表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/29

サクラコ、ジョブを決める


思ったよりも話が進まなくて全然レシピ的なものが出てこないので、

タイトル変更しました…!

あとあらすじにも書いているイケメン剣士がいるパーティーに所属する日は、いつなのだろうか…



「今日は、どこかに行くつもりなのかい?」

朝起きて身支度をしていると、ジャブリンさんに声をかけられた。

 和也がいつものよそゆきの笑みを浮かべる。


「ええ、冒険者ギルドに仕事を探しに行こうと思っています」

「へえ、冒険者ギルド! となると、冒険者ってわけだ。俺もカミさんもらうまでは、ローブ作りの材料を求めて冒険に出かけたってもんよ! だが、あんまり強そうには見えないな。主なジョブはなんだ?」

「ジョブ……?」

 和也とご主人の会話でまた進出単語が出てきたので、思わず口に出して首をひねる。

「ジョブを知らんのかい? 本当に大層な田舎からきたんだなぁ。ジョブっていうのは、いわゆるあれだ、役割みたいなもんだ。外には魔物がウジャウジャいるから、大抵パーティーを組む。そのパーティー間で役割を分けるんだ。剣士や武術家、盾術家、商人に鑑定士、罠師に薬師、魔術師に治癒術師、中には踊り子とか吟遊詩人、料理人なんて珍しいジョブで冒険するやつもいる」

 ヘー……。

 役割分担。みんなで協力しながら強い魔物を倒すってことか! それに、さっき魔法使いって単語があった。

 魔法ってやっぱり、あの魔法だよね!

 テデイベアの神様も魔法がある世界だって言っていたし。

 魔法か……ちょっとあこがれちゃうなぁ。


「いろいろあるんですね。そんなにあると、何が自分に合っているのか……」

「まあ、大人しく自分が持ってるスキルにあったジョブを選んだほうがいい。パーティー組むときにも、ジョブだけじゃなくてスキルも確認されるから、嘘をつけなくもないが命に関わるから正直に自分にあったものを選択したほうがいいだろうな」

「自分が持ってるスキル、そのスキルにあったジョブ……」

なんだか難しい気がする。そもそも自分がどんなスキルがあるのかわからないし。どのスキルがどのジョブに合ってるのかだって分からない。

隣の和也を見れば、少し考えるように斜め下あたりを見ている。


「お嬢ちゃん、そんな難しい顔するなって! 別に自分のスキルを正確に確認しなくちゃいけないってわけじゃないさ! 自分のスキルを正確に確認するには、神殿で大金積まなくちゃならないから、大抵の冒険者は正確にスキルを把握してるわけじゃない。そうだ。俺が昔お世話になった冒険者のしおりっていう本があったはずだ。

あれを見れば自分の適正ジョブがわかるってもんよ。ちょっと待ってろよ……」


 と言って、ジャブリンさんは、奥の棚をこれじゃないこれでもないと漁り始めた。


「お、あったあった」

 と言って、一つの薄い本を私達に持ってきてくれた。

 絵本みたいにカラフルな絵が書いてあって、「初心者のための冒険者のしおり」と書かれている。


「ま、ギルドに行く前に、これでも読んで、だいたいの方向性ぐらいは決めておいたほうがいいだろう。それじゃあ、俺は、そろそろ店にでないといけねぇからな。ゆっくりしていてくれ」

 ジョブりんさんはそう言うと、お店の方へと言ってしまった。

 部屋には、私と和也だけが残される。

 

「行っちゃったな。よく知らない俺たちだけ残して……無用心だな。まあ、信用してくれるってことなんだろうけど……」

 と和也は呆れたように、でもちょっと嬉しそうにそう言うと、さっきジャブリンさんにもらった本をペラリとめくった。

 私も和也の横から覗き込む。


 なになに?

 冒険者の心得。

 常に危険と隣り合わせの冒険者。大事なのは仲間との絆で……。

 という感じで、話は続き、さっきジャブリンさんから聞いたジョブやスキルの話が記載されている。

 そして、数ページめくると、「ジョブにお悩みのあなた! これであなたの適正ジョブがすぐわかる! 職業適性チェックフローチャート!」と書かれたページにたどり着いた。


「なんか、どの世界でも、こういうのってあるんだな……」

 と若干呆れてつぶやいた和也は、最初の質問から指をたどっていく。


 力に自信はあるか。

 攻撃魔法が使えるか

 手先が器用か。

 素早さに自信があるか。

 剣を使えるか。

 目はいいか。

 弓は使えるか。

 薬についての知識があるか。


 などなど、いろいろな質問に答えた和也のたどり着いた適性ジョブは……。


「えっと、何何? 『器用で頭のいいあなたには、繊細な仕事がぴったり! おすすめのジョブは、鍵師、アサシン、商人、鑑定士! パーティーの補助が大得意! それぞれのジョブのページで、初級魔法やスキルが使えるかどうか試してみよう!』か……なんか、地味だね」


