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サクラコ、ビキニの秘密を知る

 レイラさんが、ルークさんの母。


 私は呆然としながらも改めてレイラさんを見る。

 綺麗でハリのある肌、ぷるんぷるんの肉感のある体つき、顔だって、シワのようなものはないし……どう頑張っても20代の女性にしか見えない。ルークさんが19歳ということだから、えっと少なくとも30は超えているんだよね?


 異世界の女性はこんなものなのだろうか……。


 呆然としている私と和也に色っぽい笑みを浮かべたレイラさんは口を開いた。


「実はね、私たち、仲間になってくれるパーティーメンバーをちょうど探していたの。でも、なかなか信用できる人を見つけられなくてね。そしたら、あのルークがかわいい子を見つけてきてくれたってわけ」


「それだとますます、意味が分かりません。私とレイラさん達は初対面でした。どうしてそれで、仲間にしようだなんて思ったんですか?」

 相変わらず和也が食って掛かるようにそう質問すると、レイラさんは余裕の笑みを浮かべた。


「ルークが気に入った人なら悪い人じゃないって思ったのよ。ルークは特別なスキルを持って生まれてきているから……。そのルークが選んだのなら大丈夫って思ったの」

 

 ルークさんに、特別なスキル?

 私はそのことが気になって首をかしげると、レイラさんは「ごめんなさいね。ルークのスキルについては、まだ言うことができないの。本当に、特別なのよ。全部をまだ話せない状態で申し訳ないけれど、それでもパーティーに入ってくれる? こちらとしては大歓迎なのだけど」と答えて色っぽい笑顔を向けてきた。

 ルークさんの特別なスキル、なんだろうと思いながら、和也の方へと視線を向けた。


 和也は、渋い顔をしている。やっぱりパーティー組むの、いやなのかな。

 そしておもむろに和也は口を開いた。


「……わかりました。パーティーには入ります。ただ、こちらとしては、ずっとレイラさんのパーティーに入るつもりはない、です。それでもいいですか? もともとギルドで仕事をするのが、初めてだから、最初はベテランの人と一緒にいたいと思っただけです。つまり慣れてきたら、抜ける可能性があります。それでもいいなら、このまま桜子と一緒にパーティーに入ります」

「ええいいわよ。私としては、長くいてもらいたいけれど、それはこっちの努力次第ってことね。あなたたちが、ずっといたいって思えるようなパーティーなら問題ないでしょう? 私にはその自信があるわ」


 レイラさんはそう言って自信に満ちた顔で微笑んだ。

 和也もおもむろに頷く。

 どうやら、このままルークさんのいるパーティーに入れるみたい。

 ちょっと内心ほっとした。


「交渉成立ね。それじゃあ、さっそくクエストの話をしましょう」

 パーティー加入の意思を確認しあうと、レイラさんがそう切り出した。

「もう受けるクエストは決まっているんですか?」

「ええ、もう受注してきているわ。私たちが受けたのは、『オウルデーモン』の討伐よ。このクエストのためにちょうど支援系のジョブを持っている人を探していたの」


「オウルデーモン? あれ、どこかで聞いたことがある」

  私がそう言うと、和也も思い当たる節があるようで、頷いた。

「それって最近町の近くに現れたというモンスターのことですよね?」

 和也がそう言ってくれて思いだした。確かこの街に入るときに門番の人がそのモンスターの話をしていた。近くにオウルデーモンの目撃情報があったから、警戒しているとかなんとか。


「そう、今は町中がその話で持ちきりだものね。オウルデーモンは、B級、大きさによってはA級にも匹敵するモンスターよ。こんな田舎の町、襲われでもしたら、たまったものじゃないわ。だから、襲われる前に私たちで倒すの」

