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CU CHULAINN#8

 師と共に、この不可侵であるべき惑星への侵入者達を迎え討つキュー・クレイン。ブレイドマンは対処可能であったが、ユニオン高官であるラールディカンはそうもいかず…。

登場人物

―キュー・クレイン…永遠を生きる騎士。

―スカイ島の女王…キュー・クレインに様々な技を教えた女師匠、〈不死の長老〉イモータル・エルダーズの一員。

―ブレイドマン…〈質実剛健の妖姫〉(ドウタヌキ)の一振りを所持する機械の肉体を持つ悪しき倒錯魔法使い。

―ラールディカン…ワンダラーズ(古代地球人の末裔)の狂気を纏ったシスコン兼ブラコンのユニオン高官、弱い力を操る〈根本の(フォー・ファン)四つ角〉(ダメンタル)



コロニー襲撃事件から標準時で一日後:PGG宙域、首都惑星イミュラスト、〈イモータルズ〉議事堂、テラス


 恐るべきラールディカンの出現は正に不運としか言いようが無かった。

 完全に本気を出していない状態であっても、あのブラッドレッターことレッドナックスやその後に戦った冷酷なるマラス・ユニスは尋常ならざる程の力を持ち、その技量もまた化け物じみていた。

 アルスターの猟犬たるキュー・クレインはかつて獰猛な番犬を(くび)り殺し、チャリオットに乗って武器を振るいながら無数の屍と血の海とで野山を覆い尽くす事により諸国の連合軍を完全に震え上がらせた。

 そして28人分の肉体を持つ凶暴で残忍極まる怪物クラン・カラティン――一説によると〈蟇〉の眷属であるらしいが、それはほとんど狂い果てている著者によるものであるからあまり信用はできない――を通りすがりの戦士と共同で仕留めた。

 エアリーズに蘇らされて以降も謎の忍者やマガツ二神の力を授かった侍、並びに貪り喰らうディバウラーや〈旧神〉(エルダー・ゴッド)リージョン、そしてその他多くの強敵と対峙してきた。

 だがそれでもやはり〈根本の(フォー・ファン)四つ角〉(ダメンタルズ)と戦うのは非常に困難であり、騎士は己の師が隣にいる事を心から感謝した。

 恐らく数分程度で援軍が来るから、それまで耐えればよい。

 彼がスカーサハと呼ぶ女王以外のイモータルズは、例えばゴーゴン姉妹のステノーとユーライアリーは長年PGGで戦い抜いてきたベテランである。

 他にもガディの位を持ちその中でも不死に至ったミ=ゴの賢者達や、異次元的かつ強壮な種族的特性を更に拡大させたポリープじみた種族の古ぶしき長老達もいた。

 そして現在オフ中であったり駐留ないしは訓練中のギャラクティック・ガード達もいるから、彼らも戦力になるであろう。

 いずれにしてもそこまでの戦力を揃えれば、その気になれば惑星をも消し去れる〈根本の(フォー・ファン)四つ角〉(ダメンタル)のメンバーとて無事では済むまい。

 それにユニオンは商集団でもあるから、利益にならない無意味な大規模破壊をするとは思えない――むしろ征服や不平等条約を選ぶであろう。

 ラールディカンと比べればブレイドマンの脅威度は落ちるだろうから、これも対処可能であろう。

 それ故騎士とその師は、援軍到着までの時間を守り抜きさえすればよいのだ。

「まずは私がラールディカンを引き受けます。その間にあの拗らせた魔術師を倒してもらいたいのですが」

 騎士は投げ槍を持ったままで警戒しながらスカイ島の女王にそう告げた。

「勝手に決めるな、リーダーは私であろうが」

 相変わらずだなと思いながらも、それを聞いた瞬間キュー・クレインは投げ槍を投げ付けた。

 音を遥かに超えたスピードで迫った槍は大気を分子単位で切り裂いて猛然たる勢いのまま突き進んだものの、しかしラールディカンの強固な補強されたシールドを破る事叶わない。

