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サクラコ、料理人になる

 和也は、魔法使いになれなかった哀れな私にとあるページを見せてきた。

 そのページには……。

「料理人……?」

「そう、桜子の料理の腕前はなかなかのものだった。これなら、いけるんじゃないか?」

「そういえば……。私ね、昨日マリーさんの手料理食べたとき、変だった。知らない食材の知識をなぜか知っていて、一口食べるだけで、何が入っていて、どういう風に調理されていたのかが分かったの」

「やっぱり! それ料理人スキルだ。ほら、このページにも書いてある。特に呪文がなくても常時発動している技能スキルだ」


 和也にそう言われて本を見ると確かに、昨日マリーさんの料理を食べたときに起こった現象についてのことが書かれていた。


 料理人か……。いいかもしれない。料理は好きだし、それになにより、料理のできる女の子は、きっとこの世界でも、モテ女子のはずだ……!


 でも、料理人って、冒険者に必要なの?

 私は、そのページの見出しを改めて読む。


『料理人がいれば、パーティーの健康管理はバッチリ! パーティーを支える料理人! 料理人スキルを磨いていけば、不思議な効果をもつ料理も作れる!?』


 へー。料理人スキルが高いと、体力をつけたり、攻撃力をあげたり出来る料理を作れるらしい。意外といい、かも?


「桜子、ここ見て。料理人用の魔法の呪文がある。ちょっと唱えてみれば」

「あっ! 本当だ! えーっと、この呪文を唱えると、対象の食材情報を閲覧することが出来る……? どういうことだろう。ちょっと、唱えてみるね」

 私はそう言ってから改めて呪文をみた。


「ジュージューボコボコトントントン ジュージューボコボコトントントン」


 なんか、魔法使いの呪文と雰囲気が違う感じなんだね……。

 とか思っていたら、脳に直接響くように不思議な声が聞こえてきた。


『初心者のための冒険者のしおりは、食材ではありません』


 えっと思って、手元を見れば冒険者のしおりをもっている手が光っている。これが、魔法?


「和也! 私この魔法使えた! この本は食材じゃないって声が聞こえた!」

 初めての魔法的な感覚に興奮して、和也の肩を掴んでそういうと、和也は楽しそうな顔をして笑った。


「そう、よかったじゃん。桜子のジョブは料理人ってことで、いい?」

「うん! そうする! ねえ、和也はどんなジョブにするの? フローチャートのとおりだと……」

「鍵師とか鑑定士とかだったな。見てみる」


 と言って和也はページをめくる。

 めくったページは鍵師のページだった。

 鍵師とは、ダンジョンに眠っている宝箱の鍵を開けたり、罠を解除したりすることが得意なジョブで、パーティーに一人は欠かせない需要の多いジョブらしい。

 そして、初級スキル物体感知魔法の呪文と紹介されている文章が載っている。


「この呪文というものを読んでスキルが発動すれば、鍵師としては問題ないってことか……。えーと、『我らが暴くまで、そこには無限の可能性があった』……なんか、恥ずかしいな」

「ねえ、和也の手、光ってるよ!」

「ああ、どうやら物体感知魔法の呪文が使えたらしい」

「へえ! 魔法!? すごい!どんな感じ?」

「脳内に、『この本(初心者のための冒険者のしおり)は、40年前に製造されたものである。多少の使用感あり。本屋に売れば3000ガウルはするだろう』っていう声が響いた」

なにそれ、すごい! ちょっとどうでもいいような情報だったし、これが魔物退治のパーティーに必要な技術なのかはわからないけれど、すごい!

「他には? 他にもなにか載ってる?」

 私が急かすようにゆすると、和也も楽しそうにページを見る。


「鍵師のページに乗ってる呪文はこれだけみたいだ。あ、でもなんか補足説明みたいなのがあるな。『スキル魔法意外にも、常時スキルとして、忍び足のスキル、ピッキングのスキル、聴覚集中スキルを持っている者は鍵師に向いている』か。つまりなにか呪文を唱えて発動する魔法みたいなものとは別に、やっぱり技能的なものが必要ってことだな」


「ちょっと、まって、私も、感知魔法唱えてみたい! えーっと、『我らが暴くまで、そこには無限の可能性があった』。……。何も反応しない」

「桜子は適性がなかったんだろう。他のページも見てみるか。鑑定士のページにも、また同じ物体感知魔法が載ってるな。商人のページも同じだ。あ、でも違う呪文もある。というか、この本に載ってる呪文一覧を読んで何が唱えられるかどうか確認したほうが早いんじゃないか?」


 ということで、私と和也は巻末の呪文一覧を見て、使える呪文と使えない呪文を選別した。

 まあ、この本に載っている初級魔法っていうのは、10個ぐらいしかなかったんだけどね。


 どうやら、本来呪文は、呪文を作った人からお金を払って教えてもらったり、一族にのみ受け継がれたりという感じで秘匿になってることが多いらしい。

 でもこの本に載っている初級魔法は、昔からある呪文ってことで誰でも知ることができる代物みたい。つまり著作権フリー呪文。

 本に載っているその著作権フリー呪文をとりあえず唱えてみたけれど、私は残念ながら、料理人用の魔法しか使えないみたいだった……。

 でも一つでも使えただけ良かったかもしれない。


 和也は、物体感知魔法と地図作成魔法、魔物判別魔法、収納魔法が唱えられることがわかった。

 地図作成魔法は、手元になんと周辺の情報が記された地図が出てくるすぐれもの。

 そして魔物判別魔法。本の説明によると、魔物には倒すと魔石になる魔物と、そのまま死体となるものの2種類がいて、初級の魔物判別魔法だと目の前の魔物がどちらの種類の魔物かわかるらしい。


 ちなみに死ぬと魔石になる魔物は自然発生する魔物で、死ぬと死体になるタイプの魔物は、繁殖して増えた魔物ということらしい。自然発生する魔物って……なんか不思議。

 そして収納魔法は、カバンの中を広くするとっても便利な魔法だった。


「なんとなく、魔法のことがわかってきたな。こうなると、お金をはたいても自分のスキルがどんな感じなのかは気になるけど……。とりあえず俺のジョブは商人にする。他のジョブだと、ピッキングとか忍び足とか、技能スキルの占める割合が多いしな」

「私は、料理人ね! ふふ、あ、そういえばこの本に、料理人は、フライパンとかの調理するための料理器具が必要不可欠だって書いてある」

 そうだよね、確かに、冒険にでて、外で調理するってなると調理器具が必要だ。


「ギルドの帰りに見てみるか」

「うん! じゃあ、そうと決まれば早速いこ! 冒険者ギルドに!」

 私と和也はジャブリンさんにジョブを決めたことを伝えて、そのままギルドへと向かった。

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