02 【人竜との出会い】
02 【人竜との出会い】
〜●どらごんすとーりー●〜
堂々とそびえたっている山になかなか着くことができずにアルは息を切らしていた。
それほど山が大きいのだろう。
山に近づくたびに「空気って味があるんだなぁ」と感じさせていた。
息を切らしながらも歩調は崩れることなく少しずつ山に近づいて行ったのだ。
「やっと着くな・・・。早く・・・早くあの景色を間近で見てみたいねぇ」
歩くこと3時間。
やっと着いた山は想像を絶する大きさとなっていた。
湖は底が見えるほど澄んでいて、森には青々とした木がそびえたっている。
空はアルを歓迎してくれているかのように快晴。
だが、やはりその景色は山の景観に勝てることはない。
赤みがかった茶色の緑無き山は今にも噴火する様子で存在し、てっぺんがまるで見えない。
その山がこの一帯を囲んでいる。
そしてどうやらこの土地には人間が住んでいるらしい。
次に目に映ったのが水田だったからだ。
その水田にカカシはない。
まずアルは人を探すことに決めた。
ふと周囲見れば、弥生時代に見られそうな家がぽつぽつと建っている。
一番近い家にアルは歩み寄っていった。
「ごめんください。あのぉ、誰か、人はいますかぁ?」
すぐに奥の方から人らしき影が見えてきた。
そして近づいてくる。
―――男だ。
「あの、すみません、この山に初めてきたもので―――」
「・・・っ!・・・うわぁ――――っ!」
絶句の後、彼は絶叫した。
もちろんその理由をアルは知るはずがない。
「あのぉ・・・」
「去れ・・・!去れ・・・・・・!」
アルはそれでも話しかけるのをやめなかった。
第一何故自分が拒否されているのかが分からなかった。
だが、その直後・・・アルも絶句したのである。
男の肩の内側が骨のようなものがグイグイと伸び、それは肉を突き破った。
それは骨ではないようだが、骨に似ているものとしか表現ができない。
漆黒の骨のような物体は大きく伸び、そこから翼が開いた。
顔の骨格が大きく変化し、眼はつり上がり、口は大きく開いて、歯は鋭く尖った。
腕や足の筋肉は人間の3倍ほどの大きさになり、いつのまにか尾っぽのようなものまでついている。
―――気付けば目の前にはドラゴンらしき生物が立っていた。
「シャァァァ!!グルグルル・・・・!」
赤く染まったその眼はアルを威嚇しているようにしか見えない。
アルはその両手を上に挙げて謝罪の言葉を繰り返した。
だがドラゴンはそれを聞きとろうとしていなかった。
―――故に、アルは逃げた。
「はぁ・・・はぁ・・・なんだよ・・・竜って・・・今のはなんだよぅ・・・!」
アルは意気消沈した。
ため息も出る。
それでもくじけずにアルは他の家をあたることを決めていた。
気温が少し熱くなったように感じ、上を見上げれば太陽がアルを照らしていた。
足取りが重くなっている。
頬に汗が垂れてくる。
だがついさっき起きた出来事を思い出すと寒気が出た。
人間がドラゴンに変わったのだ。
それはアルには到底理解など不可能なコトである。
下を向きながら歩きはじめたその時であった。
ダッッッ・・・!
大きな音とともに一人の人間がアルの目の前に吹っ飛ばされて倒れ込んだ。
女の子である。
恐らくアルよりも年下だろう。
その子は苦しそうな表情をし、アルを見上げて「助けて下さい」と一言だけ言った。
それが、アルとその子の出会いであった。