 投げ槍は慄然たる異音と共に落下した。

 ロイグは別件で動いているため、彼を呼び寄せる事なく己らで対処せねばならないが、それでも己の師がいるというのはとても心強かった。

「高級なシールドとそれを補強するこの私の莫大なエネルギー、たかがその程度のお遊戯では穿てぬぞ/び、びっくりしたぁ…」

 ワンダラーズの小柄な少女の姿をしたユニオン高官は宙に浮いたままでいたが、次の瞬間その姿が掻き消えた――戦いの始まりであった。

 濃密な殺気が放たれ、騎士は危うく廃人になりかけた。

「おい、そのスカした野郎は俺の獲物だぞ!」

 密かに執念を(たぎ)らせてきたブレイドマンの叫びをラールディカンは無視し、少女の服の上に巻き付いていた布は蒼く燃え盛る鞭ないしは触腕と化した。

 彼女はそれを槍や鞭、あるいは鎖として使用した。

 頭上で回す横回転、正面を左右交互に横切る斜め回転、己ごと水平方向を向いて軸となりながらの縦回転などが次々と繰り出され、騎士は攻撃を受けていると認識する前から半ば自動的に防御した。

 瞬時に剣と盾を呼び出して構え、雨霰と斬撃を放った。

 あらゆる方向から互いの技が放たれ、空気が破裂しその一部はプラズマ化した。

 種族的特徴という意味ではキュー・クレインと同郷の少女の姿をしたユニオンの大幹部は宙に浮いたまま布と素手とを用いた格闘戦で騎士を翻弄しようとした。

 リーチの差を活かしてキュー・クレインから距離を置いたまま彼の四方八方を浮遊したまま移動して攻撃しつつ、時折布を防御されたところへ追撃のため神速の踏み込みによる打撃をお見舞いしてきた。

 タイミングは毎度ずらされており、ランダム性が高いため見切るのは難しかった。

 振り回された布がテラスの手摺りを砕き、床を抉って破片が壁に突き刺さった。優美なテラスは徐々に傷だらけとなり、壁や窓が無惨にも破壊されたりした。

 短い黒髪の美しい騎士は冷静さを保つ事に努め、不利ではあるがなんとかラールディカンの隙を探った。

 長年の勘と才能により次の素手攻撃のランダムなタイミングをぴたりと探り当て、彼は少女が腕を振り切る前の出掛かりを潰そうと盾で殴打した。

「いい音が鳴りましたね」と騎士は挑発し、胴を全面から殴打されたユニオンの高官はシールドでダメージを難攻不落の無効化したとは言え、事実として攻撃を潰された。

 彼女はその怪力で騎士の盾の縁を握り潰さんまでの威力で掴みながら、逆の拳で剣を受け止めていた。

「ねぇ、何して遊ぼっか。私こう見えて駆けっこも得意なんだよ?/こいつが喋れないお姉ちゃんの心の傷を抉って…許せない」

 ラールディカンの形相は可憐であり、同時に怪物であった。見ているだけで吐き気がした。

「レッドナックスは私をライバル視しているみたいですね。全力で殺し合いたいと」

 騎士はレッドナックスの話題を続ければ相手が激怒するであろう事をなんとなく悟った。

 相手が油断する程激怒するのかは、また別の話なのだが。

「お前なんかいらない…消えろ!/さて、貴様には苦痛を与えねばならんな…貴様の四肢をもいだ(のち)、生体を用いた装置を取り扱う文化圏の業者に売り捌いてくれる…貴様は助けを求める事叶わず、無様な姿で尊厳を徹底的に破壊される。四肢無き状態で機械の部品として扱われるのだ」

