じがするが、きっと心の中で俺の事を幻滅してしまっているだろう。

 歌い終わった俺は、とりあえず座って、花里さんが、

「今の曲何?」

 聞いてくるので、俺は、

「今秋葉でブームになっている美少女御子ナナのテーマソングだよ」

 と俺は観念したように答える。さらに俺は、

「俺って結構オタク何だよ」

 ハハハとごまかすように笑った。

 その後彼女は何も言わず、黙々と歌う感じで、俺は幻滅されただろうと思って、ショックを受けてしまっていた。

 四時を回った頃、カラオケ屋から出て、彼女は黙っている。

 何か黙っているところを見ると、不気味な感じがして、幻滅されたんじゃないかって、考えてしまう。

 とりあえず俺は、

「これからどうする?帰る?」

「うん」

「駅まで送ろうか?」

「良いよ。あたし帰るから」

 そういって、彼女は駅の方まで走って去っていってしまった。

 その後ろ姿を見つめて、彼女が消えていった時、俺は稲妻に打ち当たるような衝撃を受けた感じだ。

「オタクは嫌われるよな」

「さあ」

 にやにやしながら首を傾げる橘先生。それがしゃくにさわって、

「何がさあですか?・・・」

 続けようと攻めようとしたが、何か虚しくなりそうなので黙っていた。

 まあ、でもこれで良いのかもしれない。

 花里さんが俺を好きになってくれた気持ちだけでも受け取っとけば良いのだと。

 でもオタクだからって幻滅された事に対しては別で、それはそれで俺は傷ついてしまった。

 時計を見ると、四時半を過ぎたところで、俺はまだ時間があるので久しぶりにこれから秋葉でも行こうと思って、即座に向かっていった。

 やっぱりナナは良いな。

 秋葉に到着して、駅前にある美少女御子ナナの特大ポスターを見て俺はうっとりする。

 そして帰って少しだけ勉強して、眠りについた。


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