「……ちなみに、オウルデーモンの姿ってどんな感じなんですか?」

 と和也が深刻そうな顔で聞いた。


「梟の顔に、人間のような肢体。かなり大きわ」

 レイラさんがそう言うと、和也はちょっと困ったような顔をして、私をちらりと見る。


 なんだろう。あの目線、何か言いたいことでもあるのだろうか……。

 フクロウの顔に、人間のような肢体? そういえばこの世界に飛ばされて直ぐに、そのようなモンスターに遭遇したけど……でも、あれははっきり言って雑魚だった覚えがある。だってワンパンで終わってしまった。

 わざわざ町全体で警戒するようなモンスターじゃない。うん。多分私が倒したのはオウルデーモンの使いっぱしりみたいなものだと思う。


 多分和也はあれがオウルデーモンなんじゃないかと疑ってるんだと思うから、私は首を振って、「オウルデーモンって、強そうだね、和也」と暗に、あれは違うよ、ということを教えてあげた。


 そうしたら和也は何故かため息を吐いて、レイラさんに向き直った。

 なんだろうか、あの態度は。


「オウルデーモンを倒しに行くっていうのは、町の外にでて探しに行くってことですよね? 見つからなかった場合ってどうなるんですか?」


「その場合は、残念ながらギルドからの報酬はないわね。でも外に出れば他の魔物が狩れるし、貴重で高く売れる植物だって私たちは知っているから、採集もできる。まったくの無駄骨で終わるわけじゃないわ。むしろ、色々ギルドの仕事を覚えたい和也君たちにとっては、わざわざ危険なオウルデーモンに遭遇するよりも、そういった採集や外での生活の仕方を学べる方が得るものが多いんじゃないかしら」

 そうレイラさんに言われて和也は少し考えるようなそぶりをして口を開く、


「そうですね。分かりました。是非、連れて行ってください。今から行くんですか?」

「いいえ、出発は明朝よ。通常のクエストは一つのクエストに1パーティーしか受けられないのだけど、これは町の緊急事態だから、ほかの冒険者も一緒に受けられる珍しいクエストなの。この町の冒険者が、明日一斉にオウルデーモンを倒すために出発することになってる。だから準備は今日のうちに済ませておいてね! 防具もできれば防御力のあるものがいいけど、ガウルが足りないならそのままでもいいわ。戦闘員でもないしね」

 レイラさんにそう言われて、私たちは、頷く。


 そして、ふと隣を見ると和也がものすごく真剣な顔をしていた。

 というか、何か迷ってる、みたいな……。


「和也……?」

 私が思わず声を書けると、和也は私の目を見て、そして覚悟を決めたようで口を開いた。


「レ、レイラさん、そ、その格好は……その、防御力とかは……?」

 和也がレイラさんの服をさしながら小さな声で問いかけた。


 どうやら、和也は、レイラさんの格好が気になって仕方がなかったようだ。

 わたしもちょっと、レイラさんの格好については聞きたかったけれど、聞けなかった。

 それを言ってのけた和也に目を見張る。

 我が弟は強靭なメンタルをお持ちのようだ。すごい。

 私が関心していると、レイラさんが胸を寄せるようにして、腕を組んだ。


「ああん、これ? 確かに物理防御力は全然ないけど、魔法防御力がすっごくたかいの。それに魔力も上がるしね。私は魔法使いで後方支援が多いから魔法使い向けの装備ね」


 と言ってウィンクをした。

 どうやら、あの恰好には意味があるらしい。


 気になる真相を聞けて、納得した様子の和也は何やら思案気に腕を組んだ。


「ということは、この世界では合法的に普段ビキニを着せることができるってことか……?」

 と、和也がボソってつぶやいた。


 和也。たぶん誰にも聞こえてないと思ってるかもしれないけど、私の耳には聞こえてるからね。


 まったく、和也ってば、ビキニに反応するなんて年頃だなぁ……と思って、私は気づいてしまった。


 だって、和也が好きなのは男、同性が好きなはずだ。

 となると、ビキニを着せたい相手というのは……男性?


 私は筋肉ムキムキの渡辺さん(56歳 独身)がビキニを着ている姿を想像して、震えた。




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