 少女は騎士に顔を近付けて囁くようにそう言い、その様子は執念深さと狂気とが入り混じっていた。

 表情は怪物じみており、目には狂気が宿り、喋り方も嗜虐的な色を帯びていた。

 少なくともレッドナックスとマラスに仇成したキュー・クレインを、このユニオン高官は許しはしないはずだ。

 その一方で巧みな槍捌きによって騎士の女師匠は、生身であった頃高名な魔法使いであり、今はそれ以上に強くなっているはずのブレイドマンを追い詰めつつあった。

 かつてケイレンの恋人が彼女に授けた外套の触腕槍は、そもそも外套全体が見事な豪物であって、名高い戦士達からすれば喉から手が出る程欲する逸品である事は疑いようもなかった。

 外套の機能によってか女王本人の術によってか、肉腫じみた職人技の外套に身を包む彼女はブレイドマンと共に空中を駆け巡って激突し、徐々にじり貧へと誘導した。

 妖刀と槍とでは近接戦闘時のリーチの差もあるし、この機械の血肉を持つ魔術師とて優れた剣技を持つも、それとて真の一流ではない。

 故に打ち合うとそこから付け込まれた――魔術合戦では膠着し、斬り合いでは押されていた。

 既に有機的な質感の槍が何度かブレイドマンの頑丈な装甲を傷付け、加護さえ貫いていた。

「俺の可愛いボディに…!」

 恐らく生身であれば執念深い復讐の表情を浮かべたであろう機械の悪漢は、ロキが使うような爆発を起こしてスカイ島の女王を薙ぎ払おうとした。

 しかし彼女が彼の頭上を越えて背後に移動し、外れた爆発は議事堂の壁を大きく穿って埃を舞わせた。

 頭上を越える一瞬の時間を利用し、強張った髪を微かに揺らす師は左側の触腕を回転銃身へと組み換え、発射される金属溶液にこちらとは相容れない次元の法則を付与させた。

 反応が遅れて何発か被弾し、強烈なノックバック効果で押された白亜の機械は騎士とユニオンの高官が鍔迫り合いに興じている箇所へと少し近付いた。

 そのまま師は刺突と銃撃とでブレイドマンを追い回すと、遂に騎士は一瞬の隙を付いて膠着から脱し、再び合流した師弟は久々にしてはなかなかの連携をもってして、連携とは呼べないブレイドマンとラールディカンの攻撃を捌いた。

 互いに背中を守りながら戦う内に、彼らは既に特定の相手とやり合うのを辞めいていた――だが徐々に、キュー・クレインはブレイドマンと打ち合う回数が増え、その逆もまた然りであった。

 打ち合わされる際の凄まじい音と、びりびりと全身を震わす衝撃、力を抜けば得物を離してしまいそうな程の壮絶な激突。

「このナルシストも思った以上にタフだな! まあそれだけだが」

 己を両断せんとして迫った〈質実剛健の妖姫〉(ドウタヌキ)の斬撃の予兆を察して槍で牽制して潰しながら師は言った。

 片手でブレイドマンを圧倒し、距離が離れればガトリング式の金属溶液銃が火を吹いた。

「よくそこまで落ち着いていられますね」と騎士は言い、その一瞬の間にラールディカンと数百の打ち合いを繰り広げ、衝撃波がテラスを傷付けた。

「安心しろ、お前は真に落ち着いているが私は常に冷や汗をかきながら戦っているからな! もっとも」

 下方からの抉るような刺突、これはフェイント。

 遠い間合いで弾いて防御しようと正眼に構えたブレイドマンの妖刀を銃身で横から殴打。

 刀が逸れてがら空きとなった白亜の装甲目掛けて、星間宇宙の大帝ハスターの聖風を槍に纏い、聖猿の猛将ハヌマーンのそれを模倣しようと長い修練の果てに体得した風の魔術による奥義を発動した。

