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サクラコ、勘ぐる

 ガンジさんから採取できる植物を教えてもらいつつ、ゆっくりと森を進む。

 先頭のルークさんが魔物に警戒しながら進んでくれているおかげで、私や和也は結構暢気に森を歩くことができた。

 和也が、ガンジさんから、新しい魔法を教えてもらっていた。

 魔物判別魔法よりも上級の魔法である魔物分析魔法という奴だ。

 それを唱えると魔物の情報が分かるらしい。

 それと植物鑑定魔法という、植物の情報が分かる魔法も教えてもらっていた。

 うらやましい。

 私も魔法を教えてもらったけれど、ガンジさんが教えられる魔法は私には習得できなかった……。


 和也は、魔物が出てくると魔物分析魔法を使ったり、見慣れない植物をみれば植物鑑定魔法をつかったりと、なんか鑑定系魔法を使って楽しんでいる。

 うらやましい。


 今も小さい紫の花をつけた植物に和也が植物鑑定魔法を唱えていた。

 すると、驚いた顔をしてから私のほうに笑顔を向ける。

「これ、葛だ」


 クズ? 私は和也がさっき魔法を唱えた植物に目を向ける。

 

「あ!ほんとだ!」


 葛だ! 前の世界にもあった植物の姿になんだかほっこりする。

 それに葛はなかなか思い出深い植物。

 私と和也はお父さんに連れられてよく山にキャンプにいっていたのだけど、サバイバル好きのお父さんは食べ物も現地調達するのが好きで、全草食べれる葛にはとってもお世話になった。


 花も葉っぱも食べれるし、根からは葛粉を作れる。

 ガンジさんが教えてくれるギルドで売ることができる植物は、さっきから前の世界では見たことも聞いたこともないようなものばかり。

 大きく振ると発火する発火草、簡単な怪我なら、揉み込んだ草を充てるだけで傷を治してしまう治癒草、煮汁を飲むと体内の毒を流してくれる毒消し草。花に息を吹きかけると灯りになる灯火草。


 さっきからそんな不思議な草ばかり採取してる。

 だから前の世界でも見たことがあるものを見ると、なんだかほっとする。


「おっ! 二人も葛は知ってるか」

 ガンジさんが、葛をみて興奮してる私たちにそう声をかけかけてきた。ガンジさんも知ってるってことは、葛は売れたりするんだろうか。

「これも売ればお金になるんですか?」


「いんや、まあ、食べれなくもないから、引き取ってくれるところはあるが、あんまり金にはならない。どこにでも生えてるしな」


「そうなんだ」

 なんだか悲しい……。


「ガンジさん、手に持ってる薬草、リュックにしまいます?」

 和也が腕にたくさん薬草を抱えたガンジさんにそう声をかけた。


「悪いな、入れてもらっていいか?」

「どうぞ。まだ容量たくさんあるんで」

「ほんとお前の収納魔法便利だよなぁ。ほぼ無限みたいなもんだし。お前いると旅が楽だよ。マジで」


 そう言ってガンジさんは、和也に薬草の束を渡す。

 ものすごい収納魔法持ちと分かってから、和也は荷物持ち。

 和也も特に重くなったりもしないので、かなり優秀な荷物持ち係だ。


「どうだ、俺が教えた魔法の使い心地」

「ありがたく使わせてもらってますよ。でも、いいんですか? 魔法の呪文はそんなに簡単に教えていいもんじゃないじゃ?」

「まあ、普通ならお金取るかもな。でもお前は同じパーティーの仲間だし、それに、あの程度の魔法なら別に」

「その口ぶりだと、他にも魔法知ってるんですか?」

 和也がそういうとガンジさんがニヤリと笑った。


「こればっかりは教えられないな。ま、お前がずっとこのパーティーにいたいって言ってくれるんなら、教えなくもないけど?」

「じゃあ、いいです」

「お前即答過ぎるだろ。もうちょっと迷えよ」

 そう言ってガンジさんは笑って、和也の肩をガシガシ叩いた。

 なんだか、仲の良い二人だ。


 ……。


 和也、もしかして……と私が妄想しかけたときにルークさんの声が聞こえた。


「ガンジさん! すみません、道が二手に分かれてて、どっちに進むか相談したいんですけど」

 どうやら先頭のルークさんから、ガンジさんに相談事があるみたいで、ガンジさんは「はいよ」と軽く返事をして、ルークさんの方に駆け寄っていった。


「和也、ガンジさんと仲よさそうだね」

 ガンジさんがルークさんのところに行った後に、和也の隣で歩きながらそう声をかけると、和也が眉をよせた。

「何その目。変な誤解してないよね?」


「べ、別に変な誤解だなんて……。私、別にそういうのに偏見はないの。和也が幸せなら、いいのよ!」


「ねえ、その誤解、ほんとやめて。ガンジさんは俺のジョブと近いことができるから、色々教わってるだけだ」


 そう言ってゲンナリした様子の和也は、うな垂れた。


「あらぁ、サクラコちゃんは、まだ元気そうねぇ……。はあ、体力があるのは良いことだわぁ。……羨ましい」

 そう言って、少し汗ばんでいるレイラさんも会話に混ざってきた。

 やっぱり魔法使いの人って、体力がない感じなのかな。

 というか、レイラさん、かなり顔赤い。

 これもお酒のせい?

 相当疲れてるんじゃない、かな?

 息も荒いし……。


「レイラさん、大丈夫ですか? なんか顔も赤いですし、息遣いが荒いような……」

 私がそう言うや言わないかのうちに、ふらっとレイラさんが、倒れてきたので、慌てて下から支えて、肩を抱く。


 ……レイラさんの身体、ものすごく熱い。


「レイラさん! 大丈夫ですか!?」

私がレイラさんを抱えながらそう声をかけかけてもレイラさんは目を覚まさない。

「母上!?」

 突然倒れてたレイラさんに、先頭をあるいていたルークさんが心配そうに駆け寄ってきた。レイラさんに返事はない。苦しそうな息遣いしか聞こえない。

「サクラコさん、母上は一体!?」

「わからない、突然倒れて。それに熱がすごいの!」


 私がそいうと、モロゾフさんが、レイラさんの身体をお姫様だっこで抱え、「ここから遠くない場所に川がある。そこまで運んで寝かせよう」と言って先に進んでいく。

 心配そうに顔を歪めるルークさんもモロゾフさんに続いた。


「レイラ様、やはり無理してたんだ………俺が気付かなくちゃいけなかったのに」

 後ろから、そう呟くガンジさんの声が聞こえて振り返ると、険しく眉を寄せてモロゾフさんの背中を見ていたガンジさんが、駆け足で後に続いた。


 なんだか、私と和也には踏み込めないただならぬ雰囲気。


「ガンジさん、いつもなら、レイラさんのこと、様付けで呼ばないのに……」

 和也がボソッと言ったその言葉に、私も頷いた。

 私と和也がにも事情があるように、どうやらレイラさんにも事情があるのかもしれない。

 今はそれよりも、レイラさんの体調が気になる。

 私と和也も慌ててモロゾフさんさんの後についていった。




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