農民1 勇者になりたくて。
カタカタッ、カタッ、カタカタカタカタッ、カタタッ。
いつもと同じように部屋にはキーボードの音と、モーター音だけが鳴り響く。突然、ピンポーンとインターホンが鳴る。家には俺しかいない。
「誰だよ···。ダルいなぁ」
玄関に向かう途中、ある紙が目に入る。この地区に配られた警告の紙、内容は連続殺人が起きているという内容だ。さすがにこれには恐怖を感じずにはいられない。その横にあるモニターを見た。宅配便か。俺が頼んだ覚えはない。家族の誰かが頼んだ物だろう。
「はぁい。今出ます。」
俺はドアをあける。小物を持った宅配の人が立っている。
「あぁ、どうも」
「サインはいりません。」
「え?あ、はい」
「お届けものの説明ですが………」
「………はい」
(変な宅配物だな………)
「死をお届けに参りました」
「………は?」
ズンッ
「うっ!………」
一瞬で頭が真っ白になりめまいに襲われた。体の血が抜けていくのが、はっきりと分かる。声も出ないうちに意識が遠のいていく。警告紙が目に入る。
(俺も………被害者の一人か………)
俺の最後はテレビ報道で決定だな……。家族には迷惑をかけるな。葬儀代のお金って高いんだろうな………。さようなら、お父さん、お母さん、妹。あとマイコンピュータと二次元。悪くない人生だった。
ありがとう、ありがとう、ありがとう。
「うはぁっっっ!」
俺は·······刺され·········てない!?
「あ、起きました?」
俺は広い部屋のベッドに横たわっていた。横には何か女性がいる。
「え····?何ここ?」
「起きたなら、下の階に行って青服の女性に話しかけて下さい」
「あ、はい···」
いや待て待て待て待て。謎が多すぎて整理がつかない。あれ誰?ここどこ?まぁ、と、とりあえず行ってみるか···。階段はここか。
ギイギイギイギコッ
(怖い怖い!階段もろすぎだろ!全く何なんだよ······。)
無事到着したな。青服は···········あの人か。話しかけるか。ちょっと怖いな···。
「あの····」
「はい、受付です。」
(受付···?)
「あ、えと、話しかけろといわれまして·····」
何かめっちゃ緊張するんだけど。
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
(これは······もしや······?)
「お待たせしました。お名前は 相葉 勇樹 で間違いないですね。」
(これは本当に?····)
「えーと、年齢17、職業 自宅警備員······ニートですね。特技 気に入らないアニメをネットのスレッドで侮辱 と、こんなところですね。す、すごい···!これこそ「THE 転生するしか価値ない奴」!!」
無性にイラつくが、これは間違いない······!!異世界転生!!
「それでは署名をお願いします。」
おお、そうだよな!勇者契約とか必要だよな!
「あの、えと、そ、その、初期装備とかっ······て、どんなのなんですか?」
ワクワクしながら俺はきいた。異世界生活が楽しみでしょうがない。ボスモンスターとか倒したらちやほやされんのかな?頑張らないと!!
「は?初期装備?何いってんですか?あぁ、勇者にでもなるつもりだったんですか?あなた面白いですね(笑)」
······え?
「え?勇者になれないの?」
「少し考えればわかるでしょ。ただのニートが魔物倒そうなんて、おこがましいでしょ。運動神経も中の下。
あのね、なめないでもらえます?あなたの想像している世界とは違うんですよ。それにこの紙は農民の土地の税金契約ですし、いいですよ?働く気がないなら。署名しなくても。勇者になりたいんなら修行しろよ」
·················ちょっと、泣きそう。何かすごい言われたし、最後冷たく言われたし。くそっ!!くそっ!!次ここ来た時には勇者になってコイツに、「勇樹しゅぁぁん、あの時はあんなこといってぇしゅみましぇんでしたぁぁぁ」って言わせてやる······!待ってろくそっ!!
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
「あら、行っちゃった。メンタルも雑魚、と。」
読んでいただきありがとうございました。「とある人々の存在意義」もできれば多く投稿できるように頑張ります。ぜひ感想を書いて下さい。