「私はいつも騙し騙しでやってきた。そしてこれからもな!」

 単一の刺突は二重となり、双撃の払いは倍と化し、それらがブレイドマンとラールディカンを大嵐のごとき勢いで何度も打ち据えた。

 スカイ島の女王は背後におり、頭上にもおり、それ以外の場所にもいた。

 あまりの高速故に同時攻撃と錯覚させるそれは奇しくもヘリックス最後の使い手による必殺技とも似ていた。

「この女!」と忌々しそうに叫ぶブレイドマンを尻目にして、ラールディカンは食い破られつつあるシールドを見るや、新たな玩具を手に入れた事による愉悦の笑みを浮かべた。


 ユニオンに君臨する大幹部はシールドを殊更補強する目的で、恐らく能力を行使する際に思考するイメージ的なものをわかりやすくするために突き出していた左腕をゆっくりと下ろした。

 空中で浮かんだまま佇む彼女は地面から何百フィートもの高さにおり、全身の装甲を引き裂かれたブレイドマンとは違ってその浮浪者じみた服は無傷――言い得て妙だ――のままであった。

 頭を傾けたまま、乱雑に伸びた色の薄い金髪越しにイサカのそれのごとき恐るべき双眸を覗かせながら、徐々に正気を奪うような見ているだけで不安になるにやにや笑いを浮かべていた。ラールディカンは女王を獲物と定めたらしかった。

「面白い女だな/可愛い人は好きだよ?/楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい…。

「よかろう、貴様を打ち倒した後、この手で陵辱の限りを尽くして徹底的に尊厳を破壊してやる。貴様は私専用の人形として無為の一生を送り、絶望し続けろ」

 爆発的な勢いで再び戦闘が始まった――ラールディカンの狂った形相と声は彼女の容姿そのものは美少女である事を騎士達に忘れさせた。

 乱雑に伸びた髪が攻撃の度にばさばさと揺れ、強力なブラストが大地を震撼させてクレーターを作った。彼女達は地上や空中、そして海上まで駆け巡った。

 一方でブレイドマンと対峙したキュー・クレインは既に修復を開始したこの機械の大魔道士にを押していた。

 酷く損傷して一部は内部機構が露出したブレイドマンは苛立たしそうにしながら猛攻を仕掛けて来た――ほとんど魔術を使わず〈質実剛健の妖姫〉(ドウタヌキ)を構えて斬撃の嵐を見舞った。

 その巨体に似合わぬ凄まじい猛攻であり、妖刀使いは縦横斜めに何度も回転して四方八方へと高速移動しながら騎士に襲い掛かったが、剣と盾によって防御を固められており全く通用しなかった。

 ブレイドマンがもう少しレベルが上の剣士であればこの独楽じみた高速剣術とて通用したのであろうが、彼の技量ではアルスターの猟犬の技量には到底及ばなかった。

 受け流されて反撃される事を何度も繰り返し、やがてラールディカンがそうされたように盾で強烈な殴打を受けてブレイドマンは吹き飛んだ。

 その隙に騎士はかつて剣と共に王から授かったあの素晴らしい王族用の槍に持ち替え、盾の防御の向こうからブレイドマンを牽制し続けて致命的なダメージを狙う手を取った。

 ブレイドマンは更に苛々させられたが、状況は全くよくならなかった。


「田舎の星系にいい精神科医がいるのを知っているが、お前に必要なのは諭しであろうな」

 海上百フィートで暫し向かい合い、師が頭上に掲げた槍を振り下ろすと、同じく蒼く燃える布で振り下ろし技を繰り出したラールディカンのそれと激突し、大気が震撼した。

 腕がびりびりと痺れるように痛み、単純な力勝負では不利であった。

 しかし先程の奥義によってシールドは消滅しており、敵も無敵ではないらしかった。

「どういう意味なの?/言ってみろ」

「貴様のような実体にとっても時間は無限ではないという事だ。今の宇宙が終わるまであとたった…数千億年程度かも知れんぞ? 私を汚す気かどうかは知らんが、貴様にそれが可能であればやってみろ。時間が尽き果て、空間が死に絶え、星が黒ずみ、闇帷に覆われるその前にな、ちびの芋虫め」

