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09 【語られる竜山の秘密】

09 【語られる竜山の秘密】



フレイもレイラも帰った。

今、アイラの家にはアルとアイラしかいない。


「・・・話すね、この村で何があったのかを・・・!」

「う・・・うん!」

「あ・・・でも簡潔にしか話せないから・・・私も詳しくは知らないから・・・」

「大丈夫だよぉ・・・」


アイラは一つ深呼吸をして目を開いた。

目線の先にはアルの目がある。

互いの目に互いの姿が映る。


「まず・・・昔、この村にいた王はね、とある約束事を定めたの。・・・詳しい数字は覚えてないけど、この村にはごじゅ・・・五十何人しか住んではいけない、って住民に告げたのよ。」


何故?この二文字がアルの脳裏をよぎる。

広大で自然豊かで住むには申し分が無いようなこの土地で、五十程の住民しか住んでいない理由は王が定めた約束事を忠実に従った結果なのか。

となると、侵入者を許さない制度はこの約束事に従ったものなのであろう。

分からないことだらけだが、アルは首を前に振って相槌した。


「なんでそんな約束を定めたのかは・・・知らないけど、そういうことがあったんだ・・・。でね、当然のように住民の竜たちは住居を死守するために紛争を始めたの。二つくらいのグループに分かれて戦いが始まったの。一つのグループは負けたわ。でも、それでも五十人には全然多すぎた。そして行われるは殺し合い。犠牲者は計り知れないほど・・・。むごかったそうね・・・」


そういうとアイラは下を向いてしまった。

アルは「そんなことが・・・」としか言うことができなかった。

・・・何故この村には五十人しか住んではならないのだろうか?

この疑問はアイラも知らないと言っているので保留かな…と諦めた。


「・・・そして、ついにその争いに終止符が打たれたの。その中で生き残れた未成年者はたった五人・・・」

「ちょっと待ってぇ!っ・・・てことはその紛争があったのゎ・・・・・・しかも皆幼少期ほどだった。今でも未成・・・」



「えぇ。十六年前。ちょうど私が生まれた年よ」




アイラたち未成年者はこの紛争のことを憶えていないだろうが、今自分たちがこの村に住めているのは親のおかげだと知っている。

恐らく、以前アイラが言っていたようにアイラの母はこの紛争にて息絶えてしまったようだ。

だからアイラは侵入者に対する恐怖を強く抱いているのだろう。

親が命を張って手に入れた住み心地の良い場所だから、絶対に侵入者に奪われまいとしているのである。

レイラがあのように豹変してアルを睨んだ理由も頷けた。

侵入者が宝石を手に入れたということは、あの辛い紛争で生き残った人竜の宝石を奪った…ということ。

それを許さないのは当然であろう。


「・・・アイラは生き残れたんだぁ・・・・・・そのぉ・・・紛争に・・・」

「親が守ってくれたわ。レイラやフレイ君も同様に・・・。そうして私たちは“カマトルさん”という恩師に育ててもらったの。だから生きてこれたの。侵入者から守ってくれてね。」


カマトルという人が、まともに歩くこともできない幼い頃のアイラ達を支えてくれていたそうだ。

そうなると確かにアルはどうやって生きてきたのか?という疑問は当然ながら出てくる。

アイラの咄嗟の嘘は完璧だった。

上手にレイラを誤魔化すことができたから良かったものの、何故アイラは最初にこのことを教えてくれなかったのだろうかとアルは疑問に思った。

だが少し考えれば、辛い過去を話したくない,思い出したくない…からだと理解できた。


「ごめんね・・・辛い過去を話させちゃってぇ・・・」

「大丈夫よ。アルはこれから私を守ってくれるんだもんね!」


アイラは幸せそうに微笑んだ。

その笑顔がアルにとって何よりも嬉しかった。


「そして、王は科学技術を駆使して作り上げた“警察の笛”と“特殊チップ内蔵の宝石”でこの村の出入りを厳重にした。その宝石を、村に残れた五十数人の人々に渡したの。まぁ、そういうことがあったわけで・・・。だから、これからはアルはさっき私がレイラに言ったような過去を持つ、という設定でお願いね」

「うん・・・」

「でね・・・今度、未成年の生き残りのもう二人を紹介するね。カマトルさんとも、いずれ会えるよ。」

「分かった・・・!ありがとぅ・・・!」



―――アルは警察の笛の音にこれから慣れなければならない。

これから会う人会う人に疑われるのはごめんだった。

疑われているうちに、アルが侵入してきた“人間”だということがバレるのも時間の問題である。

もしも人竜ではないと知られたならば、侵入者かつ弱い人間と世間に知れ渡ることになる。

この宝石を狙う竜も現われるであろう。

アイラがせっかくくれたこの宝石を大切にしなければならない・・・。

アルは自分の首元についた宝石をぎゅっと握りしめた。



「じゃぁ・・・警察署行きましょ!」

「あぁ・・・うんっ!」







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