15 【ADVENTURE!! 〜出発〜】
15【ADVENTURE!! 〜出発〜】
「その侵入者がどこに行ったのか分かるの・・・?」
火山の噴火を食い止めていた玉の一つを侵入者に奪われた。
それを奪還するため、アイラやその他の人竜の子は生まれてからずっと居続けていた地元の村から出ようとするのであった。
既にアイラ、アル、レイラの3人は家を出て、山の入口に向かっていた。
走りながらアルは二人に疑問を投げ掛けてみた。
「えぇ。火山玉は二つで一つ!離れていてもちゃんと呼び合っているの」
「じゃぁなんで二つとも盗んでいかなかったんだろうねぇ・・・」
この質問はレイラの家に着く前にアイラに問いかけたものと同じだ。
レイラに聞いたら答えが返ってくるのではないかと期待したのだ。
アイラの立場からしたら鬱陶しい他ならないが。
レイラも口が止まった。そうだそうだ、玉を二つ持っていけばいい話ではないか。
「・・・」
あの紛争で生き残り山に住まうことを認められた人竜を恨んでいて、彼らを皆殺しにするために火山を噴火させようと外部者が火山玉を盗んだのかと思っていたが、そう考えるとやはりおかしい。
玉を引き離すことが目的なら、まず二つ奪っておいてその後ゆっくり引き離せばよい。
一つを置いて行ったら追いかけられるに決まっている。現にアルたちが追いかけているのだし。
アルはそう考えてみたが、アイラたちの見解は想像以上に楽観的だった。
「玉が二つあると重いから、一つ置いていったのよ。カマトルさんが一つ守ったのよ。きっとね」
「じゃぁなんで金庫に鍵が掛かっていたのぉ?片方はぁ・・・さぁ・・・」
「・・・・・・ふいに閉まっちゃったとかじゃないかね、アルくんよ」
呼び名が普通になっていた。遂にネタが切れたのだろう。
もっと捻れば面白いあだ名ができたろうに、とアルは頭の中で自分のあだ名を考えてみたが納得のいくものは一つも思いつかなかった。
アルはアイラたちを見習った。今考えるべきことは、奪われた火山玉を奪い返すこと。
「レイラ・・・どうしよう・・・村が、村が・・・」
「今から取り換えしに行くんじゃないか!今から下向いてどうすんよ」
「う・・・うんっ」
レイラは既に竜の姿となっており、アルはアイラを背負っている。
もうすぐ山の入口だ。溢れる自然、畑など見慣れた景色が広がった。
その畑には竜がいて、たった今小さな鳥を追い返しているところだった。
その鳥はもう二度とこの場には戻らないと誓うかのように、羽をばたつかせて去っていった。
少し首を回せば、あの山が見える。村を覆う山が激しく噴火するのだ。災害は目に見えている。
だが、今向かっているのは村の出口。山と山の隙間に向かって走っている。
数日前、アルがこの村の入り口として入ってきたゲートだ。
「ついに出口ね」
レイラが二人に到着を告げた。
すでにそこにはリオンとフレイの姿があった。
「遅いわよ。玉の引かれ方が強くなってきたよー!はやく、はやく行きましょっ」
「早く行かないとまずいぞ。分かってるよな、俺たちの失態は村の滅亡にと繋がってしまう。失敗は許されない」
冷静だったはずのフレイの発言からほんのわずかな熱気を感じる。
全員がゆっくりと首を前に振った。
「フレイ、リオン、アイラ、アル。よし! 絶対に玉を取り返しに行くわよっ! 」
レイラが口を大きく開けて皆を仕切った。腕も上に挙げて張り切っている。
だが、村を出る肝心の一歩が出ない。
何度も仕切りなおしては村を出ようと試みるものの、レイラの足はそれを拒むように引込んでしまう。
「・・・ほら、早く行こうよぉー! 」
「うわっ、ふえっ・・・!やっ、やめろよぉ・・・! って! うわぁ! 」
アルがレイラの背中を押した。
ついにレイラの片足が村を飛び越えたのだった。
それに続くように全員村を走りだした。
「うおぉー」
雄叫びを上げ、山の城壁の向こうへと踏み出した。
アルとアイラ以外は竜の姿になり、アルとアイラが先頭を切る。
今まで一度も出たことがない地元を離れ、未成年の人竜たちは勢いよく飛び出していった。