 だがその瞬間ラールディカンはスカイ島の女王の槍を左手で素早く掴んで不意に彼女を引き寄せた――彼女はラールディカンにはまだ使っていない手があった事を今更思い出した。

 がくんと体が揺れて引き寄せられたため衝撃で体勢が崩れた。

「貴様であれば死にはすまいが、死ぬ程痛むであろうよ/プレゼントだよ!」

 酷くゆっくりに見える世界の中で師は己に迫るラールディカンの右手を見据えた。

 死の遣いが生者を刈り取るかのような恐ろしさを湛え、女師匠は臓腑が凍結したかのような恐怖感に襲われていた。

 感覚そのものは加速しているものの反撃するために行動できる程は素早く動けそうにないため、自分に迫るユニオンの怪物の手に触れられたその時一体何が起こるのかと恐れる他無かった。

 あとはもう、愛する亡き者から授かったこの遺品である優美な肉腫じみた外套が攻撃を防いでくれると祈るしかできなかった。

 そして遂に、ラールディカンの禍々しく輝く右手が彼女の喉元を外套越しに掴んだ。

 師は苦痛には慣れているつもりであった――かつて宿敵たる女領主との戦争では骨が露出する程腕を傷付けられた。

 そしてある時は骨が完全に砕けて片足が潰れた事もあれば、全身に重度の火傷を負って凄まじい激痛と共に数日感生死を彷徨い続けた事もあった。

 それら彼女の肉体を著しく毀損した負傷からも立ち直れたのは、(ひとえ)に人ならざる回復力、そして銀河社会の優れた医療技術に他ならなかった。

 だが彼女をしてラールディカンの鷲掴みによる苦痛は耐えがたいものであった。

 あまりの苦痛故に声さえ出せず、その様子に満足したラールディカンが手を離すと女王は空中で己の首を外套越しに掴みながらのた打ち回った。

 やがて飛行制御が効かなくなって落下を始め、漸く気が付いたキュー・クレインは大きなショックを受けた。

 ラールディカンは他の三人の幹部と同じく宇宙の根源的な力の担い手であり、しかも例に漏れず彼女もまた、己の能力をもはや物理法則から逸脱した振る舞いでもってして行使する事さえ可能であった。

 弱い力を操るユニオンの怪物じみた少女は能力の性質上直接触れねば威力を発揮する事はできなかったが、しかし触れてしまえば例え安定した原子であろうと放射線を撒き散らして崩壊させる事が可能であった。

 しかもその威力は宇宙空間へ生身で出てもほぼ通常通り活動できる程度には人ならざる力を持っている師にさえ通用し、彼女の外套の下では首の皮膚とその下の肉の細胞とが傷付けられていると思われた。

 既に手を離された今も現在進行形でDNAが破壊ないしは爛れていると思われ、チミン二量体かそれ以上に酷い改竄が発生しているらしかった。

 海へと落下して行ったスカイ島の女王は不意に何者かに抱き止められ、無論それはあの狂気じみたラールディカンに他ならなかった。

 弱い相互作用以外にも尋常ならざる怪力やほとんど神じみたエネルギー操作、原子レベルの干渉など多様な能力を持つこのコズミック・エンティティは見かけによらぬ腕力であった。

 己よりも大きなPGGの〈不死の長老〉(イモータル・エルダー)を抱え、彼女に対して囁くような声色で悍ましい言葉を投げ掛けていた。

 普段あれ程ずけずけとしていて、それでいて常に己が矢面に立つ事を好む師がそのようにして傷付けられているのを見て、キュー・クレインは『父親が喧嘩で負けて倒れているのを見た息子』のような複雑な感情を(いだ)いていた。

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