農民5 ボロ屋最強説。
「こひゅぅぅぅ······ああ、水がほしい······」
食料が尽きて、一週間が経ったころ、俺は部屋のベッドに横たわりいつ死んでもおかしくない状態だった。こんな事になるはずではなかったのに······。
二週間前ー
「まぁ、お金ももらったし。うまいもん買って帰るか!!」
そう思った矢先、クレファに会った。
「相葉さん。これ渡すの忘れてました」
「うん······何これ?」
少し厚い書類を手渡された。中身をその場で見た。
「支払い請求、何の?えー、土地代今月分·········50万円!?ファッツ!?どゆこと!!」
全財産10万しか持っていなかった俺は意味が分からなかった。
「私も中身読んでないので、わからないですが、請求だったんですか」
「さっき5万円貰ったばっかなのに、十倍の請求なんてひどいよ!!こんなの!!」
「はい?50万円は初回特別だし、それくらい簡単に持ってるかと?」
「なんで!?初仕事だったのに!?」
転生して間もないし、仕事だって一回しかしてないのに、クレファの発言に動揺した。
「通常の仕事は自分で役所で受けるものなんですけど、今回のは高難易度の仕事は農民は自分から受けれないので、役所からの依頼だったんです。知りませんでした?」
(知らねーよ······説明してくれれば良かったのに······)
そうして俺は借金40万、所持金0円となった。
(あぁ、思い出がよみがえってくる·············思い出せばほとんどパソコンと一緒にいるじゃねぇか············)
走馬灯というのを見た時は死んだと思った。
ギギィ
ドアの開く音がした。きっと死神が迎えにきたんだろう。
(ハハ······次は転生できるかな······いや······神はクソニートに三度の命はくれないだろ······)
「あぁ、かはぁぁ·······」
「あ、相葉さん!?どど、どうしたんですか!?」
「こ、こぅれふあ······さん······水······を······」
死神じゃなくてクレファだった。心配してくれているのか·······?どうかお助けを·······。
「水ですね!わ、分かりました!待っててください!!」
「水道でいいから······はや······く」
クレファは水道を少しの間見つめ、言った。
「············とにかく死にたくないなら待っててください!!」
あの沈黙に何の意味があったのか·······。生還することが最優先の俺にはどうでもよかった。
ギギィ
外出したクレファが戻ってきた。
「水持って来ました!!早く飲んで!!」
「うぅ、ゴクゴク·······うぇっ······ぷはぁ、い、生きてる······!?」
一週間ぶりの水は、渇ききった喉を通ると気持ち悪くなった。でも生きてるからいい。
「で、何があったんですか?」
「土地代払って借金できて所持金無くなって食料も無くなってそれから一週間たってこの様よ·······クレファさんが来てなかったら今頃死んでました······俺·······これからどうすれば······うわーん!!」
クレファに泣きついた。普通に助けて欲しいだけだけど。
「そ、それはまぁ、大変でしたね······私も色々忙しかったもので、気遣ってあげれなくて······」
クレファは悪くないよ······何て残酷な世界なんだ······現世だったら何とか親のスネかじって生きて桁だろうに。
「私から役所に生活支援保護の手続きをしておきます······。期間は二週間なので、それまでに仕事とかで生活に余裕を持たせておいてください」
「ありがとう······。なんか······色々悪いね······。と、ところでさ、さっきの水道の反応は何だったの?」
「あれは······その········実を言うとここの家の水道は、今までこの家に住んでた人が使ったら、全員病院送りになった他、最強説まで出て魔物とかに罠として設置したらボス魔物が引っ掛かり、さすがに無理だろう、と、思ったら舌をつけただけで息を引き取りました。それでここの水道の水は「悪魔の子」と呼ばれるようになりました」
ある意味この家最強だったんだ······。
「ついでに、私のことはさん付けしないで構いません。気軽に「クレファ」とお呼びください。ちょっと照れくさいですが······」
(か、かわいい······)
ここで急にクレファはヒロイン感を出してきた。
「え、じ、じゃあ·········クレファ·······」
何か俺も恥ずい······!!
「·········初めて呼び捨てで呼ばれたので何か··········今日は用事があるので、また······」
ギギィ
ドアの音が今までにないくらい寂しげだが、まあよしとしよう······。