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サクラコ、顔が熱くなる

 美女にパーティーの加入を勧められ、和也は拒否をした。

 しかし、私がルークさん(イケメン)がいるパーティーだから、ぜひ入りたいって言って、渋る和也にモノすっごくお願いをして、結局、私と和也は試しに黄昏の獅子パーティーに入れてもらうことになった。


 ありがとう、和也。私のわがまま聞いてくれてありがとう。


 あの美女の女の人は、レイラさんっていうらしく、黄昏の獅子パーティーには他にも人がいるらしいのだけど挨拶は明日ってことになった。


 現在、レイラさんとルークさんとは一旦別れて、私は不機嫌な和也と一緒に街を少し探索して、カバンを購入してからジャブリンさんの家に戻ってきて今に至る。


 ジャブリンさんとマリーさんに今日起こった出来事を夕食を囲みながら、話してみるとかなり驚かれた。


「おいおい、本当か? 黄昏の獅子って言えば、最近この町にきたAクラス冒険者パーティーじゃないか!」

「Aクラス……?」

「Aクラスパーティーっていうのは、Aクラスの魔物を倒すことのできるパーティーだ。つまり強いってことだよ。お嬢ちゃん達は運がいいな! そんないいパーティーと組めるなんてラッキーだよ」

「そんなにすごい人達なんですね!それに、ルークっていう人が、その、すっごくかっこいいんです」

 私がそう言いながら、ルークさんの爽やかな笑顔を思い出して思わず顔が熱くなった。


「ルーク? 金獅子のルークか?」

 ジャブリンさんがそう言って身を乗り出してくるので、頷いた。

「金獅子、そういえばそういう風に呼ばれていたような気がします。有名なんですか?」


「かなり強い剣士らしい。ただ、あまりにも強すぎて、すぐに使う武器が壊れてしまうらしく、強力な聖剣を探してるって噂だ。かっこいいよなぁ。俺は、金獅子のルークは選ばれし勇者なんじゃないかと思ってるんだ」


「勇者に聖剣、ですか」

 驚いたようにそういった和也にジャブリンさんは重々しく頷いた。


「おおよ。今でこそ大人しくしているが、魔王がとうとう動き始めたっていう噂も聞く。黄昏の獅子パーティーに入るんだったら、もしかしたら魔王討伐に駆り出されるかもしれないな」


「魔王……」

 なんていうか物語にしか聞いたことないような話が出てきて、和也と思わず目があった。

 この世界にはそんなものもいるのか。

 それから、ジャブリンさんに、20年前に魔王の力を退けた勇者の話や、魔王復活の兆しなんかを聞いた。

 なんというか、あまりにも馴染みのない話でちょっとびっくりして信じられない。でもジャブリンさんは本気で語ってたし、そういうものがやっぱりいるのかもしれない。それに実際この世界では魔物だっているんだもん。

 魔王がいて当たり前なのかも。


 夕食を食べ終わった私と和也は、昨日と同じ部屋に向かった。

 今日も和也は床に寝ると言ってきかないので、私はベッドに腰掛ける。


 和也は床に座って、今日買ったカバンに明日必要そうなものを詰めていた。

 そんな和也の様子をぼんやり見ながら、今日のことを思い出す。

 金獅子のパーティーに入る時、和也はすごく渋った。

 結局は、私とレイラさんの勢いに負けたみたいに了承してくれたけれど……。


「和也、今日は、ありがとう。金獅子のパーティーに一緒に入ってくれて」

「ああ……ま、いい条件だったからな。テーブルを離れた時に、他の冒険者から金獅子の話を聞いて、実力のあるパーティーで経験を詰めればいいなとは、考えてたところだったし」

「え? そうなの? でも、じゃあ、なんで渋ったの?」

「ルークって奴が気にくわなかったから」

「ええ!? なんで!?すっごくいい人そうだったよ! 助けてくれたし」

「……だから、余計に気に食わないんだよ」


 いい人だから気にくわないとは、一体どういうことだろう。

 和也ってちょっとひねくれてるところあるけれど、さすがにその考え方はひねくれすぎじゃない? さすがの私も和也の交友関係が心配になっちゃうよ。


「和也って、ちゃんと友達いる?」

 と素朴な疑問を投げかけたところギロリと睨まれた。こわい。思春期の男の子ってこわい。

 とりあえず、友達の話はやめよう、うん。


「そ、そういえば、ルークさんって人、道場に通ってた大学生の剛さんにちょっと似てない? ほら、あの目元のホクロとか」


「そうか? そういえば桜子、前に剛さんのことかっこいいとか言ってたことあるけど、ああいう顔のやつがタイプなわけ?」


「え? タ、タイプっていうか……! そういうんじゃないけど、でも、ちょっと、かっこいい、よね」

 とルークさんの顔を思い出しながら言う。あ、なんか、また顔が熱い。

 すると和也のため息が聞こえた。


「アイツはやめとけよ」

「え……なんで?」

「まあ、確かに顔は悪くない。俺の次ぐらいにはかっこいいと思う」

 やだ、この子、また自分で自分のことかっこいいとか言い始めたんだけど……。


「でも、あのレイラさんの姿を思い出せよ。ビキニだぞ。同じパーティーにいる女がビキニみたいな格好して、平然としてるって、普通に考えてヤバイだろ」

 たしかに、それは私も気になってた。


 レイラさん、結構スキンシップおおいし、結構あの大きなお胸がルークさんに押し付けていた。多分、というか絶対、当たってると思う。

 それなのにルークさんは、別に気にしてないっていうか、自然だったし……。


「うーん、でも、この世界ではビキニの人ってもしかしたら普通なのかも?」

「なわけないだろ。今まで見かけたことなんてなかったじゃないか。ルークっていうやつ、爽やかそうに見えたけど、あれはそうとう遊んでる。普通に考えて、近くにビキニで行動してるやつがいたら、戸惑うだろ」

「そ、そうかな?」

「ふーん。何、俺の言うことにまだ納得いってないの?」

「いや、そういうわけじゃないけど、だって、助けてくれたし、いい人だと思うんだけど」

 顔もかっこいいし。

 とかいう不純な動機を胸に秘めていると、まるで見透かすように和也が呆れた顔で私を見てきた。


「な、何?」

 恐る恐る伺うと、和也は小さく息を吐いてから、真面目な顔をした。


「……彼氏が欲しいなら、もっと身近にいい男がいると思うけど」

 え? ちょ、何を言ってるの、和也ったら! 身近ないい男って!

 それはダメだよ! それだけはダメ!


「駄目よ、和也!ジャブリンさんにはマリーさんがいるのよ! 私もさすがに妻子持ちの人は好きになれない!」

 私がそう、当たり前のことを伝えると、和也はびっくりしたようにかたまった。


 和也ったら、結構恋愛観が広いっていうか……まあ、和也は多分、男の人を好きになる人なんだろうから、いろいろ恋愛観が達観してるのかもしれないけれど、それでもやっぱり妻子のいる人は、私ダメだと思う!

 私が真剣な目で訴えていると、和也は観念したようにうなだれた。

 考えを改めてくれたのかな……?


「もういいや。寝よ」

 和也はそう言って、布団にくるまった。

 え? 話の途中でいきなり寝ようとするなんて、失礼じゃない?


 そのあと何度か名前を呼んだけど和也は返事を返してくれなかった。


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