サクラコ、買い出しをする
それから、レイラさん達から防具のことや武器のことの話を聞いて、明日の明朝再び集合することを約束した。
「明日から、とうとう冒険なんだね」
私は今日レイラさんに聞いた話を思い出しながら、そう呟くと隣にいた和也が頷いた。
「ああ、そうだな。明日のために、とりあえず桜子の料理人用の調理道具を買わないと……何かいいのあるか?」
レイラさん達と別れて、和也と二人で市場に繰り出した。
早速お外に出るので私の調理器具は必要だった。
しばらく市場を回って金物屋さんを見つけると、色々手に取ってみてみる。
異世界でも調理器具は前の世界と一緒らしい。おなじみの形をしたお鍋やフライパンなんかがいっぱい並んでる。
オウルデーモンを倒すために、数日は野宿をするらしいので、その際は私の料理人スキルを発揮することになる。
とはいえ実際この世界に来て料理したことがないので、かなり心配だけど……。
そういえば、明日から冒険に出るってことは、ジャブリンさん達としばらくお別れだ。
今までお世話になったお礼に何かしたい。
「ねえ、和也、今夜の料理、私作ってみてもいい? ジャブリンさん達に食べてもらいたいなって……。それにこの世界でちゃんと料理ができるか試したいし」
「ああ、いいんじゃないか。俺も久しぶりに、桜子の手料理食べたいし」
「じゃあ、このあと食材も買いにいこうね」
「そうだな。じゃあ、さっさと、調理道具買おう。俺は、背中に背負って動けるこの大きな中華鍋みたいなのがいいと思うんだけど。お玉のセットだし」
「うん、和也が良いっていうならそれにする! お値段大丈夫? 5000ガウルもするよ。高くないかな?」
「そこは俺に任せていいよ」
そう言って、和也は、金物屋のご主人と少し会話をして5000ガウルを3000ガウルに負けてもらった上に、たくさんの食器類までおまけしてもらった……。和也、すごい。
「これって、商人スキルのおかげなの?」
「多分ね」
と言って和也は涼しい顔をしていた。
商人スキル、便利。
調理器具も手に入ったので、明日から使う保存食系と今日の夕食の材料を市場に買いに来た。
食材を買うためのガウルは、実はレイラさんからいくらかガウルをもらっているので、結構あるのだ。
塩と干し野菜と、ベーコン、チーズ、干してるキノコ類や干し魚も買っとこうかな。
この世界の食材は、前の世界の食材とほとんど一緒。ジャガイモとか人参とか玉ねぎとかりんごとか!
たまに見たこともないようなものがあるけれど、でもだいたいわかるから調理するときとか献立を考えるのは前の世界の知識でいけそうでホッと胸をなでおろした。
知ってる食材を中心に、手に取っていくとあれもこれも欲しくなる。
あ、でも、あんまり沢山買いすぎると、カバンに入らないかな?
「あんまり、買いすぎるとカバンに入らないよね? かさばらないものにしないと」
「いや、平気だと思う。今朝自分のカバンに収納魔法を試してみたんだけど」
と言って和也は背負っていたリュックを、おろしてカバンの紐を開けると私に中を見せてきた。
あれ? なんか、すごい。すごい広いっていうか、深い?
「収納魔法でカバンの中身を広くしたんだ。かなり沢山入る。だから量とかは気にしなくてもいい」
「収納魔法すごーい。でも、重いんじゃないの?」
「いや、重さも大丈夫みたいだ。いくら入れても、変らない」
「凄い! それじゃあどんどん買っちゃお!」
すごい。和也がどんどんすごく便利な存在になっていく。そのうちドラ○もん的存在になりそう……。
あ!
「もしかして、冷蔵保存とかもできるのかな? 生ものとかでも、持っていけちゃう!?」
「いや、多分それは無理」
あ、そうなんだ。さすがのドラえ○ん男子でも、できることとできないことがあるのね。
でも、沢山入るリュックってだけで、便利なことに変わりなし!
私は再び食材を買うために商品に向き直った。
それからしばらく物色して、明日からの冒険のための保存食と今日ジャブリン達に振舞う料理の材料を買い込んだ。
ジャブリンさん夫婦の家に着くと、お二人そろっていたので、明日から私たちがしばらく冒険に出るのでいなくなるということを伝える。
お二人は、寂しそうにしてくれて、私が、二人のために手料理を振る舞いたいと言ったら、『そんなの気にしなくてもいいのに』とは言いつつも喜んでくれた。
そして、マリーさんの許可をもらって、台所に立たせてもらう。
目の前には、たくさんのジャガイモ。
マリーさんから、ジャガイモを使っておくれ! といって渡されたのだ。
ジャガイモ、たくさん。
何を、作ろうかな。
ジャガイモ……。
よし。
メニューは決まった。