 私がそう言うと、「うるさい」と言って、こっちを見て、本を差し出した。

「桜子もやるだろ?」

「うん! 私、こういうの好き!」

「知ってる」


 和也から本をもらって、私もフローチャートを指でたどっていく。


「えーっと、まずは、力には自信があるか……か。自信はない、と」

「ちょっと待った」

 まずひとまず進めたところで早速和也が止めに入った。

 一体なんだというのだろう。


「どうしたの?」

「どうしたのじゃなくて、いや、おかしいでしょ」

「やだ、和也、忘れたの? 私この世界ではか弱い女の子になったのよ!」

「それ、やっぱり本気だったんだ」

「うん! 当然! か弱い女の子になって、和也に格好良い義理のお兄ちゃん作ってあげるからね!」

「死ぬほどいらない」


 一気に不機嫌になった和也はそれだけ言うと、ため息を吐いた。

「もう、いいや。とりあえ桜子が思うようにフローチャート進めて」

「うん!」

 私は気を取り直して、フローチャートを進めていく。

 攻撃魔法が使えるか、か。魔法とかなんだか可愛いイメージがあるし、これは使えるってことにしておこう、うん。

 それで、えっと、剣は使えない、体力には自信がない……。よし。


「和也、できたよ! か弱い私の適正ジョブが!」

「適正ジョブっていうか、ただの桜子の理想のジョブだろ。で? なんだったの?」

「魔法使いだって……!」

 嬉しくって、ニマニマして答えると、和也が残念なものを見るような目で私をみた。


「そう、よかったね。それじゃあ、ジョブの詳細ページを見ようか」

 和也は淡々とそう言って、ページをめくる。

『力も体力も自信がないからって、冒険者あきらめてない? 大丈夫あなたには魔法がある! パーティーの攻撃の要、魔法使い!』と書かれていた。

 精神力を使って、魔法を放つことが出来るらしい。

 すごい、ワクワクする。

 すると、和也がページの一番下の方を指さした。


「桜子、これが呪文らしい。えーっと、著作権フリーの初級の魔法で、この呪文を読んで魔法が発動したら、魔法使いの仲間入り、ね。指先に炎を灯す魔法? ていうか魔法の呪文に著作権とかあるんだ……」

「指先に炎! すごいね、手品みたい! よし、唱えてみるね」

 私はそう言って深呼吸した。なんか緊張してきた。

 初級の呪文は……。


「暁に勝るものはなし!」


 あれ? 指に火がつかない。

「……暁に勝るものは、なし」

 二回唱えてみたけれど、やっぱり火は灯らなかった。

 そ、そんなはずは、ないんだけど。私の適正ジョブのはずなんだけど。


「ダメみたいだな。そんなに落ち込むなよ。火の魔法は使えなくても違う属性の魔法なら使えたりもするらしいし……っておい! 何やってるんだよ!」


 和也が私の指先を見て驚いたような声をあげたけれども、私の指は止まらない。

 そう、要は火が灯ればいいのだ。なら、こうやって指をこすり合わせてその摩擦で火をつければ問題ない……。

 スリスリスリスリ……あ、煙が!


「やめろ、桜子! そんな魔法(物理)があるか!」

 和也が、擦り合う私の指に手をおいてきたので、やむなく指を擦り合わせるのをやめた。だって、和也が火傷しちゃう。


「でも、魔法、使いたかった……」

「だから、別に魔法は火の魔法だけじゃないから。ほら、他にも、水とか風とかあるだろ?……だけど、あんま期待するなよ。もしかしたら俺たちは魔法が使えない可能性がある。ぬいぐるみが、もともとの経験値をもとにスキルをフルとか言っていたし、魔法なんかなかった世界から来た俺たちには厳しいかもしれない」

 と、和也が言うので、あまり期待しないようにそこに書かれてる著作権フリーの魔法の呪文を唱えてみた。


 結果、魔法使いの初級魔法はどれも発動しなかった……。

 それは和也も一緒で、二人共、魔法使いとしての素質はないみたい。悲しい。


 落ち込んでいる私に、和也が困ったような顔をして笑った。


「そんなに落ち込むなよ。他にも桜子にある職業はあるさ。武闘家とか」

「それはダメ。私は、か弱い女の子なのよ!」

 私がそう主張すると、和也ははいはいと言いながら『初心者のための冒険者のしおり』をペラペラとめくって、一つのページを私に示してきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最後まで面白かったですけれど、特に「ジョブりんさん」が面白かったです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