神崎課長(仮)その2
画面の下に時間、画像は俺の視点で撮られていた。
店を出た俺は妻に「3次会にいく、今日はビジネスホテルに泊まる」と電話をし同僚の相羽氏から貰ったエネルギシュタブレットを2錠飲んだ
22時22分不倫相手のマキに「今から、いつもの場所で」と電話をした直後だった。
突如、左胸に激痛が走りその場に崩れ落ちた。視界の隅から男性が駆け寄って来る。俺は男性に「胸、胸、苦しい」と訴えた。男性は近くにいた若い男、開発部の市野じゃないか?に「救急車の手配を」と叫び心臓マッサージをはじめた。22時55分、画面は真っ白になった。
「神崎様、昏睡状態ですね」山下が言う。
「だからお前はここに来たんだよ。ロープを引っ張ってみな。面白いものが見れるから」ユミちゃんは笑いながら鞭を振っている。ロープは暗黒の天井から何本も垂れ下がっていた。俺は一本のロープを引いた。すると、真っ白だったスリーンに画像が現れた、それは小学3年生の自分だった。「春の遠足の時だ」俺は次々にロープを引いた画像は次々現れた、飼っていた猫、野球の試合、大学の合格発表、プロポーズ、結婚式、新車でのドライブ。懐かし映像が次々現れた。
次のロープを引こうと右手に力を入れた瞬間、体に電流が走った。天井には無影灯、俺をのぞき込む医師、看護師、男の声で俺を呼ぶ声が聞こえた。病院?と思うのも束の間またあの部屋にもどっていた。
「神崎課長」背後から声をかけられた。人事部のリエちゃんだ。まともなスーツ姿だ「出港の時間が近づいています。乗船書類をお渡しますので現地係員にお見せ下さい。そうそう開封は厳禁ですからね。では失礼します」と言い暗闇の中に消えていった。
乗船場所?「とうとう川を渡るの?」とユミちゃんに聞くと彼女は無言でうなずいた。