農民(→バイトに転職?)6 求人戦争。
転生して(多分)1ヶ月程経った。気付くと俺は12Lvになっていた。
(確か10レベルからバイトできたよな······金のためには働かなくては······)
以前に、クレファから聞いた話を思い出した。
そうだ、働こう。
俺の決意は決まった!!ニートだけど。
適当に散歩しながらバイト出来そうな店を探していると、ファストフード店の扉にチラシが張ってあるのが目に入った。
(ふむ······時給700円·······悪くない······のか?て言うかこの世界、通貨日本と同じだったんだ)
案の定、バイト求人チラシだった。しかし、その隣の鍛冶屋の扉にもバイト求人チラシ。
(こっちは時給780円か。明らかにこっちのほうがいいが·······力ない俺に鍛冶屋はなぁ······)
俺の想像では鍛冶屋にははげたゴリゴリのおっちゃんがいる。みたいなイメージだ。
「うぅ~ん······少し悩む」
小声で言った。すると突然。
「働きませんか!!?鍛冶屋より楽!!時給安定!!過酷労働無し!!いかがでしょう!!」
ファストフード店の中から、店員らしき人が扉を乱暴に開け出てきた。言い方も気になった。まるで鍛冶屋よりこっちと、誘ったような。するとまた突然。
「馬鹿を言われちゃ困ります!!時給はそこの店よりいいし、誰でも親切に取り扱います!!最初はだんだん慣れてから馴染んでいきましょう!!きっとあなたなら大丈夫です!!」
鍛冶屋からも一人。こっちは女性だけど顔に袋被っててちょっと怪しい。やっぱりここらの店は争ってるらしい······。
「だいたい鍛冶屋なんて鉄とかカンカン叩いてるだけでしょ。こっちはいろいろ楽しいですよ!!仕事も選べますし!!」
落ち着いてくれないかな······。
「はぁ!?そんなこと言ったら、お宅の店だって······あーしてこーするだけ······だろ!!」
負けた。
「ええと······一応ファストフード店のほうが俺は自分に向いているかと······
「ぐっ!!も、もう少し考えたらどうでしょう!?やっぱり······鍛冶屋いいわあ、とかなるかもしれないし!!·········ああ!!もう熱い!!」
鍛冶屋は必死に引き留めようとしたあと、顔の袋を取った。素顔が明らかになった。めちゃくちゃ美人だった。
「!!······鍛冶屋······よさそー······」
ごめん!!ファストフード店の人!!
「ありがとう!!ファストフード店に勝った!!」
「くそっ!!」
申し訳ない気持ち······。するとまた。
「ったく、またあんたら?いつもいつも騒がしいったらありゃしない」
ファストフード店の中からまたもや美人が出てきた。
「先輩!?す、すみません!」
「何があったの?そこのは新人?」
急に話しかけられてドキッとする。
「え!?いやその·····俺は·······」
「じ、実は鍛冶屋に取られて······」
俺の心が揺らぎはじめる。
「こ、こ、今回ばかりは渡さないですからね!!この人はうちの新人バイトですから!!」
「フフ······おもしろい······ウチがもらっていく」
「い、いやです!渡さない!!」
鍛冶屋が弱ってる!ファストフード店優勢だ!
「あぁん?もう一度いうよ?ウチが、もらって、いく」
「く、くうう······!!いや······だって······その·······鍛冶屋がいいっていってたし······その、えと······」
頑張れ鍛冶屋······!!
「決定。歓迎するよ新人君」
ああー。ファストフード店勝った。断るに断れないので仕方なく?ファストフード店にバイトとして入ることになった。
「いつか······来てくださいね······」
鍛冶屋の最後の言葉が重く感じた。